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    闇の精霊と闇の創作主ロッチェ

    ここになら
    ゾーニング無しの設定
    ぶちこんでも良いんじゃな?
    容赦なく闇を放り込んでやるから
    覚悟しておくれ

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    POIPOI 105

    恭真と俊夕方だというのに真っ暗な帰り道。それもそうだ。冬至も近い時期の上にしとしとと降る雨。吐く息は真っ白で、傘を持つ手も学生鞄を持つ手も真っ赤にかじかんでいる。
    「自販機でおしるこでも買おうかな…」
    コートを着込んではいるものの寒くて堪らない。そこまで耐寒しているのなら手袋位付けろという話だけども。ニットの手袋しか持ってない挙げ句に雨でびしょびしょになった手袋なんて付けていたくもないから置いてきたんだ。寒さの事ばかり考えても仕方無いからさっさと帰ろうと歩みを早めると声が掛る。
    「そこの…そこの学生さん…。助けて…助けて欲しいの…。手を貸して…手を貸して…」
    雨音で消え入りそうなか細い女性の声。助けを求めているのは伝わった。どんな用件かは分からないけれどもこの寒さの中に放置しておくなんて非道な真似は出来ない。あたりを見渡すと古びた倉庫から真っ赤なトレンチコートを着た顔が隠れる程の長さの黒髪の女性が手招いているのが見えた。
    「今行きます!」
    そう声を掛けると女性は頷いて倉庫の扉を開けて奥へと消えていった。

    「暗い…」
    傘をたたんで柱に立て掛ける。そして、どこかにいるであろう女性に声を掛ける。
    「すみません!何をしたらいいですか!おーい!」
    返事は帰ってこなかったが背後で勢いよく扉が閉まる音がした。危機を感じて振り返ったが手遅れ。扉は閉じられ、光は完全に失われた。
    「えっ…。待って、暗い。何も見えない。どうすれば…うっ!」
    何かに押し倒された。顔に細い糸の束。いや、髪の毛が触れていると気が付いてさっきの女性にのし掛かられていると脳が認識した。
    「ちょっ…何をッ…!」
    「手を貸してッ!手を貸してッ!手を貸してよォォォォ!!!」
    正気とは思えない女性の甲高い声に耳元で聞こえた金属音。頬にピリリとした痛みがして、温かな血が流れるのを感じた。刃物を振りかざされた様だ。そして、僕は『手を貸して』の意味をようやく理解した。物理的に手を切り落として貸して欲しい。そういう事だ。
    「(カシテ婦人…!都市伝説だと思ってたけど本当にいるなんて!)」
    カシテ婦人。最近、話題になっている女の怪異。オカルトが好きな俺は勿論知っていた。しかし、まだまだ謎な怪異で女性であるという事と手を貸してという文言しか情報がなかった。どうして気が付かなかった。お人好しな自分に嫌悪感を抱く。先輩…恭華さんだったらこんな事、一瞬で見抜いていただろうに。そして、その恭華さんを屠った邪神、曲神の嘲笑う顔も過った。そう、弱い。俺は弱い。無力。でも、歯を食いしばる。
    「こんな所でッ!死にたくないッ!俺にはッ!や成すべき事があるんだッ!」
    腹部と思われる場所を思い切り蹴りとばす。ギャッという気持ちの悪い怯み声が聞こえる。どうやら当たったらしい。何とか立ち上がって扉を探す。暗闇に目が慣れてきた様でうっすら場所を把握できた。早く逃げなければと走り出すも今度は背中に飛び付かれて押し倒された。
    「ててててててててててててててててててててててッ!手を!貸してぇ!」
    狂気的な叫びが轟く。横目で見えた鈍い輝き。終わりだ。俺は悔し涙を流しながら目を閉じた。瞬間、聞こえたガシャン!という轟音。位置的にどうやら天井を何かが貫いてやって来たようだ。軽い足音が瞬時に近付いてきて、ヒュンという鋭い物を横薙ぎに振る音がした。
    「ギャアアアアアアアアッ!」
    断末魔だと分かる悲鳴が耳をつんざく。悲鳴が小さくなると同時に肺を圧迫していた重量がスーッと消えていった。解放された俺は咳をしながら立ち上がろうとする。何が起きた?何とか四つん這いになった所で手が差し伸べられる。
    「手を貸すよ」
    メインが黒で所々に黄色の装飾が施された衣装に身を包んだ先端だけが金髪の黒髪でマスクの男。ジャケットやマスクの装飾がうっすらと光を放っている随分とSFチックな格好をしている。太腿にはカシテ婦人を切り裂いたであろうナイフが収納されている。困惑しながらもその白手袋を着けた手を借りて立ち上がった。表情はゴーグルのせいでよく見えない。
    「助けてくれてありがとうございます。貴方は一体…?」
    「菅原俊。歪みを憎む者。君は恭真君で間違いないね。曲神の血族の本家、恭の者」
    何故それを知っている。この菅原という存在の出方を伺う為に身構える。
    「そうなるのも分かるが俺は敵じゃない。曲神を抹殺したいと思う同志。そう思ってくれて構わない」
    同志…か。この実力なら信じていいかもしれない。曲神が憎い。殺してやりたい。恭華さんを屠った事も許せないがこれからも恭の者を利用し尽くして最終的に屠るその非道も許せない。しかし、ただの高校生の俺にはなす術がなく、無為な時間を過ごす事しか出来なかった。それが腹立たしくて、曲神も憎いが自身も憎くて堪らなくて気が狂いそうだった。いっそ死んで恭華さんに会いに行こうか。そんな事も考えたが恭華さんは幽世で出来ない事を為して欲しいと望むだろうし、焦がれという甘えだけで逝く無価値な俺を手放しで受け入れてくれる訳がない。
    「…憎しみは十分に伝わった。酷い有り様だ」
    声を掛けられて気が付く。口端と握り過ぎた拳からは血が流れていた。アドレナリンのせいで痛みは感じない。
    「無力な己を、無能な己を憎いと思うのは痛い程理解出来る。そんな者を救う為に俺は力を使う。…利己的な奴等とは違うんだ」
    最後の吐き捨てる様な台詞に彼の憎しみの根元を感じ取った。うん、信じていい。憶測でしかないが彼は利用され、手酷く裏切られた者。しかも、心根はとても優しい存在。だから、同じ事を人にはしない。きっとそうだ。
    「俺は貴方を信じる。裏があったとしても曲神さえ殺せればそれでいい。力が欲しい」
    俺は彼に手を伸ばす。彼は手袋を外して手を握ってくれた。固く握手を交わしてから気が付く。しまった、血塗れの手だった。
    「気にしなくていい。俺の手はその他の血で既に汚れているんだ。君は普段通りに生きて欲しい。俺は高校時代を満足に過ごせなかったから」
    彼の悲しみを感じると同時にやはり俺は何も出来ない矮小な存在なんだなと心が曇った。
    「落ち込むのも分かる。…厳しい事を言うようだけど君は理解出来る筈。そうあれは確か―」
    「ゼークトの組織論」
    「…。」
    そうだよ。俺は無能な働き者予備軍。だから、余計な事はするな。そう言いたいんだよね。身の程は弁えてる。弁えてるよ。
    「…昔言われた。俺が信頼してた奴に。馬鹿だからその理論の話はさっぱりだった。すぐに理解出来る君は賢いね」
    ありがとうと返答すれば良かったのかも知れないが今になって手の平と口の痛みで何も言えなくなってしまった。
    「簡単な手当てしか出来ないけども許して欲しい」
    そんな言葉を掛けられながら手に包帯を巻いてもらった。頭を下げる事しか出来なかったがゴーグルからうっすらと見えた目は気にしなくていいという慰めの慈愛と本当に申し訳無いと思っている悲しげな感情が入り交じった曇った目だった。
    「これで良し。曲神を抹殺したらまた会いに来る。俺の存在は頭の片隅に置いておいてくれるだけでいい。普通に生きる。それが君の行える最善だ。もしもの為にこれを渡す。…逆に君の年代でこれを持ってないのか不思議だよ。俺に連絡は出来ないけども便利にはなる筈だ」
    そう言い残して彼はあっという間に姿を消した。
    渡された物はスマートフォン。…何で俺はこれの存在を知らなかったんだ?高校生なら持ってて当然と言っても過言じゃない機器じゃないか。何だかクラクラする。思考がぐちゃぐちゃだ。吐き気もする。多分、色々な事が起き過ぎて理解が追い付いてないだけだ。そう思いながら雨の止んだ鈍色の空を眺め、傘を杖代わりにしながら帰路についた。
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    Replies from the creator

    闇の精霊と闇の創作主ロッチェ

    DONE祠の話を膨らませただけ
    お姉様、伴侶、私(わたくし)深夜二時。大抵の人々が眠っている時間に電話が掛かってきました。私は事務作業をこなしており、電話対応をしたのはお姉様でした。
    「はいはい、此方レディンメ。うん、はい、把握。うちに任せておいて。うん、キチンと書類書いてもらわないとだから余裕出来たら事務所来てね。あ、家に向かおうか?兎に角、落ち着いてからだね。じゃ」
    お姉様が電話を切る。私(わたくし)はお姉様に微笑みかけて、口が開かれるのを待った。どんなお仕事なのでしょう。
    「羽耶(うや)、こういうのはあんたが適任だ。雑談も交えて業務内容を説明するよ」
    私(わたくし)が適任なお仕事。楽しみですね。
    「最近さ、不届き者が山程いるじゃない。何かの流行りで発生してるらしい不届き者。法律は詳しくないけど礼拝所不敬罪で連れていかれる輩。信仰?元からそんなもんない連中だらけの地域だろってのは無しだ。で、連れてかれた連中は罰金と修繕費払って解放されるんだがその後がおかしくてね。どいつもこいつも『双子を見た!』って言うらしい。現代に相応しくない不気味な双子なんだってさ。『壊した、穢した、侮辱した。死んじゃうね。哀しいね。可哀想だね。』とか言ってひとしきり嘲って消える。馬鹿馬鹿しいと記憶の彼方に追いやるけど深夜に手鞠唄が聞こえてきて朝には静まる。それが一週間位続いてごらんよ。気が狂うだろ?そう、ここんところでニュースになってる自殺の一部はこれ。あとは凄まじい衝撃で圧死した不審死も相次いでるんだって。ろくでもない流行りの元凶は何だったかな。あたし、眼精疲労から解放される為にネット断ちしてるから分かんないや。レイイミナ、何か知ってる?」
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    闇の精霊と闇の創作主ロッチェ

    DONE流行りの祠壊した云々の話
    ミステリアスなおじ様はお好きですか?昔々のお話。この地には天候を操る神様がおったそうな。名前は…何だったかねー。まぁいいや。その神様は村人によくこう話し掛けていたそうな。
    「のう、遊びに付き合ってくれんか。なぁに、手間は取らせんよ。事は単純。儂の立てた枝を夕刻までに折ったら勝ち。な?簡単じゃろ?」
    老若男女問わずそう持ち掛けていたそうな。土地神。しかも、天候を操る神。怒らせて作物が育たず飢饉、年貢を納められずに死罪などという災厄が起きては困ると人々はその妙な遊びに付き合ったそうな。子供は容赦なく枝を折り、村を散歩している神を探し出し、連れてきて勝利宣言をしてやったそうだが大人や頭の回る者はそうはいかない。勝ってしまって機嫌を損ねたらどうしようかと頭を抱えたそうな。当然だね。だが、どんな結果であろうと神は上機嫌。勝ち誇る子供には大袈裟に悔しがって喜ばせてやったり、怯えて枝を折らなかった者にはその反応が愛いくてたまらないと笑ってやったそうな。愉快な神様だね。時が経ち、村は市となった。そして、他所からの人も増えていき、発展していくと人々は神の存在を忘れていった。今でも神社や祠は残っているが所詮は壊したら恐ろしい事が起きるというアニミズム的な観点からの保護対象でしかないのだった。何それ?あー、簡単に言うと神は自然に宿る。八百万の神って考え方。で、それらと交信出来る場所が神社とかって訳だよ。分かった?なら良し。参拝者はいるんじゃないのかな?程度の無人の寂れた神社でさ、本当に地域の人々が最低限綺麗にしてる程度の扱いなんだよね。…ん?実話?そうだけど?神様が人間に馴れ馴れしく話し掛ける訳ないだろ!って怒られてもねー。そういう話だもの。
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