シリウスの告解 第一章.
――私は、ひとを殺した。
あのまばゆい光を、この手で、奪ったのだ。
◇
己よりも随分と小さな足が、白銀の平原に新たな標を刻んでいく。さくさくと氷の粒が擦れる音は深い雪の中へ沈み、それ以上は響かなかった。
おもむろに見上げた空は、昨日の猛吹雪が嘘のように晴れ渡っている。小さく吸い込んだ空気は澄んでいて、肺腑の底までも洗い流してくれるようだった。
「――」
しばらくの間、雪原を踏み締める音に夢中だった小さな命が、私の存在を確かめるように振り返る。わずかに表情を緩めれば、大きな瞳がきらりと輝いて、小さな手のひらが差し出された。本来は私よりうんと温かいはずのそれは、雪遊びのせいですっかり冷え切ってしまっている。なけなしの熱を分け与えるように冷たい手のひらをそっと握り込んでやれば、晴れやかな顔で力強く頷いたこどもは、その身体からは想像できない力で私を引っ張っていく。ほのかな朱色に染まった指で示したのは、どこまでも伸びていく地平線の先で。
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