「今日は俺の誕生日だった?」「私の恋人に何かご用でしょうか」
そう言って謝憐は花城を自分の側へと引き寄せた。
今日の殿下はどうしたというのか、照れの一つもなく堂々と花城を自分に寄り添わせる。
日頃、花城の手が謝憐の腰に回ることはあっても逆は殆ど無いが、太子殿下の白い手はそっと自分よりも太い腰に回っていた。
彼らは多くの人にとって一概に言いにくい関係だ。
時に慈悲深い武神と敬虔な信徒として、時には上天庭の神官と絶境鬼王として、時にはまるで老公と娘子としてそこにある。
本日の太子殿下はまるで鬼王として鬼市で伴侶を連れ添って歩くときの花城のようだったのである。
しかし、それを知る者はこの場に一人として居なかった。
人間界の旅行先である。二人が連れ立って海浜公園の白いタイル張りの遊歩道を歩いていると、謝憐は散歩中のゴールデンレトリバーに思いっきり飛び掛かられた。
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