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    hiwanoura

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    hiwanoura

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    鍾タルワンライ、お題【酩酊】で書かせて頂きました。ベロベロに酔っ払ったタルが朝チュンして、勘違いする話です。鍾タルです。ちょっと最初タルが攻めみたいなこと言いますが、安心してください。鍾タルです。

    鍾タルワンライ【酩酊】鍾タルワンライ『酩酊』


    ふと、目を開いて最初に聞こえたのはザァァというまるで滝が落ちるような音だった。状況がさっぱり分からない。が、しかし、危険な気配は感じられないので、そのままぼんやりと見慣れぬ天井を見上げる。明らかに来たことはない場所に寝かされている状況…だが、別段危機感を感じていない理由は、これが初めてではないからだ。大体任務で怪我した時だとか、博士の実験に付き合った時だとかに見上げる天井は今見ているものに似たシンプルな白い天井ばかりだった。それらと違う点があるとするならば、今までの天井はヒビや汚れ、更には血痕なんかが付いていたが、ここはシミのひとつもない、綺麗な天井だったくらい、か。あまりの綺麗さに、傷でもつけてやろうかな…なんて。どうでもいいことを考えたところで、さっきから耳に届いていた音が、外から聞こえる雨の音では…と気がついた。気がつくのが遅すぎる。完全に寝惚けてるな、と。頭痛が痛い(笑うところ)頭を緩く動かし、窓の外へと視線を向けてみると、確かに音の通りに灰色の空から雨が降り注いでいた。あぁ、そういえば、昨日の夜、帰り際に降り出したんだっけか…と。止む気配のない雨粒のカーテンを眺めているうちに、朧気な記憶が蘇ってくる。そうだ、たしか昨日は暫く離れていた璃月に戻ってきて久しぶりに会った鍾離先生と食事に出かけたのだ。ズルズルと、ひとつ思い出すと芋づる式に鮮明になっていく記憶。久し振りに会った先生は、まぁ変わらず綺麗で、オレの居なかった間の璃月の事を教えてくれて、オレのために用意してもらったんだって色んなお酒を勧めてくれたのだ。それがどれもこれも美味しくて……そう、そうだ。そこでまぁちょっとばかし調子に乗って飲みすぎちゃったんだよね。いやだって、先生が勧めてくるお酒がどれも好みど真ん中過ぎたのが悪い。手が止まらなかったのだ。特に美味しかったのが、一際立派な瓶に入っていた茶色のやつだ。果物を砕いて、絞って…なんだっけ?先生が色々説明してくれたけれど、まぁ美味しいからいいかー!と、すっかり聞き流してしまった作り方は思い出せないけれど、まぁなんやかんやで作られたそれは、トロリと濃い茶色に濃厚な薫りを纏っていて、一口口に含むとそれらが鼻腔を満たし、脳までとろかせるかのようだった。果物を使っていると言う割には甘さはなく、甘い酒が苦手なオレでもつい手が止まらなくなってしまう程だったそれ。そのせいで、いつもは酔うことなど殆どないというのに、昨日はちょっと人…特に他の執行官連中には絶対に見せられないレベルで見事にデロンデロンになったわけだ。まぁ、うん。一緒にいたのが先生だった…ってのも一因だろうけど。そんなこんなですっかり足元も覚束ぬレベルで呑んでしまった帰り道。鼻先にポツン、と一滴落ちてきたのを感じて、そこから地面の色がすっかりと変わるまではすぐだった。あっという間にさぁさぁと降り出した雨の中、慌てて近いから、という理由で先生の家に避難した時にはずぶ濡れで。玄関先で先に風呂に入れ、いやここは家主の先生が先に入ってよ、いやいや公子殿が先に…なんてやり取りの末、一緒に入ろうってなったのだった。
    ……うん、そこまではちゃんと覚えてる。いや、そうはならんだろ、と、今なら思うが、昨日は本当に脳が溶けてるレベルでべろんべろんに酔っていたのだ。正常な判断力なんてある訳もない。もう辞書に『酩酊している様子』って見本として載せられてもおかしくないほどだった。いや、それは本気でやめて欲しいけど。そんなことしたら恥ずかしすぎて実家に帰れなくなっちゃう。
    ……話を戻そ。まぁつまり、そんな具合だったオレは先生と一緒に風呂に入ることに何の抵抗もなかったし、正直、先生のうちのお風呂はめちゃくちゃ広くて、温かくて、いい匂いがするなぁくらいにしか思っていなかった。熱すぎず、ぬるすぎない…そんな絶妙な温度のお湯に包まれつつ、先生と話していた、記憶はある。しかし何故かそこでぶつり、と記憶は途切れていた。
    ……のだが、どうやら。
    「………………やっちゃた」
    思わず両手で顔を覆い…いや、覆おうとしたが、片手は動かなかったので自由に動く方の手で顔を隠し、低く呟く。血の気が引く、というのはこういう事かと、二十年弱生きてきて初めて感じる感覚に若干感動しつつ、そろり、と見つめていた天井から視線を現実…自分の動かない腕の上へと向けてみる。
    これはなんですか、と、もし問われたならば間違いなく「これは腕枕です」と答えるだろう。百点満点、大正解。誰がどう見たって完璧な腕枕状態が、そこにはあった。いや、うん。薄々、気がついてはいた。危険な気配は感じられないけど、隣からめちゃくちゃよく知ってる気配はしてたし、部屋の中はすごく知ってる香の薫りがするし、片腕ではさっぱり動かなかったし。オマケに下半身にはなんだかこう……経験したことの無い気だるさが残っている様な気がする上に、オレの今の格好は素っ裸。そう、一糸まとわぬ生まれたままの姿でシーツに横たわり、隣で同じく全裸の、この家の主である鍾離先生に、腕枕をしているのだ。
    これはあれだ。完全に事後ですね、ありがとうございます。
    (じゃなーーーーい!!)
    声を上げなかった自分を褒めてやりたい。あまりの状況にすっかり酔いも眠気も吹っ飛んだ頭を振って、目を見開く。やってしまった……これは、この状況は完全に。
    (オレ、先生に手出しちゃった……)
    全裸、二人並んで布団の中と来れば、もうその答えしか有り得まい。しかも、腕枕をしているのはオレだ。つまり男役がオレって事だろう。
    (えぇ…オレ、先生で童貞卒業しちゃったってこと?)
    別に大切に取っておいた訳じゃないがうっかりタイミングを逃し未だに使うことのなかった己のブツに、そっと心の中で問いかけてみる。お前、先生に反応したの?と。まぁ当然返事なんてなく(あったら怖いが)、今はシンと鎮まっている下半身が、オレの腕を枕にして未だに眠っているこの人にちゃんと元気になったのだろうか。まさかいざっ!というタイミングで元気を失うなんて情けないことになったんじゃないか…という男しての一抹の不安を感じつつ、眠る先生を見る。伏せられているせいで今は綺麗な石珀色の目は見ることが出来ない。が、長いまつ毛に縁取られた目元に、スっと通った鼻筋。微かに開く唇など、どれもがまるで彫刻のように整っている。眠っているだけだというのにその静けさすら美しく、芸術品のようなその顔に心臓がドキリと跳ねた。
    (あ、これはイけるな)
    先生と出会って、騙され手の上で転がされて、また仲良くなって。定期的に会って食事をするようになってそこそこ経つが、どうやらオレは鍾離先生の顔が好みど真ん中だったらしい、と今更ながらに気がついてしまった。今まさにドキドキと鳴る胸を抑えつつ、そうか、オレって先生の顔、好きだったんだなぁ…確かにこの顔なら抱けるかも、と、思わずその美しい顔面を眺めてしまう。そっか、オレ、先生で脱童貞したんだな…バイバイ、オレの初めて。全然記憶に残ってなくてごめんね…なんて。少ししんみりしつつ、ふと、気がつく。あれ?これって、国際問題にならないだろうか、と。何せ隣で眠っているこの人はこんな綺麗な顔で子供みたいにすよすよ寝ているけれど、この国の元神様なのだ。つまりオレは神様に手を出してしまった、という事で…これはブチ切れた夜叉や璃月七星に攻められて、最悪戦争にでもなってしまうんじゃないだろうか。いや、それはそれでちょっと楽しそうだなーとか思うけど、さすがにこれは
    「女皇様に怒られる…!!」
    今度は我慢できず出してしまった声は思いのほか大きくて。しまったと慌てて口を塞いだが残念なが遅かったようだ。
    「ん」
    と。鼻から抜けるような小さな声とともに伏せられていた瞼がふるりと震えた。お、起きちゃう……そう、目を離せず見つめていると、ゆるりと長いまつ毛が持ち上がり、光を得た石珀がきらりと光った。
    「こ、うしどの」
    「あ、起こしちゃったね、ごめん」
    僅かに掠れた声で呼ばれ、さっきからうるさい心臓が一際大きな音を立てた。まだ眠気が抜けきっていないのだろう鍾離先生は、ぼんやりと視線を揺らし状況を確認したあと、ふわり、とその目元を緩めて、
    「おはよう、公子殿」
    と、寝起きだからかいつもより緩んだ表情で声をかけてくる。その微かに赤く染る目元に、掠れた声……どこからどう見ても最高に事後な様子に、さっきまであった反省の心は一瞬でどこかに吹き飛んでしまった。えーめっちゃ可愛い…と。己の腕の中に収まる先生に、顔面が緩んでしまう。そういえば告白も何もしてないけど…まぁ、体から始まる関係でもいいか!なんて。そんな浮かれたことを考えていると、腕枕をしていた腕が急に軽くなった。
    「せんせ?」
    起き上がって大丈夫なんだろか?腰とか痛くない?というオレの心配をよそに起き上がりベッドに座り込んだままで、先生が徐にオレへと手を伸ばしてくる。
    「どこか痛いところはないか?」
    するすると指の背で頬を撫で、熱を測るかのように頬にピタリとあてられる手の平。その、まるでいたわる様な仕草に(……うん?)と頭の中に浮かんだのはクエッションマークだ。え、なんで先生がオレの事を労わってるんだ?むしろそれをするのはオレの役目なんじゃないか…?状況に理解ができず、返事もせぬまま首を傾げたオレに、何を勘違いしたのか先生はその形の良い眉を寄せて一言「すまない」と低く呟いた。
    「公子殿への負担を考えるならば、途中で止めるべきだった……本当にすまない」
    「へ?」
    オレへの負担??やめる??
    「しかし、お前も悪いのだぞ。足を絡めて『もっと奥に欲しい』などと煽ってく……「すとーーっぷ!!」
    聞こえてきた話の不穏さに、思わず声を上げた、その瞬間。喉がつまり咳が止まらなくなる。えっ、てか今気がついたけど、声ガッサガサじゃん!!オレ!!
    「ああ、そんな大声をあげてはダメだ……さっきまであんなに愛らしく鳴いていたのだから」
    「まって、そのなく、は悲しいとかで涙流して泣く方のやつ?」
    「?あぁ、涙は流していたが…気持ちいいと言いながら」
    「oh......」
    ここでようやっと。オレは自分がとんでもない勘違いをしていたことに気がついた。気がついてしまった。
    まぁつまり、
    「もしかして、オレ、昨日先生に抱かれた?」
    恐る恐る確認のために聞けば、問われた当人はキョトンと目を丸め、そうして何を今更と言わんばかりに「そうだな」と頷いて見せた。
    「ま、じか」
    女皇様、ご安心ください。元神様の尻は無事なので、国際問題にはならなそうです。ブチ切れた夜叉君や璃月七星との戦争もなさそうです。
    「よかったのかな…」
    いや、良くない。先生に手は出してなけど、手は出されたわけだから……「この泥棒猫!!」とか、夜叉君に言われたりするのかな…いわないか、流石に。現実逃避にそんなことを考えながら、取り敢えず自分も寝転んでないで座ろうか、と身体を起こそうとするが、どうにも腰に力が入らない。え、これもしかして…腰抜けてる…?まさかさっきから感じてる下半身の違和感は、掘られすぎておかしくなってたの?と、先生を見上げて。
    「腰と、お尻の感覚ないんだけど」
    とボヤくと、ふむ…と神妙な顔をした先生が頷いた。
    「五回でやめておくべきだったな」
    いやいやいや。とんでもないお言葉が聞こえたきがするんだが。思わず再び頭を抱え、この似非凡人め。オレでなければ死んでたよ…と、内心で毒づいた。
    つーか、
    「せんせ、オレで勃つんだね…」
    抱かれたことと、回数と。今まで生きてきた中でも上位に入るレベルの衝撃を受けつつ、ポツリと零す。と、それが聞こえたのか、ぱちぱちと石珀色の目が瞬く。そうして、
    「当たり前だ」
    そう、それはそれは幸せそうに目元を緩ませてた先生が覆い被さるように覗き込んできた。
    「今もまだ、熱が収まりそうにない」
    キスでもするかのように顔を寄せて。耳へと吹き込まれた低く甘い声に、ずくり、と腹の奥が疼く。いや、腹の奥が疼くって何。あ、さっき言ってた奥に欲しいの奥ってってここですね!!気が付きたくなかったよ!!自分の意思とは関係なく、キュンキュン♡とナニかを欲しがる腹に、ちょっと落ち着いてくれと内心で叱りつけて。はー、と溜息を一つ。これはもう、受け入れるしかないらしい。
    サヨナラしたと思った童貞は実はまだ健在で、永遠の別れをしたのは処女でした。

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