夕刻の通り雨が心配になるのはこの季節の特徴の一つでもある。それは分かっているのだが、来るかどうかも分からない通り雨の為に雨具を持ち歩くだなんてそうそう出来たものではないのが現状だった。
「すっごい雨だねー…」
「雷鳴ってね?」
「うわ、ほんとだ。…止むかなあ」
「通り雨だとは思うけどな」
九門と莇も例に漏れず雨具を持ち歩いておらず、見ての通りの濡鼠状態だ。下校の途中にこのバケツをひっくり返したような酷い通り雨に襲われてしまい、何とか屋根のある所まで走ってきたが制服はぐっしょりと濡れて肌に貼り付く始末である。昼間はあんなに晴れ晴れとして陽射しも痛かったのに、と今は黒に近いグレーの雨雲達を苦々しく見上げてみてもその勢いは激しいままだった。
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