天使を捨てて空がある。きれいな、雲ひとつない蒼い蒼い空。ゆるりと手を挙げて、伸ばしてみる。遠く、遠く。目には見えない果てしない宇宙の先まで掴めるようにと。でも、結局そんなことは叶わないし願ったところで届きはしない。
はぁ、息を吐いたところで自分の半径1mの二酸化炭素濃度がほんの少し上がるだけ。そんな些細なことですら周りの空気に溶かされて全てが平坦になってゆく。
哀しい訳では無い。ただ、つらくなっただけ。
見ているだけで良かったのだ。何も特別なことなんて望んでいなかった。いくら仕事を押し付けられようと、不出来な上司に叱責されようと、そんなことはどうでも良かった。積まれた書類は時間を犠牲にすればなんとかなった。叱責や罵倒も頭を下げて耐えればいつかは終わる。
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