ご褒美にもほどがある※
遠くで誰かが啜り泣く声がする。
……誰か、じゃない、雲さんだ。そして声は遠くじゃなく、どうやら私の耳元で聞こえていたらしい。重い瞼をこじ開けて最初に視界へと飛び込んできたのは、春の雨のような、優しい桜色の髪。
「雨さん!」
「……くも……、」
「よ……かったぁ! このまま起きてくれなかったらどうしようかと思った……」
ごめんね、ごめんね雨さん。苦しげに細められた眼からぼろぼろと涙が溢れる。私の唇にぽとりと雫がおちた。淡く温くて、少し塩からくて、……雲さんの味だ、などとぼんやり思う。
あぁ、そんなに泣かないで、雲さん、
「すみません……私は、どれくらい……?」
「あ……半刻くらいかな、まだ真夜中だよ」
日付が変わる前、雲さんに抱かれた。
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