【神無月】「この時季はどこの地方に行っても収穫祭で賑やかでいいよねえ――。たまには僕たちも飲みに行こうよ」
「何言ってるんですか。あなた下戸でしょう」
「えぇぇ――、そんなの雰囲気だよ」
珍しくみなさんお揃いの職員室で、ひとり楽しげに言い出した言葉に、速攻突っ込みを入れてくださった七海さんに感謝したい。僕たちの中には、否応もなく私も含まれているのは、火を見るより明らかだ。
「まあ、悟が飲まないって約束できるなら、いいんじゃないの」
あっ。思わぬところに伏兵がいた。昔から掴みどころのない先輩ではあるけれど、五条さんを止める係りを担っている場合が、多くもなかったな、うん。混ぜるな危険でしたね。
「するする。たこわさとか、もずくとか、つまみっぽいものが食べたいんだよねー」
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