この先も、ずっとふと目の前を歩く紫の肌をした大男の背中を見て零した小さな独り言だった。
「そういえば、一緒になってどれ位でしたっけ」
独り言なのだから、返事なんて期待していなかった。
というか、そもそもこの大雑把でガサツな男に自分が求めている論理的な返事が帰ってくる事なんて無いのだと思っていた。
「あ?5ヶ月と9日だろうがよ」
振り返りながらドナテロがそう答えたのだ。
驚いた。
自分のけして大きくない独り言が聞こえていたというのもあるが、彼が「どうだっていい」なんて無碍にせずに律儀に返してきたのだ。
「ンだよ。変な顔しやがって、ジルちゃんが聞いてきたんだろうが」
「…アナタの事なので、そういうことは適当に流すものだと思ってましたよ」
「お前との事なんだからテキトーじゃダメだろ」
「サラッとこっ恥ずかしい事言ってんじゃないですよ」
軽くドナテロの脛を蹴って彼より先に進む。
後ろから「痛ぇ!」とか聞こえてくるが、知ったことではない。あの巨体なのだから多少自分が小突いても大した事ないだろう。
そんな事より、今の自分の顔を見られたくなかった。
きっと普段より赤みのさした肌の色になっているだろうから。
あの前頭葉回路の整頓されてないバグサイボーグは、本当に予想もつかない事をしでかしてくれる。
だからこそ、自分は彼から離れられないのだろう。
「なんで蹴ったんだよ!?」
「衝撃でマトモな思考回路に戻るかと」
「今のが標準だっつーの!!!ってうかどんだけ旧式のポンコツ扱いなんだよ!」
「煩い。バラしますよ?素体を」
「素体をか!?!?!?」
くだらない、けれど慣れたいつものやり取りをしながら同じ家路につく日数を、自分でもすぐ言えるようになろうか。
…いや、この先も彼に聞けば、すぐさま教えてくれるから必要ないだろう。
そう思うのだった。
了