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    はなねこ

    胃腸が弱いおじいちゃんです
    美少年シリーズ(ながこだ・みちまゆ・探偵団)や水星の魔女(シャディミオ)のSSを投稿しています
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    はなねこ

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    幼高現パロ設定のスミちゃんが下着を買いに行く小話です(正確には下着を買いに行く前と買いに行った後の小話です)シャディミオ前提ですがシャさんは登場しません。いろいろ好き勝手に書いてますのでご注意ください。

    #シャディミオ

    プッシュアップガールズ 体育の授業が終わり、更衣室で体操服から制服へ着替えているときのことです。
     先ほどから妙に熱い視線を感じるな……と思っていたのですが、視線の主は、わたしの隣で着替えをしているミオリネさんでした。熱い視線はどうやらわたしの胸もとへ注がれているようです。
    「ミオリネさん、どうかしましたか? ――ほわわっ!」
     思わず変な叫び声を上げてしまったのには理由があります。ミオリネさんが突然わたしの背中ヘ腕を回し、ぎゅむっと抱きついてきたからです。
    「ミ、ミミミ、ミオリネさんんん?」
    「この弾力……この張り……この谷間……間違いないわ」
     ブラジャーの上にキャミソールをまとっただけのわたしの胸もとへ顔を埋めながらミオリネさんがぶつぶつつぶやいています。
    「ま、間違いないって何のことですかっ」
    「決めたわ。スレッタ、次の休みに下着を買いに行くわよ」
    「へ? した……ぎ?」
    「あんたもつきあえって言ってるの!」
     そんなこんなで(質問に答えてもらってないし一向にわけが分かりませんが)その週末、わたしはミオリネさんと一緒に下着屋さんへ行くことになったのです。



     おねえさんから「ここがオススメだよ」と教えてもらったサイズ展開豊富な下着屋さんで、紆余曲折ありましたが、ミオリネさんは希望通りのブラジャーとショーツを手に入れることができました。こういった――百人百様な体型をしたお客さんがたくさん訪れる――お店の販売員さんは、社交的で忍耐強く、何より専門知識と語彙力が豊かなひとでないと務まらないのだと、わたしは今日まざまざと実感しました。――販売員のみなさん、本当の本当にご苦労様です。いつもいつもありがとうございます。
     それでも帰りのバスの中で、とっておきのプレゼントの箱を抱きしめるようにして新しい下着が入った袋を胸に抱えるミオリネさんは、真っ白なほっぺたをすこうし赤くして、大きな瞳もきらきらさせて、小さな小さな女の子みたいで、それはそれは愛らしかったのです。
    「可愛い下着が見つかってよかったですね。あのお花が刺繍された下着、ミオリネさんによく似合っていました……って、ミオリネさん?」
     どうしたことでしょう。さっきまであんなに明るかったミオリネさんの顔色がどんどん暗くなっていきます。
    「ど、どうしてそんなに真っ青な顔をしてるんですか?」
     わたしはミオリネさんをのぞき込みました。
    「バスに酔っちゃいましたか? お腹が痛いとか?」
    「ちがうわ……」
     ミオリネさんが首を横に振ります。そして、小指に華奢な指輪がきらりと光る手でわたしの手をきゅっと掴むと、小さな唇を震わせながら言いました。
    「スレッタ……。わたし、気づいちゃったんだけど……」
    「は、はい。何に気づいたんですか?」
     こくんと息を飲み、ミオリネさんの言葉を続きを待ちます。この世の終わりのような顔をしてミオリネさんは口を開きました。
    「寄せて上げて作った胸ってことは、ブラを外したら元の状態に戻っちゃうってことよね?」
    「……へ?」
    「しぼんじゃうってことよね? 谷間も消えちゃうってことよね?」
    「…………」
     予想もしてなかった返答に、わたしは一瞬言葉を失いました。それから、とりあえずバス酔いでも腹痛でもなかったのでほっとした気持ちと、そんなことかと拍子抜けしたような気持ちとが複雑に入り混じったため息を落としました。
    「ミオリネさん~」
    「な、なによ?」
    「しぼむのが心配なら、ブラを外さなきゃいいのでは?」
     ミオリネさんはまなじりを上げてわたしを睨みつけました。バスの中ですから少し声を落として、
    「そういう雰囲気になる場合だってあるじゃない!」
     そういう雰囲気というのは、つまり、そういう雰囲気のことですよね。
    「ミオリネさん……。言おうか言うまいか悩んでいたのですが、思い切って言っちゃいますね。お胸がすべてではないと思いますよ」
    「天使の谷間を持つ者には持たざる者の苦悩は分からないわっ」
    「仮にミオリネさんのお胸がしぼんだって世界が終わるわけではないですし」
    「スレッタぁ!」
    「仮にミオリネさんのお胸がしぼんだって、シャディクさんはがっかりしないと思いますよ?」
    「――!」
     このひと言はミオリネさんに対してそれなりの効果があったようです(さすがシャディクさんです。ところで、こんな状況を的確に表現することわざがあったと思うのですが……動物が出てきたような気がしますが、残念ながら思い出せません。国語をもっと勉強しないと)。
    「べ、別に」とか「あいつのためってわけじゃ……」とか、ミオリネさんは口の中で何やらもごもごつぶやいていましたが、ばつが悪そうな顔をしてツンとそっぽを向きました。正確に描写するならば、車窓の縁に頬杖をつき、窓の外へ顔ごと視線を向けました。わたしの位置から見えるミオリネさんの耳の先がちょっぴり赤くなっています。これはもうあれこれ認めているも同然です。耳は口ほどにものを言うのです。
     何だかいろいろありましたが、照れているミオリネさんも可愛いです。好きなひとに可愛い姿を見せたいと思うミオリネさんの気持ちはよく分かりますし、ただ思うだけでなくそれを実行しようとしているミオリネさんも可愛いらしいです(少女漫画で読んだことのあるシチュエーションです!)。
     そうそう、ミオリネさんの好きなひとといえば――シャディクさんよりも先にミオリネさんの可愛い下着姿をたくさん見ちゃってごめんなさい……と心の中でシャディクさんに謝りにながら(試着を繰り返す度にミオリネさん本人から『見て』と言われたのだから、これはもう不可抗力です、はい)、わたしは自分用に買った新しい下着が入った袋をうきうきと抱え直すのでした。
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