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    はなねこ

    胃腸が弱いおじいちゃんです
    美少年シリーズ(ながこだ・みちまゆ・探偵団)や水星の魔女(シャディミオ)のSSを投稿しています
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    はなねこ

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    ハム式さんのを見てふと思った全校集会前日のシャミっぽいもの(スミの会話文にちょこっと追記しました)

    #シャディミオ

    ぼくのTシャツ、わたしのTシャツ 歩道橋の上から幕張メッセを見渡して、明日はこんなに大きな会場で全校集会をするんだなあと感慨にふけっていると、隣から深いため息が聞こえてきました。
    「本番は明日だってのに会場入りするだけじゃなくてもうTシャツ着てるとか、あんた本当に気ぃ早すぎ」
    「そういうミオリネさんも、足もとに置いたバッグの中にTシャツを入れてるじゃないですか……ってあれれ?」
     かばんからのぞく白いTシャツに視線を落として、わたしは首を捻りました。
    「Tシャツの色が違う? ミオリネさんのってネイビーでしたよね。それにサイズがLサイズ……?」
     一瞬息を飲んだあと、ミオリネさんは足もとのかばんをひったくるようにしてわたしの目から隠しました。
    「か、勝手に見てんじゃないわよ! これは、その、間違えて持ってきちゃっただけよ!」
     間違える?
     わたしは再び首を捻ります。
    「Tシャツは一枚ずつしか配布されていないはずですし、間違えようがないんじゃ……。それに、誰にどのTシャツが支給されたのか分かるように、わたし達のTシャツには特注でタグのところに名前の頭文字が入っていたはずですが……」
     ふと気づいたことがあり、わたしはミオリネさんの顔をのぞき込みました。
    「今見えた頭文字、ひょっとして『S』ですか?」
    「――!」
     ミオリネさんの白い頬がたちどころにばらの花の色に染まります。
    「一瞬だったのに見えたの? あんたってば、どうしてそんなに動体視力がいいのよっ!」
     からりと晴れた夏空の下、ミオリネさんの声が響き渡ります。このときミオリネさんが「あとで彼に『あんたのところにわたしのTシャツない?』って連絡しなきゃ!」と考えていたことをわたしが知るのは、もう少しだけ先の話です。



     数分前からシャディクが集会室の中をぐるぐるしている。テーブルの下やソファの後ろ、あげくのはてにモニターの両脇に並んだ壺の中までのぞき込んではため息を落としている。見かねたサビーナが、
    「シャディク、何か探してるのか?」
     そう問いかけると、シャディクはゆっくりこちらへ視線を向けた。
    「うん。誰か、明日の全校集会で俺が着るTシャツを見なかったかい?」
     全校集会のTシャツって……。
    「あのサークル状に模様がたくさん入ったTシャツ? 絶対忘れちゃいけないからって、数日前に自分の部屋へ持っていったんじゃなかったっけ?」
     紅茶を飲みながらわたしが言うと、シャディクはちょっぴり困ったような顔をして笑った。
    「俺もそのつもりだったんだけど、部屋のどこにも見当たらなくて」
     おかしいなあ……とシャディクが首を捻っているところに、「おい、シャディク」と口にしながらレネとエナオが戻ってきた。レネが手にしているのは――
    「てめーの部屋の前にTシャツが落ちてたから拾ってやったぞ。これ、全校集会で着るヤツだろ」
     みんなに見えるようにばーんと広げてみせたTシャツは、確かに全校集会のTシャツだった。
     見つかって良かったねと言おうとしたところ、わたしの隣に座っていたサビーナが顎に手を当てながらぽつりとつぶやいた。
    「ふむ。確かに全校集会のTシャツのようだが……」
    「ネイビーのSサイズ……? 色もサイズもシャディクのと違ってる……?」
     ソファの上で猫みたいに身体を丸めていたイリーシャも首を傾げる。そうだ、シャディクのTシャツの色は確か白だったし、SサイズのTシャツをシャディクが着られるとは思わない。
    「サイズ表記とは別に、タグに『M』って入ってるわね。頭文字入りのTシャツが配られたって話は聞いてるけど」とエナオ。
     頭文字が『M』?
     ええっと、それじゃあ、つまり――
    「そのTシャツはシャディクのTシャツじゃないってこと?」
     わたしが言うと、シャディクは首を横に振り、やんわりとした手つきで(だけど流れるような素早さで)レネの手からネイビーのTシャツを回収した。
    「いや、俺のだ。俺のTシャツで間違いないよ。拾ってくれて助かった。こちらで引き取るよ」
     このときシャディクはにこにこ笑っていたけれど、「あとで彼女に『君のところに俺のTシャツないか?』って連絡しないと!」と内心焦りまくりだったことをわたし達が知るのは、もう少しだけ先の話。
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