月夜の逢瀬は突然に。城塞高地にある廃墟群を抜けてさらに奥へ奥へと進むと、人間が立ち入る事がもう無いであろう古ぼけた教会が姿を現す。
所々劣化し割れてはいるが、
鮮やかなステンドグラスの窓からは優しい月明かりが差し込み穏やかな光を中へと届けている。
その教会に、両膝を付いて手を組み
祈りを捧げている者がいた。
薄紫色のヴェールを被り、漆黒を纏いしは
名をゴーシュ、と言う。
気の遠くなるような年月を経て膨大な知識を得ると一部のモンスターは人に化けることが可能となると
言い伝えがあるが、それは本当の事らしい。
ゴーシュもまた、ゴアマガラというモンスターだ。
遥か遠い異国より兄のシャガルマガラと共にこの地に降り立ち、住み始めた。
モンスターとはいえ、元より優しい心根の持ち主だったゴーシュは他者の平穏と幸せを祈りながら、日々を過ごしている。
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