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商談用の資料をまとめ上げ、急いで会社を飛び出した月島は、その足で二つ隣の駅へと向かった。駅を降り、脇目も振らずある神社を目指す。
風もない蒸し暑い夜だった。
そんな不快な夜でも、広い神社の周囲は明るく、人で溢れ返っている。今夜は年に一度の祭事らしい。
真っ赤な鳥居の下、目を見張る程の美男子が肩に少女を乗せて激しく手を振っていた。
「月島ぁ!こっちだ、こっち!」
「月島ニシパ!残業長いよぉ!」
祭りに相応しく、ぴしりと浴衣で決め込んだ鯉登とエノノカが、牛串とクレープを各々手に持ち月島を迎えた。
「す、すみません!これでも急いで来たんですが」
二人の前で止まり、膝に手を置き乱れた呼吸を整える。涼しげに着飾った二人とは違い、月島はYシャツに革靴という少し場違いな出で立ちだ。
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