鯉月③Prologue
月島の体温が段々と霧散していき、それでも、とこぼれ落ちる熱を拾うようにして抱きしめていれば部屋には日が差し込んですっかり夜は明けていた。手首にしっかり結ばれた組紐と日光に照らされた髪と目が全く同じ色だと言うことをこの男は気づいたのだろうか。
それから月島の墓に寄る日々が晩年まで続く。己の足が言うことを聞かなくなっても。溝をなぞらなければ墓を認識できなくなっても。それでも毎日毎日手を合わせれば、ある日カンシロギクが供えられていた。どうして認識できたのか判らない。けれど、それは確かにカンシロギクであった。そこで私の意識は途切れた。
初めて小遣いを貰った時、何故だろう。紫のミサンガを迷わず買っていた。
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