傷痕 その後「じゃあ此方にお座り下さい」
そう駅員に促され、傑はまだ少し顔色の悪い悟の背を優しく支えながらスチール製の椅子に並んで座った。
呼吸も元に戻り口数も増えてパッと見には落ち着いたようだけど、繋いだ手はまだ微かに震えている。
「お待たせしてすいませんでした」
「いえ、他の方々から事情も聞いてましたので大丈夫ですよ。それで彼の方からも話を聞きたいのですが」
「分かりました…悟、話せる?」
俯いたままの悟の背を優しく擦ってやりながら、傑は心配そうにその顔を覗き込んだ。
「…ん、大丈夫」
少し躊躇いながらも漸く顔を上げ、傑に頷いてみせた悟にその場にいた全員がホッと息をつく。
「では、まず触られた状況から伺えるかな?」
2023