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    rlyeh_fish

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    rlyeh_fish

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    閣下と大天使のスケベを供給してくれた人に振り込み先を聞いたらおひねりは森の番人の鎧に突っ込めというので突っ込んだ、マッドサイエンティストフォロワーとtmのところへおひねりする話

    お使いに出かけたらおひねりを入れられた件についてタムリンは困惑した。
    まさかこの大八車を引いて帰れというのかと頭を抱えた。
    とある森での話であった。

    タムリンはーートウキョウの地に住むある人間の仲魔である。
    大破壊前の語彙を使うならマッドサイエンティストというやつなのかも知れぬ。
    人里離れた土地の、昔は工場だか倉庫だかだった建物を根城にしていて、もっぱら妖精の専門家として知られている。
    邪教の館でもないのに妖精タムリンを大量生産する、というよりはタムリン作成に関してはどんな悪魔からでも合体ルートを導き出してしまうために、結果として専門家扱いされるに至った、そんな女であった。
    さてそんな女には遠方に知己があった。
    遥か600kmは離れた西の地、悪鬼退治で知られる神の膝下に住む女である。
    どうした経緯で付き合いが始まったのかは知らないが、ともあれ仲魔を異界の経絡を通して送って連絡を取り合う程度には深い付き合いだった。
    今回タムリンがここへ使いに出されたのは、女が知己に頼まれて確保した機械部品を届けるためだった。
    かつては普通に手に入った機械も、今ではヤミ市場(これも大破壊前の語彙だ)でさえ流れず、特定のツテで高値を払うか自ら掘り返さなければ手に入らない。
    法外とすら呼ばれなくなった対価の高さから、掘り当てた機械を売らずに身内で融通し合うのもよくある話になっている。

    「申し訳ないんだけど、持って帰って欲しいものがあるんだね」
    荷物と添えられていたデータチップの中身を検分して満足そうに頷いた知己はそう言ってタムリンを見上げた。
    獲物を見つけた猫のようにクワッと開いた目が興奮を物語っている。
    たまにこの知己はこんな目をする……同類項、という単語が頭をよぎる。
    『構いませんよ、ええ』
    「ただちょっとまだ用意がすんでなくてね。夕方前には準備できると思うから、少し期間を潰してて欲しい」
    『では、ちょっと休暇と参りますかね。たまには古い森を歩きたいと思っていたところです』
    「じゃあアフタヌーンティータイムの頃に。待たせて悪いね」
    言って、知己は踵を返して家の中へ駆け込んでいった。
    律儀と言うべきか、知己はいつもタムリンの主人に宛てて土産を持たせる。
    大破壊の折、ICBMの雨を免れたこの土地は緑豊かなままで、しかし通信手段の断絶によって生存者が集まって実りを食い荒らすこともないまま秘境のように時を過ごした。
    そのおかげでトウキョウではある意味機械部品以上に高嶺の花となった新鮮な畑の実りもここでは手間隙を掛ければ得ることができる。
    知己はこの辺じゃ高いものでもないよなどと言うが、トウキョウ価格で考えれば対等な取引だと言えるだろう。
    『さて、何か果物でも入っていればいいんですが』
    タムリンは森の中を歩きながら土産物に思いを馳せた。
    これで一応タムリンは主人の健康を案じる程度には忠実な仲魔であると自負しているので、そのために必要な食品類が土産とあればきちんと持ち帰るつもりであったのだ。

    そう、大八車を見るまでは。


    森の散策から戻ったタムリンを待っていたのは、縁側でよく冷えた茶を用意していた知己だった。
    多少の戦利品を手に帰還したタムリンが茶を飲み干している間に、知己はお土産を取ってくるからと家の裏手の方へ引っ込み……ぐぁらぐわらとやかましい車輪の音とともに大八車を引いてきた。

    まさかの大八車。
    この大破壊後の世界で大八車。
    持ち手のところに封魔の鈴がついた大八車。

    ずつしりと擬音が付きそうなほど載っているのは、野菜と果物と漬物が入っているらしきらしきかめと、あとなんですかアレは、凍った魚?
    立ち上がりかけて固まったタムリンはしばらく大八車の上の山を見つめたあと、恐る恐る知己の女に声をかけた。
    『……あの、あなた、まさかこれを全部持って帰れと?』
    「うん」
    『……多くありませんか、いくらなんでも』
    「いやあ彼女がくれたデータ、めちゃくちゃ助かるし、捗るし、すこだしでね。ホントいうともっと別のものを用意したかったんだけどそっちは今日明日じゃどうにもならないから精だけでも付けてもらおうかと」
    あとこれおひねりだから受け取ってぜひ。
    言うが早いか知己はひねったマッカ札をタムリンの鎧の隙間に押し込み始める。
    完全にガンギマリの、タムリンの主人が時々やるのに似た目をした女の素早い手捌きをなるべく穏やかに払いつつ妖精騎士は後ずさるが、スススススと知己も素早いすり足でついて来る。
    『いやあなたちょっと、待ちなさい流石におひねりはないでしょうおひねコラどこに手をつっこんでるんですかはしたない甲冑の隙間はともかく具足の方はやめなさい具足の方はちょっとちょっとちょっと』
    「いやいやいやこういうのキミのご主人お好きじゃないかなさあご主人の活力のためだと思ってホラホラホラホラ」
    『あっちょっとどこ触ってるんですかワキはやめなさいワキは!あなたやっぱり彼女と付き合いがあるだけあっコラ仲魔を呼ぶんじゃありません触手がなんかヌルヌルする!ウナギみたいにすっぽ抜けるーーー!』
    「いやあホントはね!【開幕!イチモクレン先生の処女愛好家わからせ合宿inセトの孤島!!】本とかね!お返しするべきかと思ったんだけど!さすがに一朝一夕にはご用意できないからーーーーー!」
    『何ですかその地獄を煮出してチャイにしましたみたいな発想ーーーーーーー!?』
    知己の喚び出したイチモクレンがタムリンの脚をぐるぐる巻きにする。
    そのままずでんとひっくり返ったタムリンの鎧に追加のおひねりを突っ込むと、知己は満足気な笑顔とともにイチモクレンに拘束を解かせた。
    『……せっかくなのでおひねりは賠償金兼謝礼としていただいておきます、が!せめてもうちょっとレディらしく振る舞ってください全く。我が主人の関係者で食料の提供がなければ串刺しにしてるところですよ』
    「気をつけるよ。まあアレだ、キミの主人によろしく。もらったデータでギンギンになったって伝えてね」
    はぁ、とタムリンは疲れ切ったため息を吐いて、手を振る知己の家を辞した。
    お土産山盛りの大八車は主人の腹筋を笑いで鍛えたのち普段の生活でとことん使い倒されることになり、いつの間にか撮られていたおひねり妖精の写真のデータは後ほどトウキョウに着弾することになるのだが、その辺はまあ、別の話である。
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