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    NEIA_AINE

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    NEIA_AINE

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    完全にケツ叩きの霊能力者マコト。タカマコどこに行ったのか教えてほしい。代わりにタケルさんが死んでるけど死ぬほど出てくる。キン誕読んでも掴みきれないそんなタケルさんが大好き。掴ませろ。頼む。まだ書ききれてないけど、進捗。今6000字ぐらい。

    #タカマコ
    #IWGP

     幽霊って信じるか?ってこの導入は前にもしたことがあるかもしれないな。あのときは見えない敵におれたちは踊らされて散々な目にあった。そもそも幽霊ってのは正体見たり枯尾花、なんて言われるぐらい存在があやふやなものだ。そう簡単に幽霊が見えたらたまったものではない。結局のところ、都市伝説と同じだ。信じるか信じないかはあなた次第ってね。
     これは普段から愛と平和の池袋のために東奔西走するおれのちょっと現実離れした話。おれは昼でも夜でも池袋のために身を粉にする奉仕者なんだ。

    『次のニュースです。昨夜池袋三丁目の交差点でバイクと乗用車が絡む事故があり、バイクに乗っていた男性が怪我をしました。警察はこの事故を……………』
     「やだ。三丁目って言ったら藤岡さんのご親戚の家の近くじゃない」
     おふくろが朝のニュースを見ながらぼやく。味噌汁を片手に持っているが食べる口は、喋る方向に舵を切っており、手は完全に空中浮遊状態。おれはそれを横目に食器をシンクに落とす。朝ごはんをおふくろがさばいてくれている間に、おれは仕込んだばかりのフルーツを簡単に仕分けしつつ開店準備をしなければならないのだ。あまり悠長にテレビを見れる訳ではない。
     うだるような夏の暑さを背に受けながら、ダットサンの鍵を手に取り、必要な青果のリストを眺めながらエンジンをかける。
     『あれ?マコトくんもう出るの?』
     声をかけられた。当然だがおふくろではない。うちの店の社員はおふくろとオレだけ。黒いスキニーに黒の革ジャン。ジャケットの下に着たTシャツは腹部だけが赤く染まっている。誰だと思う?驚くことなかれ、彼はタカシの実の兄、タケルさんである。
     安藤尊。タケルさんは俺が高校生のときの夏に死んだ。その辺りの経緯はぜひキング誕生を読んでくれ。おれと池袋のクールな王様タカシとの一夏のランデブー(タカシが聞いたら拳が飛んできそうだ)のお話だ。しかしタケルさんは今おれの横で、厳密には助手席にいる。再度言うが彼は故人だ。ここから導き出される結論は何だと思う?え?おれがイカれた?勘弁してくれよ。いくらタケルさんを尊敬していても、どうせイカれるなら可愛い女の子が見える方にイカれたい。
     『マコトくん、今ちょっと失礼なこと考えたよね?』
     笑顔が怖かった。さすがはタカシの兄だ。笑顔だが圧がすごい。
     タケルさんが霊体となって横にいる事情を説明するには、幽霊の概念の説明が必要になる。できるだけ手短に話すよう頑張ろう。
     
     そもそも幽霊は霊感の強い人間にしか認識されない。現世への強い未練や執着を残した者が、そこに留められるだけで、要は思念体のようなものなのだ。生身の人間とは訳が違う。
     ただ、例外的に想いの強さが見えないはずの人間に影響を及ぼす場合がある。そういった事象がいわゆる心霊現象だ。この場合は霊感の弱い人でも感知できてしまう。
     あと時間も多分に影響を及ぼす。丑三つ刻ってのはさすがに聞いたことがあるよな?幽霊が出やすい時間とか色々言われてるけど、まったくのその通りなんだよ。元来夜は陰のイメージが強い。それに加えて「丑三つ」って方角に当てはめると東北を指していて、この方角が「鬼門」つまり幽霊が出やすいって信じられてきたんだ。
     この「信じる」って行為が積み重なると現実世界にもまた影響があるんだけど、そこは今は割愛しよう。
     そしてオレは不幸なのか何なのか、霊感が強い方らしく、昼間でもそういった霊体ってのが見えてしまうし、話せてしまう。触る、に関してはまちまち。多分相手の霊体としての被認知度が関係してるんだろうけど、よくは知らない。なんせ専門家じゃないもんでね。
     その辺りを理解してもらった上で、タケルさんだ。タケルさんは数年前、オレたちが毎年の墓参りに、あの高架下に訪れたときに不意に現れた。まるでずっとそこにいたような雰囲気で。オレ自身何回も足を運んだ場所なのに初めて目にしたときはひたすら驚いた。腹が赤く染まっていたのは、まぁ、なんというか慣れていたからそんなにだったけど。
     『マコトくん!?もしかしてオレが見えてる!?』
     そんなことを言いながら、浮遊できるのに足を動かして駆け寄ってくる年下にしか見えない年上の青年に、唖然としていた記憶は今でも鮮明だ。

     そんなこんなでタケルさんは今もオレの横でふよふよ浮きながら果物屋の前にいる。見える人はたまにギョッとしてる、ような気がするけどオレが普通に話してるのを見るとホッとした雰囲気で去っていく。それの繰り返し。暇なときの話し相手になってくれるし、たまに店の前でやるシャドーボクシングはお手本のような美しさだ。事実タカシのボクシングの手本は彼だから間違ってないけど。そんな綺麗なフォームを全くの真顔で通り抜ける通行人を見てると、ちょっと面白かったりもする。
     『そういえばマコトくん。洗面所の石鹸の中身なくなりかけてたよ』
     息を切らさずにシャドーボクシングをしてるタケルさん。いやどういう原理だ。霊体だからか。というか
     「なんで知ってるんだそれ」
     故人になってから出会ってすぐは使っていた敬語も、既に取れて普段通りの感じで聞き返してしまう。見た目はオレの方が同い年か少し年上ぐらいだし、なにより本人が嫌がったので。
     『おふくろさんがかなりポンプしてやっと出してるのを見掛けたんだ』
     なるほど。
     「今日辺り買っておくよ、ありがとうタケルさん」
     完全にオレたちの、厳密にはオレのライフスタイルに溶け込んだタケルさんが見えるだろうか。故人とはいえ、やはりオレたちより長く生きてきただけある。いや死んでるんだけどね。一人で店番をしていたときに、自分がどうやって暇を潰していたか思い出せないぐらいだ。
     そんな生活臭丸出しの会話をしていると
     「あの、真島誠さん、ですか?」
     声がした。パッと顔を上げたが、オレはその位置を再度下に戻す。なぜって?声の主の位置が低かったからだ。そこにいたのは車椅子の青年だった。

     おふくろが機嫌が良くて、珍しく普通に見送ってくれたため、すぐにオレたちはウエストゲートパークへと移動した。暑いので適当な日陰に入ることで、涼を取る。
     彼は柏木剛と名乗った。見た目はスポーツ選手のように爽やかだ。高校生ぐらいに見えるが、かなりガタイがいい。涼やかな髪の下には誠実そうな目が覗く。そして車椅子に乗っている両足は白く太い包帯でグルグルに巻かれて固定されていた。
     「折れてるんです。完治するかしないかはまだ五分五分らしくて。リハビリ次第です」
     オレの視線に気付いたのだろう。ゴウはそう解説してくれた。
     「わりぃ、ジロジロ見るつもりはなかったんだけど、やっぱり気になっちまって」
     謝るオレに気にしてない様子で笑うゴウ。むしろいい経験だ、と言い出しそうなぐらいだ。意外と楽観的な性格なのかもしれない。
     「んで?オレのところに来たってことは、何かしらのトラブルなんだろ?聞かせてくれよ」
     「その前に。真島さん」
     ゴウは真剣な目つきになる。

     「真島さんは怪奇現象って信じますか?」


     オレの話だ。物心付く頃には多分見えていたような気がする。何って、幽霊だ。子供ってそのあたり無邪気だから、当時はそれがなにかも分からず話しかけてた記憶がある。普通に大人の"人"だと思ったんだろうな。おふくろがどこかでその異様さに気付き、寺に連れて行かれて初めてオレが"見える"と発覚した、みたいな話を昔聞いたことがある。漫画みたいに薄気味悪がって捨てるような親じゃなくてよかったと心底感謝している。普段は言わないんだけどさ。
     だから信じる、信じないの話は当然信じる、だ。万が一見えてなくても、相手の真剣さを見れば嘘かどうか分かっただろうけど。そしてゴウの瞳は嘘を付いている人間のそれではなかった。
     「信じるよ」
     だからオレはそう答えた。
     ゴウがホッとした顔を見せる。まぁ幽霊なんて普通は信じてもらえないものだし、聞くだけでもそれなりに勇気がいるのだろう。
     『カッコいいねぇ、マコトくんは』
     頭上にいるタケルさんに目を向ける。彼はニコニコしながら、頬杖をついている。皮肉でもなんでもない素直な称賛に見えた。
     「……そんなんじゃねぇよ…」
     「えっ?」
     「いや!何でもない!」
     ゴウに続きを促す。
     車椅子に乗せた足を撫でながら、彼はこれまでの経緯を話し始めた。

     この足、つい2ヶ月前までは歩けていたんです。走れたし、ボールも蹴れた。あ、オレサッカー部なんですよ。一応レギュラーではあったんですけどね。
     でも事故にあったんです。池袋三丁目の交差点、よく事故が起こるでしょ?あそこで車に轢かれて。おかげで両足は骨折。ひき逃げでした。でも直後にオレを轢いた人は別の事故に巻き込まれて死んじゃったんです。オレの足自体は向こうの方の保険金でなんとか手術や治療は受けられたんですけど。
     そこまではまぁまぁ普通の自動車事故の話だとオレも思うんですよ。ニュースで見て、他人事のように思っていたことがたまたま降りかかっただけで。でもそれだけで終わらなかった。
     退院しても、リハビリのために学校のあとは病院に通ってるんです。ただ、病院からの帰り道が少しだけ坂道で、登るのが凄く大変なんだ。時間ですか?日によるけどだいたい8時は過ぎますね。両親は共働きだから迎えとかは頼めないし。この坂が意外とキツくて、歩きなら5分でいけるのに、これだと15分はかかるんですよ。
     ただ2週間前ぐらいから変なことが起き始めて。その坂を登るときに、明らかに楽なんです。まるで誰かに押されているみたいに。筋肉がついた?いやまぁそりゃついたらいいですけどね。昨日までキツかった坂が、あまりにも急に楽になったんです。それはさすがにおかしいでしょ?だから一昨日ぐらい、意を決して車椅子から手を離して、ブレーキも外してみたんです。それでも車椅子は進みました。何の力も入れてないのに。物理法則を無視して坂を上がっていったんです。坂を登りきったところで、その感覚は途切れて、またそこから車椅子を動かして家に帰りました。え?そ、そりゃ多少気味悪くはありましたけど、助かったなぁの気持ちもあったので、そんなに。驚きはしましたけど。
     困ってはないけど、やっぱり不思議だと思ってて、そんなときに真島さんの噂を思い出したんです。面白い依頼はほとんどタダ同然で聞いてくれるって。しかもここ数年、虚空に向かって話しかけてるところを見る人が増えたってのも。だから話だけでも、って思ったんです。
     真島さん?どこ睨んでるんですか?

     『あちゃ〜。ゴメンよマコトくん。見られてるとは思ってなかった』
     そう謝るタケルさんを少しばかり睨んでおいたが、考えてみれば真島青果店の前はそれなりに人が通る。それを分かっていて、タケルさんとのおしゃべりに夢中になっていたオレにも非はあった。
     ゴウはこちらを見上げて、首を傾げている。この様子はタケルさんは見えていないだろう。となるとゴウ自身に霊感はないと考えるのが妥当だ。その上で車椅子を押しているだろう何者かがゴウに、何かしらの思いを抱えている、と考えられる。しかも霊感のないゴウに認識させるほど、現実の物を動かすほど。その思いはかなりの強さだろう。
     「よし、その依頼引き受けた。オレのことはマコトって呼んでくれよ。名字で呼ばれると背中が痒くなっちまう」
     「っ!は、はい!マコトさん!」

     とはいえ、この話はそう難しい話ではなさそうだった。なにせ見えない相手はゴウに危害を加えようとしているようには思えないから。
     ゴウには普段通りに病院へ行ってもらい、帰りにオレがそれを尾行する。ゴウと一緒だと霊が出ない可能性もあるから。もちろんタケルさんも一緒にだ。同じ霊体だから見えるものもあるし、上からの視点を得られるのは大きなアドバンテージだしね。
     「タケルさん、どう思う?今回の話」
     オレはカットしたパインをパックに詰めながら、後ろにいるだろうタケルさんに声をかける。
     『うーん。考えられるのはやっぱりひき逃げしちゃったあと事故死したっていう運転手かなぁ。後悔の念って割と分かりやすく未練になりがちだし』
     「やっぱり?オレもその線かなぁって思うんだよ」
     パインの汁でベトベトになりながら、ナイフを入れ続ける。
     そう。後悔先に立たずって言うぐらいで、後悔というのは後に引きやすい感情なんだ。幽霊になる理由の大半が後悔。
     「なんにせよ、今日様子を見ないとな」
     『そうだね』
     タケルさんはふわふわした返事だ。まぁ実際浮いてるんだけどね。

     夕方、ゴウの通う病院の前で待つ間、周辺の様子を実際に歩いてみた。言っていたように直前の坂の勾配が意外とキツい。自転車で漕ぐとき、そんなに見た目坂ではないのに、走ると結構疲れる、そんな坂だった。車椅子で移動するには大変かもしれない。
     『車椅子に乗ったことないから分からないけど、ちょっと大変そうな坂だね』
     タケルさんも同意見のようだった。
     『それに現状では霊的な何かがいる感覚はしないなぁ』
     霊体のタケルさんは近しい存在への感覚が、生身の人間よりも強い。「視える」オレよりもよっぽど性能のいいレーダーなわけだ。
     「じゃあとりあえずゴウを待つか。やっぱり現場を見てこそだよな」
     数十分もふらふらと待っていると、ゴウが車椅子のタイヤに手をかけて此方へ来た。
     「マコトさん!すみません、わざわざ…」
     礼儀正しい彼はオレがここに来ただけで恐縮している。別に構わないのにな。こうやってトラブルシューターしてるのも最早趣味の延長みたいなものだし。
     「いいよいいよ、今回は様子見だ。実際にあの坂を通って何が起こるのか確認する。オレは後ろから見てるから普段通りに帰ってくれ」
     タケルさんには坂の真上に待機してもらう。相手の出方次第ではタケルさんに対象の確保をしてもらう必要がある。彼は心得たと頷いて、スィーっと空に溶け込んでいった。
     オレはさも偶然同じタイミングで病院を出た他人の振りをして、スマホを触りながらゴウの後ろ、10mほど間隔をあけて歩く。坂に差し掛かると、ゴウの速度が目に見えて下がったので、それに合わせてオレも歩くスピードを緩めた。スマホに夢中でゴウには気付いてない風を装う。普通なら手伝うような場面で手を貸さない理由が必要なんだ。真っ暗な画面に映るオレを顔で見返しながら、視線だけを前に向ける。
     まだかーーー。
     果たして、そのときは訪れた。
     ゴウの通った路地から、ソレはスーッと現れたかと思うと、音もなくゴウの車椅子に手をかけた。そしてただ淡々と押し始める。
     後ろ姿だけで表情は読めない。が、シルエットで女であることは判別できた。パンツスーツを着ているが、足は片方だけだ。さらにスーツが黒くて分かりにくいが、背中の左側つまり心臓のあるであろう位置が赤黒い。血であることは間違いようがなかった。
     オレはそこで話しかけずに、そのまま車椅子が坂を上っていくのを後ろから「視ていた」。幸い女はオレが「視ている」には気付かずに、坂を登りきったようで、スーッと消えていこうとした。オレは頭上高くにいるであろうタケルさんを見上げる。オレの目にうつらなくなる前に話を聞きたかった。
     タケルさんは持ち前のスピードで彼女が消えつつある方向に駆け出した。それを見送ったオレはゴウのところに歩み寄る。
     「大丈夫か。なんかおかしなところはあるか?」
     ゴウはこちらを見上げて、へらりと脳天気な笑顔を見せる。
     「相変わらず不思議な感じはしますけど、特には何も。マコトさんから見てどうでした?何か分かりましたか?」
     オレは少しだけ迷った。"彼女"はゴウに害をなそうとはしていない。だからこそ彼女側の話を聞いてから考えるべきだ。でもゴウに嘘を付くのもそれは違う。だから後ろ髪をぽりぽりとかきながら
     「あー、まだ判断材料が足りない。もう少し時間をくれないか?今日は家まで送ってやるし」
     そう答えるに留めた。
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     これは普段から愛と平和の池袋のために東奔西走するおれのちょっと現実離れした話。おれは昼でも夜でも池袋のために身を粉にする奉仕者なんだ。

    『次のニュースです。昨夜池袋三丁目の交差点でバイクと乗用車が絡む事故があり、バイクに乗っていた男性が怪我をしました。警察はこの事故を……………』
     「やだ。三丁目って言ったら藤岡さんのご親戚の家の近くじゃない」
     おふくろが朝のニュースを見ながらぼやく。味噌汁を片手に持っているが食べる口は、喋る方向に舵を切っており、手は完全に空中浮遊状態。おれはそれを横目に食器をシンクに落とす。朝ごはんをおふくろがさばいてくれている間に、おれは仕込んだばかりのフルーツを簡単に仕分けしつつ開店準備をしなければならないのだ。あまり悠長にテレビを 6618