空閑汐♂デイリー【Memories】19 軍に入って二年、五年間同じ学び舎で暮らした同期をイーグルと呼ぶのにも慣れた頃。酒場ではその男の話題で盛り上がっていた。
「アイツ、またモーション掛けられてたんだってよ」
「今度は誰だ?」
「整備のクラウディア! 俺も狙ってたのになぁ」
「お前とイーグルを比べたらイーグルに行くだろそりゃ」
先輩達の話を聞き流しながら、この酒場に居ない男の事を思い出す。大胆かつ繊細な操縦はかつてのまま、振る舞いはどこか機械的になってしまった男。空閑が居なくなったというそれだけで、彼はそれまで持っていた筈の人間味を削ぎ落としていった事をこの場所でフォスターだけが知っている。
この部隊に配属された頃にはもう、殆ど笑うこともなくなっていた汐見はしかし男女問わず周囲の人間を虜にしていた。着痩せをするタイプなのだろう、細身の長身は脱げば引き締まった筋肉を纏い、その整った相貌も歳より若く見えるものの精悍な青年らしさを湛えていて。
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