こっち向けよ!!エルフの襲撃から少し経った頃の王都。
シルヴァ家の次男ソリドは何やらイライラした面持ちで部屋のベッドに胡坐をかいている。
「どうしたの、気に入らないことでもあった?」
部屋に入ってきた姉であるネブラが、訳を聞くが、話したくないのかソリドは
「いや…別に……」
と小さな声で返すと、部屋から出ていく。
胸中に抱えていることは余りにもくだらなくて、話せば笑われてしまい、恥をかくから。
まだ復興途中の区画を大股で歩いていると、何か柔らかいものを蹴飛ばした気がして足元を見れば、膝下くらいまでの大きさのキノコが転がっていた。
「この魔法……」
苛立ちが更に込み上げてきてキノコを踏みつければ、胞子になって消えた。
『ああー!!同胞が!!』
急に聞こえた太い声に驚いて肩を跳ねさせた後に振り向けば、濃い顔のキノコを肩に乗せた魔法騎士が…翠緑の蟷螂のエンが数歩先に立っていた。
『八つ当たりか!?』
「あ?俺の通り道に居たのが悪いんだよ」
『全く、王族とは思えない程粗暴だな君は!』
ソリドの眉間の皺がより深くなる。
まただ。また、俺に説教をした。
平民の分際で。
選抜試験の時、兄の在り方について説教をされてから、ソリドはエンが気に食わなくて仕方なかった。
妹ノエルと一応和解してからは、それが浮き彫りになり、今日もそれで苛ついていたのだ。
更に今日は、会ってからというもの直接喋ってこない態度が、ソリドはムカついて仕方ない。
歩み寄って詰め寄り、エンの眼前に人差し指を突きつけた。
「王族の俺に対して何だその態度はよォ」
だが、エンは自分の唇を開かずに
『まだ作業があるんだ、今日はここまでにしてくれ』
と突っ返して、去っていった。
残されたソリドはその場で地団駄を踏んだ。
「後悔させてやる…!平民が王族に楯突いたことをよォ……!!」
作戦を考える為、ソリドは城に帰って行ったのだった。