砂糖を吐きそうなほど甘い「おっ、フェイス~お前もこっち来いよ~」
シャワールームから戻ればフェイスに気づいたキースに呼び止められた。間延びしたキースの声に、テーブルの上に転がった数本の空き瓶。リビングのソファに寝転ぶ酔いどれキースがフェイスを呼ぶ理由は一つしかない。
「俺は明日、オフじゃないんだけど」
それを察したフェイスの返答は、もちろん拒否だ。フェイス自身、酒に慣れていないうえに呑むような理由が見つからず、数回に一回、誘いに乗ればいい方である。
「まだ何も言ってらい、だろ~」
キースの呂律が回っていない舌にとろけた瞳。十分な酔っ払いだ。昔と違い外まで迎えに行くこともないからマシになった方なのだろう。空に近いグラスをあおり、キースが片手を気だるそうにあげフェイスを手招く。
2011