Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    紀帝柳王フェミニゼートドラゴン

    @femdra
    二人組の同人サークルです
    呪われているので女体化しか書けない
    ホモのヘテロが好き(左右固定の意)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 9

    【大盛り③】ごめふし2nd noon展示、七月発行新刊の一部先行公開です。イベント後も読めます。長いので一話ずつに小分けします。
    両片思い先輩五×後輩伏♀のもとへ未来から28歳の五が現れて奇妙な三角関係が始まる、甘く切ない初夏のSF青春アニメ映画(概念)です。

    #五伏
    fiveVolts

    タイムパラドクスゴゴフシ♀ III 『奇妙な三角関係』***

    「未来から来た五条? なにそれウケる、負担が2倍で夏油が死ぬじゃん」
    「君が多少は引き受けてくれるという配慮とかはないんだね」
    「あたぼうよ、うわマジだ、二匹いる。一匹頂戴よ、解剖してみたい」
    「駄目、別人に見えて一応地続きの悟…のはずだから。危害を加えたら将来の悟が大変なことになるよ」

    小柄な同級生がヤニ代わりの棒飴を咥えたままへらへらと事態をおちょくるが、すでに夏油の胃はきりきり痛み出していた。目下話題の彼はというと、高専応接室の革張りソファーにどっかりと腰を下ろしていちごオレなど啜っている。顔面には真っ黒な目隠しがへばりついていて、風体が胡散臭いことこの上ない。

    「そうそうコレよコレ! 学生時代いっつも飲んでたなぁ〜〜! このパックのやつ、僕の時代では終売しちゃっててね。やば、超懐い、ノスタルジーで泣きそう」
    「……で、お前が十年後の悟というのは間違いないのか」
    「さっきお見せした書類の通りですよ、高専所属特級術師五条悟を2018年へと派遣す…って、お偉いさんのハンコ付きで書いてあったでしょ」

    捏造しようのない、上層部でも限られた人間だけが使用できる証印だった。夜蛾正道が何度もサングラスをずらして書類の真贋を鑑定する、その向かいに面した壁にもたれて現代の五条は苛立たしげに再三の報告を繰り返し述べた。

    「だっから、六眼で見る限りこいつはマジの俺だってば。認めたくねーけどな。だから無駄なやり取りにリソース割いてねえで、とっとと次に進もうや夜蛾セン」
    「ふむ……それで、未来の悟。お前がこの時代に来た目的とは何か聞かせてもらえるか」

    未来の五条は落ち着き払った様子で足を組み直し、夜蛾の問いかけへと悠然と答えを返した。

    「すでにお伝えしたように、例の呪霊の祓除が任務の主旨ですよ。それを達成するための小タスクを、僕はこれからこの時代で果たしていくというわけです」
    「……さ、悟が…敬語を……」
    「驚くとこそこかよ」
    「大人に…なったんだなあ……」
    「待って夜蛾、泣くほど?」

    廃工場で取り逃した呪霊は未だ逃走中。また同じ土地に現れるかも定かではないため、一旦は全員で退却し作戦を立て直す段階だ。被呪を受けたという伏黒も一通りの検査を受け、心身ともに異常は見られないとの診断が下った。だからこそ、想い人がなんの呪いを受けたかハッキリしないことが五条少年にとっての胸のつかえだった。五条は大人の自分がふんぞり返るソファーへと近づき、樫でできた頑丈なテーブルを思いっきり叩いて本題へと切り込む。

    「で? 恵にかかった呪いってなんだよ。アンタなら知ってんだろ」
    「うん、今からそれを説明しようと思ってたところ。せっかちは女のコに嫌われるよぉ?」
    「うっせー! 俺がモテねえならお前だって非モテだろ童貞!」
    「あ、自己紹介した、ついに認めたね悟」
    「童貞なんだ五条(知ってたけど)」
    「そこ!野次馬! いい子で黙ってろ!!」

    うっかり口を滑らせたチェリーくんの醜態についつい揶揄を飛ばしてしまったが、夏油とて可愛い後輩を苛む呪いについては早々に知りたいところだった。……十年も先からわざわざ五条悟がやってきた、という事実は暗に、それだけ重大な事態が近い未来に待ち受けることを示唆しているのだから。

    「未来の悟、単刀直入に聞くけど……この呪いで伏黒の命が危ぶまれるということは?」
    「ない。そこはダイジョーブよ、傑は心配性だなぁ」

    ほっと胸を撫で下ろしたのは夏油だけではない。大人五条の隣で眼光鋭く威嚇を続ける五条少年もまた、服の下や耳の裏にどっと汗が伝った。そのまま身を乗り出して詰め寄る、綺麗な顔と綺麗な顔の鼻先同士がくっつきそうだ。

    「け、ケガとか! 後遺症とか! そういうのも大丈夫なんだな! 今すぐ呪霊ブッ殺さなくても恵に影響はねえんだな!?」
    「しつこいなぁ、あの腐れピエロの呪いは被呪者の心身に致命的に作用するモノじゃないんだってば。だから呪霊が何したって恵は遠隔でどうにかされたりしないし、急ごうとのんびりやろうとあんまり変わんない。じゃなきゃこんな呑気にお茶してないよ」

    それくらい自分の頭で考えたら? 顔半分が隠れていても冷笑というのはじゅうぶん相手への侮辱が伝わるらしい。鼻で笑われた五条は思わず掴み掛かりそうになったが、割って入った相棒によって拳は空を切るかたちとなった。

    「はーなーせーやーー!」
    「どうどう…君も、あまり悟を刺激しないでもらえるかなぁ!」
    「あははゴメンって でも、若い頃の自分に面と向かって接するなんて、恥ずかしいったらないのはわかるでしょ?」
    「まあ、それは…」

    夏油とて、優等生の肩書きの裏に隠した過去のやんちゃの数々に今更向き合うとなれば冷静でいられないだろう。ゆえに口を挟む権利を有さず、閉口するほかなかったが……

    「ほんと、そいつを視界に入れて縊り殺さずにいられてるだけ、僕は我慢強い方だよ」
    「……?」

    ぽつりと溢れた独白は、やけに薄ら寒かった。万民の持つ己が思春期へのむず痒さだと落とし込んで共感するには、あまりにも暗くて、救いようのない横顔に見えた。……もっとも、彼の口元は微笑んでいたし、目元はガッツリ黒布で覆われていたから確認のしようがないのだけれど、何故だか夏油にはそんなふうに思えたのだ。なにか、言葉を継ぐのも躊躇われる。

    「――失礼します」
    「あ! めぐみだ! めぐみ〜〜❤︎」

    と、そこへ検査帰りの伏黒が現れ、さっと大人五条の雰囲気がハート全開のゆるいそれへと塗り替わる。夏油の口の中にはまだ形容のない感覚がわだかまっていたが、騒がしく伏黒をかまい倒す大人の五条を見ていると、今はそこに触れるのがなんだか無粋に思えた。ので、ひとまず胸のポケットにしまっておくことにした。

    「検査、だいじょーぶだった? どこも痛くなーい?」
    「はい、おかげさまで……ああそうだ、あの時は助けてくださってありがとうございました五条…さん」
    「へん、あれくらいどーってこたぁねえよ」
    「なに割り込んでんの? オマエなにもしてないじゃん、今のは僕へのお礼だっつの」
    「?」
    「何? やるなら買うよ?」
    「ええい落ち着かんか二人とも!!」

    夜蛾の喝が飛び、渋々二人の大男が距離を取る。互いにそっぽを向いたときに両者とも中指を立てて舌を出していたから、同一人物であることに疑いはなかろう。担当教諭の咳払いを受け、肩をすくめた大人の五条が呪いについての解説を再開した。

    「恵が受けたのは呪い、というより同期なんだ。パソコンの中身を別のハードにミラーリングするように……今もこの子の魂の一部は、あの呪霊が持つ鏡の中に写し盗られているよ」
    「ッそれって、クソ呪霊を攻撃したら、恵自身にもフィードバックがあるってことか!?」
    「んー、どうだろうね。ダメージが通ったことないからわかんないや」
    「はぁ?」

    何を言い出すかと思えば。怪訝な顔の五条少年をわきに、青年の五条はつらつらと言葉を続ける。

    「恵が写し盗られてしまったのは、この子がその時に思い浮かべていたこと……言ってしまうと、お願い事、願望って呼べるものかな。それにまつわる魂のエネルギーなんだ」
    「願望……命や呪力ではなくて? なんでまたそんなものを」
    「うん、あの呪霊はね、人の『叶わぬ願い』を支柱に――正確には、その『叶いっこない』という諦めを糧にして強くなる陰湿野郎なんだ。願う人間の諦めが強固であればあるほど、同期した自分もまた強固な存在になる、って理屈でね」

    五条少年と夏油が顔を見合わせる。とんだ変わり種、しかしある意味呪霊らしい嫌らしさに溢れた呪いだ。では、伏黒の願望とやらを叶え無い限りは。

    「うん、あのピエロは無敵。僕の全力パンチだろーと核攻撃だろうと傷一つつけらんないよ」
    「よーし、言え恵!! なにがほしい! 豪邸か! 世界一の巨大ダイヤか! 俺がなんでも買ってやる!!」
    「そんな悪徳金持ちみたいなセリフ、善意の気持ちから出ることあるんですね……」

    強いて言うなら、犬がのびのび過ごせるドッグラン…なんて冗談で濁せるものでもないため、伏黒は口ごもるよりほかになかった。…なんてことだ、たしかにこれは一大事だと彼女は一人得心する。本当に叶う見込みのない願いを人質に取られてしまった。これではあの道化師呪霊を倒す筋道がまるで見つからない。まして、そのことを五条にどう説明したものか……口を閉ざし顔を曇らせる一方の少女に、歩み寄る影があった。五条よりほんの少し着痩せして見えるシルエット。大人びた、落ち着いた声が降る。

    「めぐみ、ダイジョーブ。その願いはこの時代の僕じゃあ叶えてあげられないものだろうけど……心配することはない。そのために僕が来たんだ」
    「ごじょうさん、アンタ、何を」
    「っおい! 馴れ馴れしくすんな! まだなんか知ってることあるなら全部共有しろや! 恵も、願いってなんだよ、隠さなきゃいけねえようなやましいことなのか!?」
    「あの無神経なバカの言葉は無視していいから。いこ、恵」
    「あ、ちょっ…」

    有無を言わさず、手を引かれて応接室から連れ出される。独断での行動──無論少年五条だけでなく、この場の責任者である夜蛾も待ったをかけた。未来の五条は恵の華奢な手首を固く握ったままで立ち止まり、鬱陶しげに振り返る。その煩わしげに唇を歪める癖が、叱られたときの五条少年そのもので、夜蛾は本人を傍らに奇妙なデジャヴを覚え息を呑んだ。

    「大丈夫ですよ、僕は上層部からの肝いりで送り込まれた適切なワクチンだ。この時代の病巣にどうアタックをかけるべきか、あなた方の誰よりも状況を俯瞰で把握している。その詳細は、過去に与える影響の問題で事前に語ることはできませんが」
    「だからといって、勝手な行動を看過するわけには…っ!」
    「はあ。じゃあ、行動計画書でも作成して提出すればよろしいので?」

    めんどくさいことこの上ない。遅れている雑魚どもにレベルを合わせるのには辟易する。そんな愚痴を撒きながらレポートに手を付ける──つい数週間前見かけた五条少年の姿を彷彿とする猫背で、大男は自分の白髪頭をぼりぼり掻き撫でた。これには話半分で野次馬していた夏油や家入も思い当たるところがあったようで、なんだか幽霊でも見たような緊迫が応接室には漂った。男は机に備え付けられている紙とペンを執ると、見慣れた筆跡で8行程度の走り書きを起こし、くるりと手首を返して夜蛾へと突きつけた。受け取って字を追う夜蛾の眼差しが、ピクリと細められたと思えば計画書の途中で止まる。

    「……おまえ、ふざけているのか」
    「これ以上なく真剣ですし、テキトーにフカシてるわけでもありません。これ、十年寝ずに練り上げた完璧なプランなんですから」
    「どれどれ……バッチリ早起き、身だしなみに3時間。正午きっかり駅前で待ち合わせ、カフェで一服…いい時間になったら映画館へ…???」

    夜蛾の肩越しにメモを覗き見た夏油の、読み上げる美声がだんだんと頓珍漢にテンポを失っていく。時空を超えての壮大なミッション・インポッシブルには程遠い、一見するとこれはまるで、学生が知恵を絞って徹夜で考えた……

    「ぱ…」
    「パクってねーよ。オマエの現実見えてない夢見がち大作戦なんかよりずっとブラッシュアップしてるし」

    五条少年が口をぱくぱくさせて男を指差し、何事か訴えようとしたが遮るように言葉を被されてしまった。男は、また幼い自分を失笑し、相手にするのも時間の無駄だと背を向ける。目隠しで真意ごと覆ったその視線はいつだって、たった一人に向けて注がれている。彼の背後にいた伏黒からは、メモの内容は見えなかったが。不安そうに見上げてくる翡翠には、優しく微笑む男の口元しか映らない。その視界に、なにやら細長い紙のようなものが二枚割り込む。男から差し出されたそれを受け取り、そこに記された文字列を読み上げる──愛犬物語、とある。

    「これ、今公開中の…?」
    「そ! 不朽の名作児童文学の映像化~ってCMもいっぱい打たれてるやつ! めぐみ、この映画気になってたでしょ?」
    「え、ええ…まあ、そうです、けど…」

    奇妙なこともあったものだ。先輩がタイムスリップしてくることもそうだが、その未来の先輩から当代の映画館を賑わせている動物映画のチケットを渡されるなど、これ以上の稀有な体験も無いだろう。男の意図が汲めず、伏黒が言葉に詰まっていると、先程まで彼女の手首を掴んでいた大きな手がにゅっと伸びて、今度はチケットの上でVの字を作った。人差し指と中指が示すのは、世界平和への祈り? 否、前売り券の枚数である。

    「二枚あるからさ、一緒に行こ。今度の週末! 絶対空けといてね、約束!!」
    「なっ…はっ? えっ?」

    何を提案されたのか、さすがの伏黒にも理解はできた。だが、あまりに場と状況にそぐわぬ誘いに、自分の推測が間違っている可能性を大いに考えた。こればかりは卑屈というより常識で考えて伏黒の反応のほうが正しく、固まるのも無理もないのだが。そうして彼女がフリーズすることまで織り込み済みといった様子で、大人の五条は白い歯を見せて微笑む。

    「だからさ、デート! 僕と週末、映画デートしてください!」
    「え、え──」
    「えええええええええええええええええええええええええええ」
    「五条、うるさい」

    乙女のはじけるときめきとは似つかぬ悲鳴が、廊下の端まであるじの無様な滑稽さを轟かせた。


    《続》

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    紀帝柳王フェミニゼートドラゴン

    SPOILER本誌236話バレ 

    ここから入れる保険はある 僕の考えた最強の237話以降の展開を全七話で毎日更新します。一種の祈祷です。
    ①はタメなので堪えてください。書いてる人間は常に自カプを信じています。

    【追記】見づらいとのお声があったので、べったーにお引越しして続きを載せています→ https://privatter.net/p/10434569
    【五伏】To the Polaris,From236 ①波止場のインターバル1.波止場のインターバル


    Congratulations 人生のエンディングに乾杯を。斯くして『最強』の名を欲しいまま窮屈に生きた五条悟の二十九年は堂々の終幕を迎えた。出迎えには親愛なる同窓が集い、紙吹雪でも散るに相応しい感動のフィナーレだ。目尻の潤む熱き再会、万感の思いを胸に下段を過ぎゆくエンドロールを見送る。

    「僕は、僕が病や老いでなく、僕以上の強者に殺されたことを嬉しく思うよ。ああ楽しかった、満足にはすこし足りないし、あいつにも申し訳ない半端をしたけど――」

    概ね良好だ。望むべくもない己の結末にしては、随分な贅沢をさせてもらったと五条は満ち足りて目を伏せる。ただひとつ、やり残した喉のつかえが……いや、ひとつどころで済まないほどにはあるけれど、何事も足るを知るのが肝要だとこの歳にもなると分別がわかってくる。不甲斐なさの苦味も味かとすっかり完走の余韻に浸る五条へ、馴染みの面子で最も惜しまれ夭折した少年が、穢れを知らぬ眼差しでふと無邪気に問いかけた。
    4029

    紀帝柳王フェミニゼートドラゴン

    DONE【大盛り④】ごめふし2nd noon展示、七月発行新刊の一部先行公開です。イベント後も読めます。長いので一話ずつに小分けします。
    両片思い先輩五×後輩伏♀のもとへ未来から28歳の五が現れて奇妙な三角関係が始まる、甘く切ない初夏のSF青春アニメ映画(概念)です。
    タイムパラドクスゴゴフシ♀ Ⅳ 『エスコートとストーキング』***

    賑わう駅前、一際目を引くライトグリーンのショウウインドウを背に、ねこ耳帽子を目印に。指示された通り、きっかり正午を目前にして伏黒恵は週末の都心に佇んでいる。休日というのに途切れぬサラリーマンの群れは西へ、ぎらつく若さを身に纏う男女は東へ、老若男女が伏黒の前をずいずいぐんぐん行き交ってゆく。埋もれそうな人混みの中で、果たしてこんなチャチな目印がどれだけ役に立つやらと、少女は頭に被せたキャスケットの角度を所在なく調整した。

    「ねー、あの子、一人かな? 声かけてみる?」
    「いや待ち合わせでしょ。てか、男? 女じゃないの?」
    「えー男の子だって、帽子以外みんなカッコいい系じゃん」

    生業上、自然と周囲に注意を払う癖がついている。ショウウインドウから少し離れた信号の前で、立ち止まった女たちがひそひそと、しかし白熱した様子で伏黒の容姿について議論を交わしているのが聞こえてきた。
    8128

    紀帝柳王フェミニゼートドラゴン

    DONE【大盛り③】ごめふし2nd noon展示、七月発行新刊の一部先行公開です。イベント後も読めます。長いので一話ずつに小分けします。
    両片思い先輩五×後輩伏♀のもとへ未来から28歳の五が現れて奇妙な三角関係が始まる、甘く切ない初夏のSF青春アニメ映画(概念)です。
    タイムパラドクスゴゴフシ♀ III 『奇妙な三角関係』***

    「未来から来た五条? なにそれウケる、負担が2倍で夏油が死ぬじゃん」
    「君が多少は引き受けてくれるという配慮とかはないんだね」
    「あたぼうよ、うわマジだ、二匹いる。一匹頂戴よ、解剖してみたい」
    「駄目、別人に見えて一応地続きの悟…のはずだから。危害を加えたら将来の悟が大変なことになるよ」

    小柄な同級生がヤニ代わりの棒飴を咥えたままへらへらと事態をおちょくるが、すでに夏油の胃はきりきり痛み出していた。目下話題の彼はというと、高専応接室の革張りソファーにどっかりと腰を下ろしていちごオレなど啜っている。顔面には真っ黒な目隠しがへばりついていて、風体が胡散臭いことこの上ない。

    「そうそうコレよコレ! 学生時代いっつも飲んでたなぁ〜〜! このパックのやつ、僕の時代では終売しちゃっててね。やば、超懐い、ノスタルジーで泣きそう」
    5561

    related works

    recommended works