Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    そのこ

    @banikawasonoko

    @banikawasonoko
    文責 そのこ

    以下は公式ガイドラインに沿って表記しています。
    ⓒKonami Digital Entertainment

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 35

    そのこ

    ☆quiet follow

    ミルイヒがクラウディアを愛していたバルバロッサを自伝に書いた、って話がどっかにあったとおもうんですけど、3かな……バルバロッサの孤独を思うとけっこうきついことやってるよなって。

    #幻想水滸伝

    2025‐03‐22

     ウィンディ。クラウディア様の面影があるとバルバロッサ様は言うが、私にはよくわからない。彼女は心に悪しきものを飼っている。それが何に起因しているのかは分からないが、このまま陛下のおそばにいればきっと帝国に仇を成す。
     解放軍の力は日増しに大きくなり、帝国は足元から揺らいでいる。早く何とかしなければ、あの女を陛下から引き離さなければ。

    「そうか、戻るのはそろそろだったな」
    「はい。レナンカンプのアジトが潰れたとはいえ、解放軍が完全に消滅したわけではありません。自領へ戻り、まず足元から掃除いたしたく思います」
     この時期にはいつも西方へ戻る。決まっていた事だというのに、今年はなかなかその気になれなかった。解放軍などと名乗る反乱軍がその牙の一端を覗かせるようになってきていた。帝都の近いレナンカンプのアジトは内通により潰すことができたが、首魁が死んだという確証はいまだに上がってきていない。
     加えて、テオ・マクドールの嫡男の背反。彼の姿を解放軍の中に見たものがいる、という報告さえ上がってきている。
     帝国は揺らいでいる。クラウディア様の愛したこの国を、どうにか立て直さねばならない。バルバロッサ様のお傍にいたいのはやまやまだったが、それは状況が許してはくれ無そうだった。
    「西方もきな臭いか。苦労をかけるな」
    「バルバロッサ様の御為ならば、このミルイヒ、それがどんな困難であれ苦労とは思いませぬ」
    「花将軍ミルイヒ様のお言葉、大変頼もしく思えますね」
     ミルイヒの言葉に答えたのは、バルバロッサではなくウィンディだった。彼女を亡き后クラウディアの面影を宿す、というものもいるが、節穴にもほどがあるとミルイヒは思う。濃い化粧も笑い方の品の無さも、クラウディアとはまったく違う下劣な人間だ。
     彼女の存在もまた、ミルイヒがグレッグミンスターにとどまる原因の一つだった。バルバロッサはウィンディを寵愛している。それは事実だ。だが許されていいものか、ミルイヒはずっと疑問だった。
     ウィンディが皇帝の寵愛をかさに着て、政を好き放題に動かしている。バルバロッサはとっくに抜け殻だ。
     ウィンディにバルバロッサは微笑みかける。その笑みはクラウディアに向けていたものと同じだった。
    「そうだな。私はよき友に恵まれた」
     その顔を見ていたくなくてミルイヒは深く頭を下げた。解放軍を平定したら、早めにグレッグミンスターに戻ってこよう。そしてできるだけ早く、この女をバルバロッサから引きはがすのだ。
     そうしなければこの国は滅ぶ。それほどまでにウィンディの闇は深い。バルバロッサには分からないのだろうか。
    「陛下。ミルイヒ様に贈り物をしたく存じます」
    「おお、言っておった紋章か」
    「はい」
     バルバロッサが立ち上がった気配がした。衣擦れの音で二人が近づいてくるのが分かる。許しを得て顔を上げれば、瀟洒な箱の中に封印球が一つ乗っていた。見たこともない紋章だ。
    「陛下、これは」
    「ウィンディが、余のために骨を折ってくれるお前に報いたいと用意したものだ」
     宮廷魔術師が目を細める。バルバロッサは心底ミルイヒを重んじ、そしてウィンディを信じている。見たことのない紋章をこの身に宿す。友の体に宿す。
     それは信頼の証の一つのはずだ。バルバロッサはウィンディを心の底から信じている。自らの友に害をなすことはないのだと。
     断れるはずもなかった。バルバロッサの事は敬愛している。信を置かれて誇らしく思う。だが。
     ウィンディの動きによどみはなく、ミルイヒの身に宿った紋章にバルバロッサも満足そうだ。
    「……ありがとうございます」
    「その紋章はお前に力を与えてくれるに違いない」
     一拍遅れた礼の言葉に、バルバロッサは気づいただろうか。
     宮廷魔術師をねぎらう声音によどみはなく、皇帝の中には彼女への信もまた厚く存在している。ウィンディを見る皇帝の瞳の色に、クラウディアへ向けていた愛情が一片でもあることを信じがたく、ミルイヒは再び深く深く頭を下げた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works