君の存在に祝福を「あなたの誕生日を教えてほしい」
ガンガディアにキラキラした顔で言われる。それが答えのない質問だったのでマトリフはすぐに視線を読んでいた本へと戻した。
「わからねえ」
「わからない?」
「知らねえんだよ。誕生日だとかを大事にするような場所で育ってねえからな」
もし仮にあの里で誕生日を祝う習慣があったとしても、マトリフには祝いのケーキひとつなかっただろう。マトリフはどこで誰から生まれたかすらわからないのだ。
「そうなのかね。人間の面白い風習なのでやってみたかったのだが」
「残念だったな」
本当に残念そうな顔をするガンガディアに、マトリフは読んでいた本から顔を上げた。
「そういやお前の誕生日はいつなんだよ」
「私が生まれた日かね。我々には生まれた日を祝う習慣などないから、いちいち日付を記憶したりしない」
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