Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🌠 🐣 🍩 💕
    POIPOI 296

    なりひさ

    ☆quiet follow

    マトリフがガンガディアに指輪をあげる話

    #ガンマト
    cyprinid

    ひとつの指輪「これを、私に?」
     ガンガディアは差し出された指輪に驚いた。箱に入れられたわけでも、リボンがかかってるわけでもない指輪は、マトリフの両手の中で鈍く光っている。
    「早く受け取れよ。重いんだよこれ」
     言われてガンガディアは指輪をつまみ上げる。マトリフは息をつくと肩を回した。ガンガディアにとっては軽いが、小さなマトリフにとっては随分と重かったらしい。
    「どうして指輪を?」
    「どうしてって、前のは無くしたって言ってただろ」
     それは以前にマトリフが指摘したことだった。マトリフとはじめてヨミカイン魔道図書館で出会ったとき、ガンガディアは右手に指輪をしていた。しかしそれ以降は指輪をしているのを見なかったという。ガンガディアはマトリフがそこまで見ていたことに驚いた。ガンガディアはヨミカインでマトリフからベタンを受け、地下深くに落とされた。その拍子に割ってしまったのか、気付いたら指輪は無くなっていた。その事を伝えると、マトリフは興味を失ったように素っ気ない返事をしたのだ。
     それがひと月ほど前のことだろうか。マトリフはそれ以外には指輪の話はしてこなかった。そして今朝、マトリフは出かけてくると言って出て行って、さっき戻ってきた。布に包まれた物を持っていると思ったら、それが指輪だった。
    「ありがたく使えよ。なんていったって魔界の名工の作だからな」
    「まさか、ロン・ベルクの?」
     魔界の名工といえばあまりに有名な武器職人だ。その名工が武器以外の、まさか指輪を作るとは信じがたい。
    「そいつの弟子な。ロン・ベルクは腕が使えねえってんで、弟子が作ったんだよ」
     そういえば以前にロン・ベルクが人間の弟子をとったという話を聞いた。しかしいくら弟子とはいえ、武器職人に装飾品を作らせるのは大変だったのではないだろうか。
    「つけてみろよ」
     マトリフに言われてガンガディアは指輪を右手につけようとした。するとマトリフはそれを制した。
    「おまえ右利きだろ。だったら左手にしな」
     ガンガディアは指輪を持ちかえて左手の中指につける。するとそれを見てマトリフは満足そうに頷いた。
    「で、こう言うんだよ。鎧化」
    「鎧化?」
     ガンガディアの声に指輪が反応した。発光したかと思えば、素早く形状が変化する。指輪はガンガディアの手の甲を覆うほどの盾になった。
    「防具だったのか」
     そうであれば武器職人が作るのも頷ける。鎧の魔剣も似た造りだったはずだ。
    「ただの盾じゃねえぞ。シャハルの鏡って知ってるか? あれと同じでマホカンタの能力があるんだぜ」
    「呪文を跳ね返すということか」
    「メドローアもな」
     すげえだろ、とマトリフは笑う。ガンガディアは一度はその呪文を我が身に受けた。死こそ免れたものの、長い時間眠りにつかなければならなかった。マトリフがそのことを深く後悔していたということは、十数年の眠りから目覚めてはじめて知った。
    「まだ私にその呪文を打つ予定が?」
    「あったらそんな指輪やらねえよ」
     指輪はガンガディアの意思一つで形状を戻せるらしく、すぐに元の指輪へと戻った。そうしていれば飾り気のない指輪だった。形も以前のものと似ている。違うのは色だった。以前のものは金色だったが、この指輪は銀色だ。それが光の当たり加減で、マトリフの髪色と同じになる。
     ガンガディアは指輪からマトリフに視線を移す。つむじを見下ろせば、洞窟内を通る風がその髪を揺らしていた。
    「嬉しいよ大魔道士」
    「おーおー、そりゃよかった」
     あくまでも気のない様子で言ってマトリフはさっさと洞窟から出て行ってしまう。釣り竿を持っていったから魚でも釣るのだろう。
     ガンガディアは手を上げて指輪を見つめる。中指にはめたそれを一度引き抜き、薬指につけかえた。ガンガディアも洞窟を出る。
    「魔界の名工とその弟子はどこに住んでいる?」
     小船に乗り込んでいるマトリフに問いかけた。
    「あ? ランカークスの近くだよ」
    「少し出かけてくるよ。同じデザインで君のぶんも作ってもらう」
    「はあ!?」
     ガンガディアはルーラを唱える。ランカークスには以前行ったことがあるからちょうどよかった。光の矢になって飛んでいくガンガディアの後を、同じくルーラでマトリフが追った。
    「ちょっと待て!!」
     マトリフは叫ぶ。しかしガンガディアは幸せそうに指輪を見つめながら、同じ指輪をマトリフがつける様子を思い描いていた。

     

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💒💒💒💒💒💒☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    kisaragi_hotaru

    MAIKINGガンマトとハドポプが混在している世界線のお話の続きです。マトポプは師弟愛です。ひたすらしゃべってるだけです。
    ダイ大原作と獄炎のネタバレを含んでおりますので、閲覧の際には十分にご注意くださいませ。
    捏造と妄想がかなり激しいです。いわゆる、何でも許せる人向け、となっております。
    このシリーズは一旦ここで完結という形を取らせていただこうと思います。続きを待ってくれておりましたなら申し訳ないです……。
    大魔道士のカミングアウト 5 「――ハドラー様は10年前の大戦にて亡くなられたと聞き及んでいたのだが」

     本日二度目のガラスの割れる音を聞いた後、ガンガディアから至って冷静に尋ねられたポップは一瞬逡巡して、ゆっくりと頷いた。

     「ああ、死んだよ。跡形もなく消えちまった」

     さすがにこのまま放置しておくのは危ないからと、二人が割ってしまったコップの残骸を箒で一箇所に掻き集めたポップは片方の指先にメラを、もう片方の指先にヒャドを作り出し、ちょんと両方を突き合わせた。途端にスパークしたそれは眩い閃光を放ち、ガラスの残骸は一瞬で消滅した。

     「そうか……ハドラー様は君のメドローアで……」

     なんともいえない顔でガンガディアはそう言ったが、ポップは「は?」と怪訝な顔をして振り返った。
    7747