やわらかい朝 目を覚ましたときに、隣にいる存在がまだ信じられないと思うときがある。ガンガディアは寝過ぎた頭を動かしてマトリフを見た。マトリフはまだ夢の中にいるようで、起きる気配はない。
この洞窟は朝陽が差さない。代わりに波の音はよく届く。それが子守唄のように眠気を誘うのか、ガンガディアは目覚めたばかりなのにまた瞼が重くなった。
ガンガディアも寝るなら広いベッドを、と設えたはいいが、マトリフは広いベッドの中で縮まって寝ている。背中の一部だけをガンガディアに触れさせているのは、まるで存在を確かめるような仕草に思えてならない。ガンガディアがこの洞窟で一緒に寝るようになってからというもの、マトリフはいつもこの体勢で寝ている。ガンガディアが動けばその振動がマトリフに伝わってしまうものだから、彼の眠りを妨げないためにもガンガディアは動けないでいた。そうしていると寝過ごすことが増え、ガンガディアはすっかり長寝の癖がついてしまった。
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