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    陽炎@ポイピク

    ジョジョ5部プロペシメインです。パソコンもペンタブもないので携帯撮り&アナログ絵しかうpしません。
    🍞🚄🍊🍋の沼にも浸り中
    時々®️®️®️🔥🌊

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    POIPOI 486

    陽炎@ポイピク

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    漫画家だって恋がしたい!

    人間必ずしもスランプに陥る事がある。
    「どうしよう、オレ、どうすれば……?」
    何も描かれて無い真っ白な原稿用紙を前にオレは頭を抱えていた。
    漫画のネタすら何も浮かぶ行き詰まったオレはアイディア帳を見返した。連載中の『ザ・グレイトフル・デッド』は老化能力を持った暗殺者が主人公のダークヒーローもの。
    けれど、毎回同じようなパターンの展開では読者を飽きさせてしまう。勿論警察に追われる物語だって描いた。
    そん時は主人公が自分自身を老化させる事でピンチを逃れるストーリーにしたけれど、そうそう幾度も使う訳にはいかねぇ。オレは四畳半の部屋で机に突っ伏すしかなかった。
    「おいペッシ」
    急に後ろから聞き慣れた声がしてビビる。
    「うぎゃあ!?あっ、兄貴!?驚かさねぇで下さいよッ!」
    プロシュート兄貴は悪びれた様子もなく答えた。
    「あ?オレはお前を心配して来たってのにインターホン鳴らしても反応ねぇから勝手に上がったんだぞ」
    ったく、プロシュート兄貴ったらよ~。そういう所あるよなー。
    プロシュート兄貴はオレの担当編集者だ。
    コワモテだけどモデルみてぇな人でかつて漫画家を目指してたらしい。デビューしたばかりのオレの世話を何かと焼いてくれて、意外と面倒見が良くしょっちゅうこの部屋を訪れて来る。
    「うっ…だって…インターホンにすら気付いてなかったんすもん」
    「その様子じゃ次号のネームすら仕上がってねぇようだな?」
    プロシュートの言葉にオレは戦慄した。こういう時漫画を描き上げるまではここから1歩も動きませんからね!って背後で睨む編集者のエピソードを岸辺露伴先生のインタビューで読んだ事がある!
    「か、完璧してくれよぉ!締切までに完成させるから!」
    オレは両手を合わせてプロシュート兄貴へ平服した。
    「おいおい、命乞いするようなみっともねぇ真似すんじゃねぇよ。こういう時は幾ら頭で考えてもパッと浮かばねぇもんだ。ほら、気分転換に外行くぞ。こんな狭い部屋に引きこもってるから余計息が詰まっちまう」
    オレは突然の兄貴の提案に戸惑った。っていうか、今のオレの格好とてもじゃねぇが外に出歩くような服装じゃねぇ。
    「せ、せめて着替えるから待っててくだせぇ!」
    「んだよ、身なりが気になるならオレのコートでも羽織れ」
    明らかに高級そうなスプリングコートを渡され、嫌とも言えずオレは兄貴によって外へ連れ出されてしまった。
    近所の公園は春の陽気に誘われたのか子供達が元気よく芝生ではしゃいでいて、遊ぶ子供達を微笑ましくベンチで見守るお年寄り、ランチを楽しむOLで賑わっていた。
    オレと兄貴は特に何かをする訳でもなくただ公園で散歩をしていた。
    「……いい風だ」
    兄貴はそう呟くけれど。
    「あの、こんな事しててもいいんですかい?」
    「オレも丁度仕事サボりたかったからな」
    プロシュート兄貴は軽い口調で答えた。
    兄貴はオレの編集者のイメージと全然違う。
    「丁度いい、カフェテラスでも寄らねぇか?」
    「いいんですかい?オレなんかと一緒で」
    オレはこの容姿のせいで兄貴が嗤われたりしねぇか心配だった。兄貴、モデルみてぇだから余計オレが悪目立ちしそうだし。
    「おめぇを劣等感で落ち込ませる奴が居たらオレがこいつは漫画家のペッシだって自慢してやるから安心しな」
    ニッと歯を見せて笑う兄貴にオレは一瞬ドキッとしそうになっちまった。
    テラス席のあるカフェで兄貴はエスプレッソをスマートに頼んでいた。格好いい男ってのはそれだけで様になるから狡いよなぁ。
    「おいペッシ。お前も頼め」
    「へっ?じゃ、じゃあ、ミルクで……」
    「あ?お前コーヒー苦手なのかよ?」
    「だ、だって、ああいうの飲むと胃がゲェーってなるし、このカフェソフトドリンクもねぇんですぜ?」
    馬鹿にされるかと思ったけれど、プロシュート兄貴は特に説教する訳でもなくストローも付けてくれと店員へ注文してた。
    「今はまだいいがおめぇ、売れっ子になって顔も知られるようになった時の事考えろよな」
    「うっ、分かってるよ兄貴。でも――今は筆も止まっちまってるし」
    言い募るオレに突然声が掛けられた。正確には兄貴の方だ。
    「おいおいプロシュート、こんな所で油売ってる上に担当の漫画家にごねられるとはざまぁねぇな」
    プロシュート兄貴は声のした方をちらりと見上げた。
    そこにはプロシュート兄貴よりずっと長身の黒髪に赤い瞳の男性が立っていた。
    「ハン、イルーゾォは相変わらず忙しそうだなぁ?」
    嫌味に嫌味を返すプロシュート兄貴にオレは居心地の悪さを感じた。
    「お前と違ってお抱えの漫画家が2人も居るからな。しっかしお前がそれ程執着する新人漫画家、どのくれぇ才能ある奴かと思えば……。精々連載が最後のページにならねぇように頑張るんだな」
    イルーゾォと呼ばれた男は散々言うだけ言ってそのまま去ってしまった。
    「チッ」
    溜息を吐く兄貴にオレは恐る恐る質問する。
    「あのぉ、今の人は?」
    「ライバル誌の編集者のイルーゾォだ。オレの事が気に入らねぇのかああやってオレに絡んでくる奴でよ。ったく、あんなのが担当編集者でソルベとジェラートも苦労してそうだな」
    ソルベとジェラートの漫画ならオレも読んだ事がある。
    両方中堅の漫画家で読者人気も高い。
    「――そうだ!ライバルだ!オレの漫画に足りねぇのはライバルの存在だッ!」
    オレは突然降りてきたアイディアに、鞄の中に仕舞っていた原稿用紙を机に広げてネームを始める。
    「やっとやる気になってきたみてぇじゃねぇか。いいぜ、オレは此処でトコトンお前を見守っててやる」
    無我夢中で筆を走らせるオレに、兄貴の優しい声が遠くから聞こえてきた気がした。
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    recommended works

    陽炎@ポイピク

    DONE #プロペシ版ワンドロ・ワンライ
    お題『キセキ』
    月祈(きせき)は神仏に祈る事
    街中で鮮やかな色の糸を見た。
    糸を辿ろうと其れに触れた途端消えた。
    男は直感した。あの糸はスタンド能力だと。
    男は何日間もあの糸が再び現れるのを待った。
    どうして組織の把握していないスタンド使いが居る?
    パッショーネに所属していないスタンド使いが居るとするならば、ポルポの試験で矢に刺される事の無かった天性のスタンド能力者という事になる。
    きらりと光る針先が通りの遠くの方へ進んでいくのを目撃した男は糸の紡ぐ軌跡を追うように辿った。
    その釣り針は観光客の懐へと潜り込むとあっという間に財布だけを掠め取った。男は釣り上げられた財布と並走した。
    正確には糸を引いている主の元へ辿り着く為に。
    「あっ……」
    釣竿を手にしている少年はボロボロの布切れを身に纏い身体中が痣だらけであった。
    弾かれたように逃げようとしたものだから男は咄嗟に釣り糸を掴んだ。掌の中に食い込む針の痛みに構わず男は唇を開いた。
    「――お前、家族は」
    少年は怯えたように頭を横に振った。声が出ないのか、それとも出せないのか。それでもスタンド能力を解除しようとはしない。男はぞくりとした。腕を這い上がっていく釣り針と糸の感覚。この少年はオ 1665