ベッド階下からの声に呼ばれて進藤が階段を降りていく。
お茶でも持ってくるのだろう。すぐ戻るから、の、『すぐ』を強調した言い方。床を蹴った足の先。ドタバタという足音。その慌てた素振り一つ一つに、思わずクスッと笑いが込み上げてくる。
「ふーん……けっこう綺麗にしてんじゃん」
進藤の部屋は見渡すところ小綺麗に見えた。
でもあいつのことだ、きっと母親に片付けてもらっているに違いない。
おっ、ちゃんと囲碁の本とかもあんじゃん。ちょっと意外かも…。
なんて、あまりじろじろ見たら不躾だろうか。目線を下におろす。そしたらなんだかすぐ間がもたなくなって、独りベッドに腰掛けた。
「……」
気付いたら進藤がお茶をのせた おぼんを持ったまま突っ立ってこっちを見ていた。
1100