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    かつみぽいぴく

    @katsumi_kitk
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    かつみぽいぴく

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    昨日の続き部分です。結局デート編です

    「……らしくないと言うか。エンデヴァーはそんなことはと」
    「イヤ言いませんよそんな!」
    思ったより大きな声をあげてしまった。けれど仕方ない。
    あの、福岡から。
    ホークスとのチームアップからエンデヴァーは変わった、そう世間では口にされがちだ。
    けど実際は違う。
    ビルボードでのあの言葉ーー嫌っていたカメラ、その向こうにいる市民に向けての真摯なあの宣言。
    俺が初めて顔と目を合わせた時にはもう、この人は変わり始めていたんだ。
    「新しいフレイムヒーローエンデヴァーへの一歩!そういうことなら喜んでやらせてもらいますよ。言ったじゃないすか、No.1をプロデュースするって」
    「……そうか、ならば頼む。機材は、キドウ」
    俺の返事に声より先に息で頷いてくれて。次いだエンデヴァーさんの指示を聞いたキドウさんが部屋の角で開けてあった箱から取り出したそれを俺へと差し出してきた。
    「プロの撮影に慣れる為だから、このカメラ使って」
    ぽんと渡されるこの為に購入したのだろう新品の一眼レフ。背面に液晶がついていて、デジタル一眼ってやつだ。けれど流行っている手軽なものではない。大きくて記者やマスコミが持っているものと大差ないが、こんなにずっしりとくるものなのか。こんなん首から下げて飛んでる俺を追いかけようとするんだからご苦労さんデスって気持ちにもなる。
    俺でも分かる高級感に手頃な入門機なんかではないことがわかる。いや金のかけ方も全力ですね。流石です。
    「スマホで普段撮るからこういうガッツリしたカメラ触るの初めてッスわ」
    「ここがシャッタースピード、F値で、この数値が光を取り込む量をいじるとこ。こっちはーー」
    室内だのスポーツだのモードをいじるつまみもあるが、まずは渡されたそのまま。
    身構える必要のないくらいの軽さを演出してあなたへとレンズを向ける。
    「それじゃ試しにまず一枚いーですか?」
    「ム、待て」
    グリップをしっかり握って、両手でホールドして構える。様になってるぞなんてオニマーさんの声。片目を瞑って、ファインダーの小さな四角い窓からエンデヴァーさんを覗き込む。しれっと被写体にされた彼は椅子にかけたままこちらを見たが、わざわざ炎のマスクを纏ってくれるのがなんだかおかしくってうれしくてこそばゆい。
    映り込まないようにとサイドキックの二人が画角から外れてくれる気配。流石有能だ。
    グリッド線だのピント位置だのの表示の向こうであなたがこちらを見ている。
    少し投げかけられただけでも強く感じる視線はこの人特有のもので、少しどきりとした。
    なるほど、写真に切り取るとか閉じ込めるとか言うのはこの感覚だろうか。
    この小さな小窓から覗くとなんだか、自分だけの世界のものに思えてしまう。
    ピ、とピントが固定される音、次いでシャッターを切る手応えがして。ぱっと背面に映った今しがた撮った写真を確認すれば、
    「うわ、真っ暗!」
    「そりゃ調節してないからなぁ」
    初めての一枚は誕生日ケーキのロウソクを撮ったみたく、明るい筈の室内が暗がりになってぼうっとエンデヴァーさんの炎だけが揺らめいてる有様だった。
    何だこれ。だいたい画面に映ったままが撮れるスマホと違う。ファインダーの景色は肉眼と変わらなかったのに。
    何が悪かったのかと首を捻ったところで「ホークス」と被写体のあなたに呼ばれた。
    「初めてカメラで撮ったのだろう、見せてみろ」
    「エッ」
    渋くれた顔をしていたらまさかの撮れ高をエンデヴァーさんが確認したがる。嘘でしょ。
    「駄目です今のナシ!ノーカンですよ!ちょっとこれどうやって消すんスかオニマーさん!」
    「いいって次々撮っちまいなよ。どうせ何枚もブレたりとかするから後でまとめて消した方が楽だって」
    「消すな」
    「あー…だってさ。所長命令なんで教えらんねぇわすまんね」
    一応この人の依頼で撮っているのだからそう言われたら俺も引かざるを得ない。
    「……同じ轍は踏みません最速で覚えてやりますよ」
    「お、その意気だ。ならエンデヴァーはこっちで支度を」
    「ああ」
    「じゃホークスはこっちで準備を頼む」
    「了解です」



    ーーー


    「「じゃ、行ってらっしゃい」」
    「…………」
    「…………」
    次にエンデヴァーさんと顔を合わせたのはエンデヴァー事務所の入り口出たところだった。
    ビッグサイズのカーキのMA-1を羽織ってキャップにマスク。流行りの四角いバッグパックで剛翼を隠した俺と、ヒーロースーツの上に薄手のニットとスプリングコート、チノパンを着込んだ春らしい装いのエンデヴァーさん。

    「カメラレンズ向けられてもある程度自然体でいられるように慣れてもらうのが一番だから。私服で撮ってきて、まあどっかでメシでも食べてゆっくりさせてきてよウチの所長を」
    とあの後俺にだけ言われて送り出されたのだが。いや正確には事務所から追い出されたのだが。
    「もしかしなくともなんですが」
    「……ああ」
    「ついでにデートのお膳立てされました?俺たち」
    「……その様だな」
    割とここまでいい話っぽく格好よく進めといてこれです?ポトレデートってやつですよこれ。
    「曲解されとるな……」
    あー……デートに誘うの恥ずかしいからそういう口実にしましたって……思、いや思うな。思うわ。
    これまでショート君狂いでオールマイトにバチバチだった人が急にそんなこと言い出したら、俺が長年見てきてるサイドキックだったら感動してかわいくて何から何まで全部鞭撻はかっちゃうもんな。
    エンデヴァーさんが咳払い一つ。珍しい。切り出す為の勢いづけだったんだなって分かるのは、次いだ台詞を聞いてから。
    「……折角だ、桜でも見に行くか」
    「ーー…はい!」
    少し面映そうにそう口にする横顔に、桜より先に俺の笑みが咲き誇ってしまいそうだ。
    まーこうなったら!デートはデートで有難くいただきますよ!


    「行った?」
    「行った行った」
    「それにしてもなあ、なあ?」
    「な。所長、ミスった写真なんて残すの絶対許さなかったよな」
    「変な時に引っ張り出されないよう俺たちにチェックさせてその場で消させたもんな」
    「……愛かな…」
    「愛だな……」



    気を取り直した俺達はとりあえず大きな公園目指して通りを歩き始めることにする。
    昼前のこれからまだあたたかくなる空気が心地良く、街路樹も陽を浴びて生き生きとしている。
    初めてチームアップした時には、あなたの身体に残った傷が後ろめたくて、少し後ろから背中に話しかけていた俺が、こうして隣に並んでいる。もう慣れてもいいだろうと思うけど、やっぱり噛み締めてしまう。
    エンデヴァーさんはあの時よりも一歩が小さい。俺に合わせてくれている。
    ヒーローエンデヴァーではなく、俺のエンデヴァーさんの歩幅だ。
    「ってゆーか俺大丈夫でした?キョリ感間違えてませんよね?」
    「何の話だ」
    「いや肉体関係アルナシで距離感変わったりするって言うじゃないですか。丸わかりになるのは避けたいなーと思って――て、何ちょっと鼻で笑ってるんすか」
    「気が早い奴だと思ってな」
    「あーそういうこと言います?大事でしょうユーメージンなんですから」
    「……まあ、いつもこんなものだろう」
    「そーですよね!」
    と。俺の福岡でのいたたまれない目をみた経験からの問いは一瞬で溶けてなくなってしまった。
    もっともこの場にサイドキックがいたら、
    「今更かよ」
    「今更だよな」
    「今更ばい」
    と大合唱だったのだが、生憎と二人きりなので俺たちは当分このまま気付かずに進みます。やー恋は人を愚かにするっていうけど、俺たちも大概にその様です。
    このまま浮かれツートップをお楽しみ下さい。
    「ちゃんと本題に戻りますね。あなたの広告って割と睨みきかせてる写真が多かったイメージなんですが、あれはクライアントの意向で?」
    「……ああいった撮影は光を焚くだろう」
    「ストロボですね」
    「あまり得意ではない」
    「大丈夫です得意だって言ってるひと聞いたことないですから」
    三脚や一脚をたてたごついストロボから放たれる光は、ボシュッ、とでも書けばピンとくるだろうか。視界にぼやーっと光の余韻ができてしまうくらいに強い。それを小間隔で浴びるから、スチール撮影は動かない割になかなかに疲れる。
    「慣れないと眩しーって顔になったりしますもんね。半目になったりとか」
    「このエンデヴァーがそんな無様な面を晒すと思うか。そんな間抜けな様を撮らせた覚えはない。……急にどうしたお前は」
    突然立ち止まった俺に気付かず二歩歩いたところでエンデヴァーさんが振り返る。ちょうど傍にあった街路樹に手をついては俯いてぶるぶる震えてる俺に絶対眉が寄ってる。
    「チョット…待ってもらってイッスカ…」
    かわい。
    あれ、ストロボに負けないように睨んでたのか…可愛い…いやカワイイな…あなたの昔の広告とか見ても可愛いが先にきちゃいそうだ。言ったら絶対プリプリお怒りになるから言わんでおこ。
    なんとかかわいいから回復して、忙しない俺をちゃんと待っていてくれる大きなこの人の隣に駆け戻る。
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    かつみぽいぴく

    PROGRESS12/12炎ホプチの新刊の冒頭らへんを進捗上げです。
    ホ視点と炎視点バトンタッチ文体。
    ホちゃにテディベア扱いされて焦らしプレイされる炎さんのさらっと読めるイチャイチャすけべ本の予定。
    前半は焦らしプレイ、後半はケダモノセッ気味のいつものやつです。
    全年齢部分は終わったのですけべを呻きながら書いてます。
    3万字ちょい、文庫70~80P予定。通販もあるよ!
    【12/12新刊全年齢部分】カワイイのはオレだけにして?

    今日の俺たちのパワーバランスはこちら。

    「エンデヴァーさん。俺、まだ怒ってますから」
    「……」
    「理由、わかってますよね?」
    「ヌ……」
    あなたが恋人羽毛の触り心地を追い求めて買った高級クッションを我が物顔で抱き締めつつ、俺は唇をツンと突き出した。
    ソファに陣取り足まで乗せてる俺と、そばに立ったままのあなた。
    こうまでしたら分かるでしょ? ヒーローとしては異音一つ見落とさないのに、恋人の扱いにはまだまだ疎い雛鳥さんへ、『ご機嫌ナナメですよ』のサインを贈る。
    爪先でエンデヴァーさんの脛をつんつんと柔くつっつくのもオマケだ。
    叱られる子供みたいに佇むエンデヴァーさんも、「何だその口は」とか「足を乗せるな」とか言わない。居心地悪そうに唸るだけ。ここあなたの家なのに。
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    かつみぽいぴく

    PROGRESSトップ2の恋愛事情はデートひとつもセワしない!後編その1
    ベッドで恋人撮影会する炎ホ すけべの導入のムード作り頑張りました
    以前Upした書きかけ進捗の改訂版です~
    もうちょっと先まで続けてぽいぴく投げます
    「フム……」
    大きな親指がやさしく俺の下瞼を引き下げる。
    俺はされるまま、それに合わせて見上げていたあなたの顔よりも視線をもっと上へと飛ばした。
    まず右目、そしたら次は左目。
    終わると今度は顎をとられるので、分かってますよと促されるより先に舌を伸ばして差し出した。
    でもキスする為じゃない。
    口のなかの粘膜の色を確かめる用だ。
    ――個性増強剤〝トリガー〟を摂取した者は舌が黒く変色する特徴があるから。ヒーローとして当然だ。だけど、ですけど。
    あなた、ついさっき事務所でもおんなじことしたのに。
    あれから三十分も経ってませんよ。
    俺のとった部屋に入って初めてするのがキスじゃなくてこれなのだから、もうこの人はって呆れる様なあなたホント裏切らないなぁって笑ってしまう様な心地になる。


    エンデヴァー事務所に戻りホテル並みの来客用宿泊室をお借りして、きっちり二時間経過観察。結果は良好問題なし。
    シャワーも浴びて、現場からちゃんと回収したカメラで今日撮った桜とあなたを見返していれば二時間なんてあっという間だった。
    肩にカメラを提げて所長室に顔を出せば、もう私服に着替えたエンデヴァーさんが帰り支度をして 9962

    recommended works

    かつみぽいぴく

    PROGRESSトップ2の恋愛事情は〜 続きの冒頭ぶぶん。
    今回はホが炎さんをカメラで撮影しにいくデートをしたりヒーローぽく捕物したりする予定です。
    カシャッ、とシャッターを切る小気味よい音と手応え。
    少しおいて背面に映し出されたそれを確認した俺の口の中に、しゅわりとメレンゲが溶けたみたいな嬉しさが広がった。
    「エンデヴァーさん、またいいの撮れちゃいましたよ。ほら」
    すぐさま共有したくて被写体であるあなたに小走りで駆け寄る。
    穏やかな陽気、空模様は薄曇りで光の加減がころころと変わらないのがビギナーには有難い撮影日和だ。ここに立ってくださいとリクエストした七分咲きの桜並木の下、俺を待っているエンデヴァーさんの顔の前をふわりと薄桃の花弁がそよぎ通っていった。

    ――俺とエンデヴァーさんがお互いに肌を教え合った記念すべき一回目からちょうど一ヶ月後。俺はまた彼の管轄である静岡に来ている。

    エンデヴァーさんのすぐ傍にくると、あなたのすぐ近くだけほんのりと他所よりあたたかいのが分かって、どうしたってお忍びの為のマスクの下では顔が笑んでしまう。
    一つの画面を一緒に見る為に肩を寄せ合うようにすれば、あなたのに届かない俺の肩はスプリングコートの胸元をやんわりと押した。
    「どうですこれ」と差し出した一眼レフの背面液晶に映るのは、今しがた撮った恋人の姿 9748