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    Shinon

    @ysnr6love
    佐真/真マコの二次小説R18部分をあげる可能性があります。未成年の方は閲覧しないで下さい。

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    Shinon

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    お嬢とじいじ⑧/真島家と家族になる佐【終】

    「俺が死んだって覚えちゃいねぇだろ。まだ二歳なんだからよ」

    真マコ夫婦の娘ちゃんにじいじと慕われる生存if佐のお話です。全年齢。一旦完結です。ありがとうございました!

    #真マコ

    お嬢とじいじ⑧「おどれ…!何や筋が真島に似とるやないか…っ」
    「そ?俺もすっかり奴の色に染められちまったってことか」
    嶋野は思わずチッと大きく舌打ちをした。
    「妬くな妬くな大叔父ちゃま」
    「うっさいわ」
    さて、佐川司が我が家に戻ったのは実に四時間後であった。嶋野太から連絡を受けて飛んできた真島吾朗に引きずられて帰ってきた彼は、そのまま居間に正座させられて散々に叱られた。傷だらけのじいじの変わり果てた姿にお嬢は絶叫し、真島は額に青筋を立てて怒鳴り、マコトは唇を引き結び無言で傷の手当をしている。
    「だってよ」
    佐川は腫れた頬を冷やしながらぼそぼそと言う。
    「だってもクソもないねん!殺されとったかもしれへんのやぞ!」
    お嬢は佐川の膝に取りすがって彼の血だらけの膝をべしべし叩いている。正直かなり痛い。やがて彼らの怒りは嶋野太の血判付きの書を見て最高潮に達した。それはかつての契約を書き直したものであった。
    一つ、真島は生涯、嶋野太と年に一回酒を飲む
    一つ、真島は生涯、嶋野太に娘の写真つきの年賀状を送る
    一つ、真島は生涯、佐川司の後見人として彼の老後を保証する
    「嶋野の親父にここまで譲歩させるやなんてあんた今生きとるの奇跡やで!ええ加減にしろや!この子ぉが突然じじ亡くしてどない思うか考えてくれへんのかあんたは!」
    真島は堪らず佐川の胸倉をつかんで揺さぶりながら叫んだ。
    「だってさ」
    「まだ言いよるかあんたはァ!」
    「だってさ!俺だってお嬢に何か誕生日プレゼントやりたかったんだもん、んなに怒んなくたっていいじゃん。三人で寄ってたかってよ」
    すっかり拗ねて佐川は頬を膨らませる。
    「佐川はん…」
    じんとその言葉が胸に沁みた真島は眉を下げた。
    「──それに俺が死んだって覚えちゃいねぇだろ。まだ二歳なんだからよ。そのために写真だって映らねぇようにしてんだし」
    残念ながらこれは致命傷であった。一瞬味方に引き込めそうだった真島家をこの一言で完全に敵に回してしまった佐川は、それから三日三晩布団に括り付けられて出して貰えなかった。

    ***

    夜の帝王は再び姿を消した。一度目と違ったのはきちんと全ての引継ぎを終えてから去ったことだ。全ての店舗に新たなオーナーを置き、キャストたちへの挨拶を済ませ、彼はばっさりと髪を切った。帝王の妻はその新しい髪型がたいそう気に入ったが、娘の方はそうでもなかったようだ。暫くは父親を認識できず、怪訝そうな顔で睨みながらじいじにまとわりついていた。いずれにせよ、こうして一家は東へと居を移し、元夜の帝王はそこで建設会社を立ち上げた。黄色い安全ヘルメットの方は父の新しい髪型と比べて娘にたいそう気に入られて、彼女はそれをかぶってぱたぱたと走り回っては副社長に窘められている。「レディが暴れんじゃねぇよ」とは副社長の言だが、そう言いつつも真島吾朗の娘が暴れないで済むとは到底思ってはいないようで、半ば諦めてはいた。
    真島建設と名付けられたその会社の取締役社長も副社長も建設には何のノウハウもなかったが、二人にはそれぞれに前職で得た幅広い人脈があった。社長は夜の街、副社長は裏社会での知り合いの知り合いの知り合いのツテを辿って必要な人材を探し当て、巧みな話術と金と脅しで口説き落とし着々と実績を積み重ね、会社を成長させていく。
    元帝王の妻は小さなマッサージ店を開業した。彼女の方は十分なノウハウを有していたので、必要なのは良い土地と良い広告だけであった。良い土地はかつての立華不動産が準備をした。社長は病気で長期療養中だが病床で仕事の指示を出すことは可能で、今は他の不動産会社に吸収される形で一エリアの管理を任されているのだ。立華鉄は喜んで素晴らしい土地を地上げして妹へ明け渡した。彼のノウハウの方も、バブル崩壊後とは言え尚健在だったのだ。広告については真島建設の工事現場が役に立った。小さなマッサージ店の広告は常に工事現場の至る所でたなびいている。美しい店長の顔写真から伸びる吹き出しには、ゴッドハンドの名が轟き日本中に出張してマッサージを行う李の施術が月に一度予約できる旨も認められていた。店長の写真に見とれる男たちを蹴散らしながら、真島社長は今日も「ヒヒヒ」と愉快そうに笑いつつ現場を走り回る。
    「ほら急いで急いで遅刻しちゃう!」
    バタバタとマコトが階段を下りてくる。その後に続いてお澄まし顔で下りてくるのは四つになった娘だ。彼女は幼稚園に通い始めていて、もう周りにいるわんぱく坊主共を何らかの方法を使って全員黙らせていた。将来有望で父もじいじも大いに感心しているところだ。
    「ほらじいじ急いで急いで遅刻しちゃう!」
    四歳にもなるともう立派なオトナであると彼女は自負していた。いつだっておうちに引き籠ってお嬢と遊ぶことだけが生きがいだったはずのじいじが遂に外に働きに出たことが心配でならない彼女は、自分が彼のお世話をしてやらねばならないと心に誓っている。
    「お嬢、そんなに急ぐと転げ落ちるぜ。気をつけな」
    じいじこと真島建設副社長は相変わらずのマイペースさでゆっくり階段を下りてくるとひょいとお嬢を抱き上げた。
    「じいじ、髪が乱れてるよ!お嬢が直してあげる。もう、じいじはお嬢がいないと何にも出来ないんだから」
    「おう、そいつはありがとよ」
    ぐしゃぐしゃと豊かな銀髪をかき混ぜられながら佐川は素直に頭を垂れた。
    「言うてる場合か!全員遅刻すんで!さっさと朝飯食うてまえや!」
    台所からおやぢことパパこと取締役社長が怒鳴っている。
    四人がテーブルを囲み、パン、と父親が両手を元気に合わせた。
    「頂きます!」
    「いただきます!」
    おにぎりにかぶりつく三人、トーストをゆっくり齧る一人。野菜ジュースを豪快に呷る子供一人にコーヒー二杯を朝からがぶ飲みする大人二人、夫が毎朝いそいそと淹れるミルクティーを美味しそうに味わう大人一人。思い思いの朝食をとりながら、四人はひっきりなしに何かを喋ってひどく賑やかだ。
    「ごちそうさま!」
    最も出勤時間の早いマコトは常に駆け足だ。バタバタと家中を往復しながら支度を終えると、彼女は皿を集めて台所へ運ぼうとしている夫に駆け寄った。
    「行ってくるね、あなた」
    ちゅ、と少し背伸びをして夫の頬に唇を押し付ける。
    「おん、行ってらっしゃい。気を付けてな!頑張りすぎたらあかんでェ!」
    昔のようにいつまでも追いかけて行って今生の別れを惜しんだりはしなくなったが、それでも真島は足を止めてちゅっと妻の頭にキスをする。
    「行ってらっしゃいママ!」
    制服を着終わって可愛く髪を結ってもらい、満足気に佐川に抱かれたお嬢はぱっと両手を広げた。
    「行ってくるね、幼稚園楽しんできてね」
    身をかがめてちゅ、と娘の頬にキス。
    「佐川さんも、行ってきます」
    「ほい行ってらっしゃ──」
    またもや背伸びをして、頬にちゅ。
    ちゅ?
    はっとしてマコトは目を瞠った。佐川も、お嬢も、台所から出て来てその瞬間を目撃した真島もぱっと動きを止めて咄嗟に全員が目を見かわす。
    やがて沈黙を破ったのは地鳴りのような笑い声だった。朝から聞くにはちょっと邪悪すぎたが。
    「行ってらっしゃい、マコトちゃん」
    ヒィヒィと喉を鳴らしながら佐川はにやりと微笑んだ。
    「あは、は、行ってきます…!」
    「あかぁん!マコトのキス返せやぁ!」
    助走なしでとびかかってきた真島は佐川の頭をがっと掴むと、妻のキスを取り返すかの如くその頬にかじりついた。
    「お嬢も!お嬢もちゅうする!」
    なぜか対抗意識をむき出しにしたお嬢によって反対の頬にもぢゅう。
    「やめねぇかァ!」
    佐川はさすがに絶叫する。
    「二人ともかじるな!俺はあんぱんまんじゃねぇ~~」
    ──つくづく、平和すぎる。
    ムショ生活十四年目も、無事こうして過ぎていった。


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    「俺が死んだって覚えちゃいねぇだろ。まだ二歳なんだからよ」

    真マコ夫婦の娘ちゃんにじいじと慕われる生存if佐のお話です。全年齢。一旦完結です。ありがとうございました!
    お嬢とじいじ⑧「おどれ…!何や筋が真島に似とるやないか…っ」
    「そ?俺もすっかり奴の色に染められちまったってことか」
    嶋野は思わずチッと大きく舌打ちをした。
    「妬くな妬くな大叔父ちゃま」
    「うっさいわ」
    さて、佐川司が我が家に戻ったのは実に四時間後であった。嶋野太から連絡を受けて飛んできた真島吾朗に引きずられて帰ってきた彼は、そのまま居間に正座させられて散々に叱られた。傷だらけのじいじの変わり果てた姿にお嬢は絶叫し、真島は額に青筋を立てて怒鳴り、マコトは唇を引き結び無言で傷の手当をしている。
    「だってよ」
    佐川は腫れた頬を冷やしながらぼそぼそと言う。
    「だってもクソもないねん!殺されとったかもしれへんのやぞ!」
    お嬢は佐川の膝に取りすがって彼の血だらけの膝をべしべし叩いている。正直かなり痛い。やがて彼らの怒りは嶋野太の血判付きの書を見て最高潮に達した。それはかつての契約を書き直したものであった。
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