夜 煽りあって最高潮に燃え上がった熱がぐずぐずと冷えていくなかで、俺は天井を見上げていた。消えていく熱が惜しくて、濡れたタオルとゴミとローション持って立ちあがろうとした隠岐の背中に足を伸ばす。
「な、もっかい」
行儀が悪いと怒られそうやけど、体がだるくて思うように動かんから仕方ない。
「もう一回て、イコさん大丈夫です?」
荷物持ったまま置くそぶりすら見せへんのはなんでなん。
「大丈夫やから誘ってんねん」
「ホンマかなぁ」
「ほんまほんま」
隠岐はタオルやらなんやらを床に置いて、俺に手を伸ばしてきた。やさしく目元を擦られる。いけるか?
「えっちまた今度で。今日は寝ましょ」
いけんかった。
「おきーー」
隠岐の指が俺の眉毛をなぞり、耳たぶをさすり、襟足の短い毛を握り込む。軽く引っ張られたあと、またこめかみから襟足にかけて隠岐の指が動く。
「も〜、子守唄もうたいますよ」
「腕枕は?」
「一瞬だけなら」
「痺れるもんな」
「その代わりイコさん寝るまで背中トントン叩きますよ」
「あかちゃんやん」
「あかちゃんでしょ。眠れへんってグズってるんやから」
時間切れ