唐突に始まって終わる。「Aiはどうなんだ」
「……最近、引っ越しただろう」
遊作は酒を一口飲んで言葉を続けた。
「どうしてもキングサイズのベッドを置きたいと言うから、クイーンサイズで妥協させた」
「……」
「俺とAiしか寝ないのに、大きなベッドは必要無いだろう。それに、今まではシングルサイズで何とかなっていた」
了見が黙って先を促すので、遊作は酒を一口飲んで更に続ける。
「正直、クイーンサイズでも大きすぎるが、Aiは大きいベッドで眠りたいらしい。それでも結局くっ付いて眠るなら、ベッドの大きさは関係ないと思うんだが……了見はどう思う?」
「……どう、も何も……いったい何の話だ」
「? Aiの話だろう」
聞かれたことを答えただけで困惑されるとは思わなかった。遊作はサラダを口に運んで了見の言葉を待つ。レタスがシャキシャキしていておいしい。
「質問の仕方が悪かったか。Ai――いや、闇のイグニスは不穏な動きをしていないか」
「……、」
Aiの不穏な動き。遊作はレタスを噛みしめながら思考を巡らす。最近のAiは引っ越し後の家具や家電をそろえることに夢中で、日中の活動量に応じてSOLtiSの充電も多く減るため、夜もさっさと眠ってしまう。不穏と言うほどのことはしていないような気がした。
「……そういえば」
「! 何かあるのか」
レタスを飲み込んだ遊作が、ふと思いつく。了見は飲んでいたグラスを置いて話に聞き入った。
「Aiが昨日、家電のカタログを見て悩んでいるようだった。何か高価なものを買おうとしているのかもしれない……」
「……」
「先日も、やたら大きなテレビを買おうとしていたから止めたんだ。俺はあまりテレビを見ないし、ニュースを見るだけでそんな大きな液晶は必要ないだろう? だがAiは、映画やドラマを見たいから大きい方が迫力が出る、と」
遊作は酒を一口飲んで唇を湿らせる。
「Aiの嗜好を否定する気はないが、置く場所にも限度があるからと大きすぎないものを二人で選んだが……テレビ以外にも買いたいものがあるのかもしれないな」
「……そうか」
酒を飲もうとグラスを傾けるが、もう空になっていた。見れば、了見もいつの間にかグラスを空にしている。
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続きは鋭意執筆中です。6月に発行できるよう頑張ります。