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    neko3caoo

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    #遊Ai

     学校に向かい、カフェナギで草薙の手伝いをするばかりで遊作自身が積極的に外に行くことは少ない。
    『不健康じゃない?』
    「何がだ」
    『遊作の生活!ってことで外にゴー!』
     早朝に起こされたと思えばお説教。動きやすい服装に着替えさせられる。そしてAiに腕を掴まれ遊作は外に連れ出された。目的地は決まっているようですいすいと足を進めていく。
    『着いた!』
    「……公園?」
    『そう!まずはウォーキングしようぜ』
     準備体操~と気合いを入れているAiに倣って身体を動かす。以外と体操をしっかりすると疲れるようだ。
    『はい!』
    「ん?」
    『手、繋ごうぜ』
     左手を掴まれウォーキングコースを歩き出すAiに引かれるままついていく。歩きながら周りを見渡すと、まばらに人々が自由に運動をしている。Aiは結構目を惹く見た目をしているが気にするような人はいないらしい。植えられた木々は紅葉する途中のようで色が混ざっている。その景色を楽しみながら歩き続けていればいつの間にか3周していたようだ。くぅっと身体が空腹を訴え、朝食を食べていないことを思い出す。
    『ちょっと休憩、飲み物買ってくるからベンチで待ってて』
    「わかった、無難なもので頼む」
    『……了解~!』
     目を泳がせてからの良い返事、釘を刺しておいて良かった。見慣れないものを『気になったから』と買ってこられても困る。
    『買ってきたぜ』
    「ありがとう」
     ペットボトルの清涼飲料水が渇いた喉に染み入る。隣に座ったAiは寄り掛かりながら何かを検索していた。
    『よし、時間は大丈夫!』
    「時間?」
    『そう!次に行く予定のとこ!お腹空いてるだろ?』
     こくりと頷く。にこにこと楽しそうなAiに好きにさせようと思った。遊作から手を握ればAiは目を丸くして、柔らかく笑む。
    『こっちこっち!』
    「ゆっくりで良い、転けるぞ」
    『大丈夫だって!』
     軽い足取りで目的地に向かうAiに連れられる。何処に向かっているのかと少しの期待が込み上がってくる。
    『到着!』
     喫茶店だった。Aiがドアを開ければカランカランと音を立てる。落ち着いた雰囲気のレトロな内装を軽く見回す。「いらっしゃいませ」と店員さんに席を案内されメニューを眺める。
    『遊作、これにしよう!』
    「食べられるのか?」
    『俺は無理だから遊作にたくさん食べてもらう』
     Aiが指差したのはホットケーキだった。ふっくらとした分厚いホットケーキが三段重ねられている。バターとメープルシロップがたっぷりかかった写真はとても美味しそうだ。
    『がっつり食べるならこっちとか?』
     ピーマン、たまねぎ、ウィンナーとシンプルな具材で作られたナポリタン。他にもオムライスやコロッケサンド等食欲をそそるメニューが並んでいる。悩んでからそっとホットケーキを指差す。にっこりと笑顔のAiが手を上げれば店員さんがやってきた。
    『ふわふわパンケーキとカフェオレお願いします!』
    「はい、ご注文を承りました」
     カフェオレが追加されていた。しかし二人で来て一つしか頼まないのも確かに失礼だと選んだ理由を聞いてみる。
    『オススメの組み合わせなんだと』
    「有名な店なのか?」
    『この店自体はホームページとかないんだけど、個人ブログとかで色々紹介されてる』
     ほら、と表示される画面には隠れた名店!、ほっと一息つけるお店など様々な記事があがっていた。注文した料理と共にコメントが添えてありつい読んでしまう。
    『気になってたから来れて良かった』
    「そうか」
     自分が食べるわけではないというのにAiはとても嬉しそうだった。そんな姿に遊作も嬉しくなる。
    「お待たせしました」
    『おお……』
    「これは、凄いな……」
     写真以上に大きくふんわりと重なったホットケーキ、クリームがたっぷりと添えられたカフェオレが運ばれてきた。
    「頂きます」
     ナイフを通せばスーッと切れる。一口大に切ったそれを口に運べば柔らかな食感。バターとメープルシロップのほどよい塩味と甘味でいくらでも食べられそうだ。
    「冷めないうちにこっちも飲んだら?」
     トントンとAiがカフェオレを指差す。それもそうかとフォークとナイフを置いてカップに口をつけた。
    「美味しい」
    『そう、良かった』
     口の中をさっぱりとさせる苦味、クリームが熱で溶けてさらにまろやかになっている。にこにこと微笑んで見てくるAiに照れながらも最後まで食べ終えた。
    「ご馳走さまでした」
    『じゃあ次~!』
     さっさと会計を済ませ再び遊作の手を引いてAiは更に何処かに向かう
    「Ai、お前が払わなくても良いだろう」
    『えー?俺が遊作にご馳走したかったんだから良いでしょ!好きに使えって言うなら俺は遊作のために使いたいし』
     草薙さんの手伝いや財前に雇われ、ある程度の収入があるAiはよく遊作へとそのお金を使う。似合いそうだから~!とお揃いの服を買ってきたりするのですっかり部屋に物が増えてしまった。料理は細やかな味付けなどが難しいようで練習を重ねているらしい。しかしテレビ番組のお取り寄せグルメだと通販を利用するため、食に関しても色々と費やされている。
    『あ、ここだ』
    「コスモス祭り……」
     Aiが指差した看板を読み上げる。入り口の案内板のようだ。受付を済ませ先に進むと様々な品種のコスモスが咲き乱れる美しい景色。
    『おおー!凄い!』
    「そうだな」
     赤やピンク、オレンジに白、入り交じる華やかさと単色で並ぶ美しさに目を奪われる。少し先にはまた違う花が咲き誇っているようだ。
    「あの花は……」
    『んー、秋バラ?』
     艶やかに咲き乱れる色とりどりの薔薇。カラフルなアーチは写真を撮るのに良さそうだ。にこやかなスタッフさんが「よろしければ撮影しますよ」と声をかけてくる。
    「いえ……」
    『お願いしまーす!』
    「っAi!」
    『良いじゃん記念になるし!草薙や尊に自慢するんだ~!』
     断ろうとした遊作の言葉を遮り、スタッフに端末を渡したAiは遊作をアーチまで引っ張っていく。ムッとした不満の表情を見せた遊作だったが諦めたらしい。Aiがピースをするのに合わせてぎこちなく同じポーズをとる。
    「楽しんでくださいませー」
    『はーい!ありがとうございます!』
    「はぁ……ありがとうございました」
     手を振るスタッフさんに見送られて先に進むと売店がある。ベンチが置かれているので休憩所も兼ねているらしい。花型のクッキーやお饅頭、ストラップ、髪飾りなど種類が豊富だ。
    『遊作!これお揃いにしよう!』
    「ん?」
     青と黄色のコスモスが描かれた細やかなブレスレット。咲き乱れるコスモスに青色は無かったな、と首を傾げる。
    『実際に青いコスモスは無いんだけど綺麗じゃん?』
    「そうだな」
     ブレスレットを二つとお土産用にお菓子を手にとってレジに向かう。包装を解き腕に通せばAiは満面の笑みを見せた。道を歩きながら写真を撮って時間はあっという間に過ぎていく。
    『そろそろ帰ろうぜ』
    「ああ」
    『いっぱい歩いて美味しいもの食べて綺麗な景色を楽しんでどうだった?』
    「楽しかったな」
    『うん、良いんだけどもっとこう無いの?』
    「お前とのデートだろう?」
    『んっ!?』
     言葉の通りビクッと身体を跳ねさせたAiが遊作から距離を取る。その距離が寂しくて、目を左右に泳がせるAiの手を取り引き寄せた。力は抜けていたようで簡単に寄り掛かってくる。
    「違ったか?」
    『合ってるけど……』
     はっきりしない物言い。Aiの顔を両手で掴み視線を無理矢理合わせた。ぶわっと真っ赤に染まった表情に遊作の口角が上がる。
    「遠回しに誘わなくて良い」
    『え……』
    「お前が興味を持つなら俺もそれを知りたい。恋人なんだから、何処に行こうがデートだろう」
    『っ遊作!』
     勢いよく飛び付かれた遊作は支えきれず倒れ込む。ドスンと鈍い音、じんわりと尻が痛んだ。顔を歪める遊作にハッとしてAiが謝ってくる。
    『あ、ごめんな遊作。つい……』
    「気にするな。愛の重さと言うやつだろう」
    『……遊作もドラマ見たの?』
    「お前が見せてきた話だ」
     戯言を重ねれば笑いが込み上げてくる。笑みを浮かべたままAiの唇に自身の唇を重ねた。
    『んふふ、家まで我慢できないなんて悪い子~』
    「お前が可愛くて仕方ないからな」
    『熱あったりしない?』
     照れながらも失礼な言葉を吐くAiにもう一度口づける。
    「……黙れ」
     固まったAiの手を繋いで帰路につく。今日のことを皆に話すのが楽しみだ。
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