ホ医薫零 最近、佐倉山からの連絡が途絶えている。以前羽鳥からわざと連絡を止めたのとはニュアンスが違う。どうやら単純に薫と会う時間が取れぬほど忙しいらしい。普段から多忙な人だが、いつもより輪にかけて余裕がないということだ。羽鳥が在籍するホストクラブに遊びに来ないのは勿論のこと、メッセージアプリへの返信も、スマホへのコールに折り返しもないという状況だ。
こういう時、天才外科医の佐倉山を取り巻く世界の中で、最初に篩い落とされるのは自分なのだと羽鳥は考えて項垂れる。私と仕事、どっちが大事なの――? なんて使い古されたフレーズが頭に浮かんでげんなりした。しつこく連絡をするのも鬱陶しいかと思い、せめて声だけでも聞きたいと願う健気な感情も堪えてそっとしておいた。
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