腕の中の妻は安らかな寝顔で、静かに寝息を立てている。
珍しくふと夜中に目が覚め、目の前のかわいい寝顔をなんとなく眺め。二人分の体温に程よくぬくい布団の中で、うとうとと再び眠りの波がやってくる。
そのリズムに身を任せるように瞼を閉じたり緩く開いたりしながら、御行はかぐやの背後に流れる艶やかな黒髪をそっと梳いた。
男の節だった太い指も引っ掛けることなく通す、絹糸のように繊細な髪。就寝時にはどこも結われることなく下されたままのそれは、まるで眠り姫を守るベールのようだ。……そんなことを夢現に考えて、御行は悪戯心のような、ほんの些細な誘惑に駆られた。
彼女の耳元に指先を伸ばして、壊れ物を扱うような力加減で流れる黒髪をゆっくりとかきあげる。耳にかけられた艶髪の下から現れた白皙の小ぶりな耳に、御行は淡い微笑みを浮かべた。
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