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    すずか

    お試しに 男女カプが主食

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    すずか

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    横書きテスト投稿にだいぶ昔の書きかけPart2 こちらも永遠にお蔵入りパターン

     ——まずい。
     彼女の不調は自分のせいかもしれない。そう思い立って、途中知らない世界に足を踏み入れることに思わずビビったり、その世界の使用人からなんだか冷たい目を向けられたような気がしたりしつつも、彼女への謝罪と見舞いに来たはずだった。
     見たことのないかぐやの一面に逸る心臓をどうにか鉄面皮の下で宥めつつ、大きな目的であった謝罪をしようとまず事実確認をして——尤も、その時の彼女にきちんと意が伝わっていたかは微妙だが——、想像以上に具合が悪そうな彼女との意思疎通に四苦八苦していた白銀は、気づいたら再び知らない世界に放り込まれていた。
     自身が普段寝ているものとは比べ物にならない肌触りの、かつ体をしっかり支えてくれるベッドのマットレス。詳しくはわからないが甘い花のような、いい香り。至近距離で潤んだ瞳、蕩けた声。いつもの折り目正しい制服姿からは決して覗けないはずの白い肌が、目に痛かった。
    「いっしょにねよ」
     かぐやの要求は至ってシンプルだった。だが、素直にうんと頷けるはずもない。ここは紛れもなくベッドの中で、ほぼ密着状態にあるのは男と女で、そして、その男は女に懸想しているのだ。何より白銀は健全な男子高校生である。
     頭が重い。常に頭に纏わりついている眠気のような倦怠感ではなく、熱を持ちすぎた回路がぼうっとして朦朧としてくるような感覚。ここまで案内してくれた先程の使用人の一言一句が意味もなく脳内をぐるぐると動き回った。
     今、もしこの手を伸ばしたら。邪魔するものはない、いや病人相手になんて、というかそもそも付き合ってもいない相手に何かするだなんて言語道断……上滑りする思考回路はいたずらに回り道をするばかりで、籠る熱を逃せるはずもなかった。どうしよう、と心に焦りが浮かぶ。
    (一体どうなってしまうんだ…………!!)
     策を練ろうにも経験があまりにもなく、せめてなんとか耐えなければとぎゅっと目を閉じる。視覚を遮断でもしていなければ、すぐそこにある艶やかな桜色に触れてみたいという衝動を抑えきれなくなりそうだった。
     草原を走り回る羊の代わりに耳元で跳ね回る煩わしい鼓動を数えていた白銀は、一度だけ……本当に一度だけ、固く閉じたはずの瞼を薄らと開いた。
     柔らかくてふわふわのベッド。甘い女の子の香り。目の前にある、すきなひとの無防備な寝顔。
    「——」
     指一本分だけ、魔が差した。それは後に振り返って言い訳しようのない事実だったし、結局正直に白状することにもなる秘密だった。
     ふに、と。
    「——————っ!!」
     慌ててばっと指を離してから、その動きですやすやと眠る彼女を起こしてしまっていないか、全身を緊張で強張らせる。目の前の幼げな寝顔に変化はなく、白銀は相手に気取られないようにそっと息を押し出した。
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