はちゃめちゃに恋愛下手なクルー…ル先生の話そろそろ秋の気温に近づいてきた晩夏の街中。私は街路樹の影でとある人を待っていた。待ち人は約束の時間からもう20分も過ぎているというのに、一向に姿を現さない。
暇つぶしにコーヒーでも買ってこようか……そう思い始めたところで、ようやく道の向こうに彼は現れた。白黒を基調としているのに目立つあのファッション。見間違いようがない。
急ぐ素振りも見せず、悠然とした足取りでやって来て、尊大に私の前に立ち止まる約束の人。私は不満の一つでも投げかけてやろうとその顔を見上げた。
「遅いですよ」
「すまん。身支度に手間取った」
「本当なら私が言うべき台詞なのでは、それ」
まるで年若いガールフレンドのようなことを何の臆面もなく言ってのけるこの人は、既にアラフォーの域に到達しつつある。出会った時が32歳だったから、5年が経った今は37歳……そんな年齢を感じさせないほど、この人は若々しい。
1585