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    はるか@haruka_tbv

    twst🦁💛 🐉🦁&🍩 いにしえの腐女。成人済。字書き。ポイピクは各種ワンライとか、🦁さんSS投下用。基本推しは受だが大雑把な雑食。推しがカッコ良ければ上下左右BLNLなんでも。地雷ほぼなし。ハピエン派。ロイヤルムーヴやフェミな🦁さん大好物なので、🦁監♀も。🦁さんのモンペにつき、🦁さんにとってのハピエンを追求したい所存。ゆえに🦁さんと🍩くんは常時セットで!

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    監♀受け版ワンドロ&ワンライ

    過去お題参加 第53回 呪(まじな)い

    監♀初書き 男装監♀ 恋人未満

    レオ🦁監♀ですが、つの🐉タロが出張ってます。
    男子がひたすら蘊蓄をしゃべる。
    王族同士間で未来の予定を勝手に牽制するお話。

    お気に入りを並べて愛でたい若様なので、💚感情はないです。

    各種捏造多々

    #女監督生受け版ワンドロワンライ
    #twstプラス

    #twstプラス
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    #twst_NL
    #レオ監
    leo.
    #女監督生
    femaleCollegeStudent
    #女監督生受け版ワンドロワンライ

    ラッピングにはリボンを添えて「……ああ、キングスカラーか。相変わらず器用なことだ」

    夜半過ぎのオンボロ寮。
    いつものように夜の散歩ついでに顔を出したツノ太郎が、突然そんなことを言ったので、一瞬意味が分からなかった。
    「え? ……あ、あれのこと?」
    思わずベッドサイドのチェストを見やる。
    その上には、数日前にレオナ先輩から渡された、ブレスレットがのっているのだ。



    ◆◆◆



    放課後の植物園で。
    お昼寝中のレオナ先輩を見付けたので、なんとなく近付いて、ついつい綺麗なお顔とキュートなお耳を眺めていた時だった。
    パチッと目を覚ました先輩は、私を目にすると腹筋だけでのそっと起き上がって、ポイッと何かを放って寄越した。
    慌ててキャッチしてみれば、
    「やる」
    と一言だけ言って、またゴロンと寝てしまった。
    「えっ? はいっ??」
    ビックリしてわたわたしていると、面倒臭そうにしながらも説明してくれる。
    「お前、いくらクロウリーから雑用を押し付けられるといったって、面倒事に巻き込まれ過ぎだろう? その上更に自分で引っ掻き回してる事も多いんだから、始末に悪い。かといって上手く立ち回れるわけでもなく、どっちかっていうとドン臭いよな。危なっかしいから、それでも持っとけ」
    なんだか失礼なことを言われながら、キャッチした手の中を改めて見る。
    赤、青、黄色、緑、水色と、カラフルな石を繋げた、かなり存在感のあるブレスレット。
    レオナ先輩が普段身に付けている物と似ているな、と思ってその手首を見やれば、二連で付けていたはずのストーンブレスレットが、一連になっていた。
    「これ、もしかして、レオナ先輩のですか?」
    「そうだ。面倒事に対処する魔法をかけてある。まあ、呪(まじな)い付きの御守りみたいなもんだと思って、怪我を減らしたいなら常に身に付けておけ」
    「ありがとうございます。えっと、もらっちゃっていいんですか?」
    「良い。後から返せなんてケチなことは言わねえから安心しろ。こういったモンは、元が俺の持ち物だって部分も重要なんだ。ラギーの上着の話は聞いたんだろ? あれと一緒だ。獣人なら匂いで分かるし、獣人のほとんどはウチの寮生だ。ボスの匂いがついたモンを身に付けてるヤツに、ケンカを吹っかけるようなマヌケなことはしない。他寮の獣人だって同じことだ。サバナクローの寮長に不興をかって良い事なんかねえからな。それに、知っての通り獣人は鼻が良い。種族や個人や性別なんかは本能的に嗅ぎ分ける。そのうちいつかお前の匂いに気付くヤツも出てくるだろう。お前がもっと慎重な性分ならもう少し時間が稼げるかもしれねえが、むしろボロを出しまくりのウカツモノだからな。そろそろ時間の問題だろ? そうなった時にこそ、『ボスの匂い付き』ってのが有効だ」
    ニヤリ、と皮肉っぽい微笑を浮かべて、お優しいだろ? なんて言われても。
    例え目的があるからこその自らのお古だとしたって、そもそも気軽にアクセサリーをプレゼント出来てしまう辺りが、ザ・ロイヤルって感じだし、ナチュラルにこちらの弱みを守ってくれようとしてくれるところが、本当にジェントルだし。
    めちゃくちゃ見た目が良くて、頭も良くて強くて優秀な王子様に、こんな風に気遣ってもらっちゃって、ビックリし過ぎて思考停止してしまう。
    思わず固まったまま手の中のブレスレットをマジマジと眺めていたら、
    「なんだ? 気に入らないか? まあ、確かにお前が付けるにはゴツ過ぎるかもしれねえが」
    再び身を起こしたレオナ先輩は、私の手からひょいっとブレスレットを取り上げてしまった。
    「あっ!」
    取り返されてしまったのかと思って、名残り惜しくて目で追えば、先輩はマジカルペンを片手に、もう片方の手のひらの上にブレスレットを浮かせて、何やら呪文を唱えている。
    キラキラと光の粒子が舞ってブレスレットを取り囲むと、少しだけ小ぶりになったブレスレットが、ストンと先輩の手のひらの上へと着地した。
    「ほら、これでどうだ? これ以上見た目を変えちまうと、意味がねえからな。このくらいで折り合っとけ」
    クルッと指先で器用にマジカルペンを回して、スッとポケットに無造作にしまう仕草ですらサマになるのだから、プリンス・チャーミングの威力はすごい。
    ほけっと見惚れていたら、
    「おい左手出せ。特別サービスで付けてやる」
    目の前に、まるでエスコートするように手のひらを差し出された。こういう事を自然にやってしまえるところが、本物なんだなぁと思う。
    口調はほぼ命令形で強引なのに、決してこちらの手を無理につかもうとはしないのだ。あくまで、私が自分で手を差し出すという合意を待つ。
    おずおずと手のひらに指先を乗せれば、軽く引かれてブレスレットを嵌められた。
    先ほどの大きさよりは、自分の手首に不釣り合いではなくなって、ふふっと自然に笑いがもれた。
    「……かわいい」
    「そりゃ良かった。俺はこの腕輪を、寮服の時も制服の時も身に付けているからな。匂いが分からない獣人以外のヤツらでも、見覚えがあるってヤツは多いだろう。危害を加えられれば防衛魔法が発動するようになってはいるが、発動前に防げるならその方が効率が良い」
    ああ、なるほど。だから、形を変え過ぎると意味がない、なのか。
    確かに、この特徴的なブレスレットを見て、レオナ先輩を思い浮かべる人は多そうだ。なんだかお揃いみたいて、少し気恥ずかしいけれど。
    「ありがとうございます。嬉しいです」
    腕を掲げて光に透かしてみる。カラフルな石がキラキラと煌めいて、まるで自分が華やかになったような気分になった。

    突然来てしまったこの知らない世界で、訳も分からないままこの学園で生活することになり、それによって衣食住を確保出来たことは、確かにとてもありがたいけれど。
    それでも男子校であるこの学園で、そのままの姿でいるわけにもいかず、学園長の魔法の助けも得て、普段は男装をしている。
    そんな生活が続くうちに自然と、男装しているのだから、と女の子らしいことは極力避けていた。
    男子も普通にメイクをする世界のようなので、スキンケア用品には困らないし、レオナ先輩のように髪の長い生徒も珍しくないから、男らしさを意識して仕方なく髪を短く切り揃える必要もない。
    そんなところは助かっているけれど、それでもやはり、今までの自分と同じような女子らしい服装や可愛いらしいアクセサリー類とは縁遠くなっていた。
    もちろん、お金がないからそんな自由に買い物など出来ないという事情もあるけれど。
    それに、学園内の生徒はみんな、全員同じ黒い制服の一部に、自分が所属する寮のカラーを身に着けている。
    イレギュラーな自分にも、制服や運動着などの必要な衣類を一式支給されたのはありがたかったけれど、なにしろオンボロ寮で制服を着ているのは自分だけなのだ。
    寮のカラーがないモノクロの制服は、まるで自分だけが違うのだと自覚させられるようで、なんだか寂しいと思っていた。そんな贅沢を言える立場ではないことは、重々承知しているけれど。
    だから今、自分の手首にあるその充分過ぎる存在感を主張するカラフルなブレスレットが、予想以上にずっと、意外なほどすごく嬉しかったのだ。

    「気に入ったなら、何よりだ。いつでも身に着けておけよ。この学園にいるヤツらは、お前以外はほぼ魔法が使える。ある程度のレベルまでいけば守護魔法の威力を見て取れるだろうし、誰の魔法か読み取れるようなら、より抑止力になるだろう。ラギーの場合は魔法も使えるしケンカも弱かねえから、単純に寮内での面倒事を減らす手段として、手っ取り早いマーキング目的で俺の上着を被せておいたが、お前はそもそも隠し事をしている上に、魔法が使えない。加えて体力も腕っ節も劣るんだから、こういった魔法道具でも使って補強しとくに越したことはないだろ」
    「……はい。お気遣い、痛み入ります」
    レオナ先輩、なんだかんだで面倒見が良いんだよなぁ。そりゃ、寮生たちや部活の後輩たちにも慕われるわけだよね。同じマジフト部のエペルも、すごい懐いてるっぽいし。


    ……そんなことがあったのが、数日前。



    ◆◆◆



    それから毎日ブレスレットを身に着けていたが、そういえばツノ太郎とは顔を合わせていなかった。
    それにしたってツノ太郎は窓の外にいるのに、室内のことがそんなに良く見えるのだろうか。
    私はもうパジャマに着替えていて、寝る直前だ。グリムは既にベッドで寝息を立てている。
    部屋の照明は一番小さいライトを一つ付けてあるだけなので、中を見渡せるほどの明るさはない。
    外からの灯りがほとんど入ってこない、学園の外れにあるこの部屋では、すべての灯りを消すと暗くなり過ぎるため、一つだけ灯りを付けたまま寝るのが習慣だった。
    ライオンと同じで、ドラゴンも夜目が効くのかな。まあでも、そうじゃなきゃ、夜のお散歩を日課にしたりはしないか。

    「ツノ太郎、どうして分かるの?」
    「ん? どうして、とは?」
    「外の方が月明りで明るいくらいなのに、そこからブレスレット、見えるの?」
    「ふむ。ブレスレットなのか。僕が分かるのは、キングスカラーの魔法の気配だな。それから、媒介にかなり上質な宝石を使っていること。それと、防衛魔法と攻撃魔法、守護の呪(まじな)いだろうということだ。古代呪文のかなり高度な術式だ。その分威力も強力になる。そのくせ、おそらく発動時にお前を傷付けないようにだろうな、かなり繊細にいくつもの保護や防御の魔法もかけ合わされているようだ」
    つらつらと重ねられた魔法についての解説は、言葉の意味はなんとなく分かるけれど、なにぶん魔法を使えない身としては、実感するのは難しい。
    「えーっと、つまり、魔法が得意なツノ太郎が感心するくらい、高度で強力で難しいレベルの、なんかめちゃくちゃすごい魔法がかかってるってこと?」
    「まあ、そうだな。高度で強力で有効な上に繊細な魔法だ。普通の魔法士にとっては難解だろうが、キングスカラーにとってはそうでもないのだろう。手に取って見ればもっと詳しく分かるだろうが、触れたらきっと僕の魔力に反応して発動してしまうだろうからな。興味深いがやめておこう。発動すれば術者にそれが伝わる。こんな夜半過ぎにそんなことをしたら、おそらくものの数分で、キングスカラーが文字通り飛んで来るだろうな。さすがにそれは避けたい」
    んー、まあ。顔を合わせたらケンカになるしねえ。
    そう思いながら、私はブレスレットを手に取って、ツノ太郎にも見えるように目の前に差し出してみた。触るのはダメにしても、見るだけなら大丈夫かな、と。
    「見ただけでも何か分ったりする?」
    「ああ。……なるほど。これはお前に合わせてサイズを小さくしてあるのか? 元はキングスカラーの腕輪だろう? どうりで宝石の質が最高級だと思った」
    「え? 最高級?? ええっ!? この石全部、宝石なの?! しかも王子様のツノ太郎が、最高級って認定するぐらいのっ!?」
    うそっ!! そんな高価な物を、全然そんなこと知らずに、普段使いで毎日無防備に腕に着けてたってこと??
    「おや、知らなかったのか。夕焼けの草原は宝石の産出国としても有名だ。色が鮮やかで大粒の石が特徴だな。種類も多い。その腕輪に使われている石は全てあの国の原産だろう。宝石は古来より魔力を増幅する働きがあるとされているから、こういった守護の呪(まじな)いの媒介にするには非常に相応しい。宝石の質が高いほどその効果も高くなる。宝石自体が魔力を帯びれば魔法石になるが、装飾用の美しい宝石に魔力を込めて使用する方法も一般的だ。ただ、魔法石は魔力で価値が決まるが、宝石は美しさで価値が決まる。美しい宝石は希少価値が高いから、魔法石と同じ効果を得ようとすれば、その質の高さの宝石を手に入れるためには、魔法石の何百倍ものコストがかかることになる。よって、限られた極一部の富裕層にしか実現出来ないことが難点だな」
    極一部の富裕層……。まさに、目の前にいるツノ太郎がそうだってことだ。なんてったって王子様だし。
    それから同じく王子様のレオナ先輩。あとは大富豪のカリム先輩くらいか。
    ……どうしよう。そんな凄そうな値段のブレスレットだなんて、何も知らずにもらってしまった。
    いや、気軽にくれる方もくれる方だとは思うけど。
    身に着ける効果については説明してくれたけど、価値についてはそんな高価だなんて全然触れられなかった。
    そういえば、アズール先輩達にここを追い出されてレオナ先輩のお部屋にお泊まりした時に、ラギー先輩が、高価なアクセサリーもその辺に放りっぱなし、お財布にすら頓着しないって言ってたっけ。
    「そんな高価な物……レオナ先輩本人が身に着けているならともかく、私なんかが持ってたら、簡単に盗まれちゃったりしないかな」
    高価な宝石なんて今まで手にした事もないから、明日から緊張してしまう。
    「それはむしろ難しいだろうな。そもそもお前に危害を加えようとした時点で、守りの呪(まじな)いが発動するし、それが高価な品であると分かっていて狙ったならば、つまりはキングスカラーの物だと知った上での狼藉という事になる。サバナクローの寮服では、寮長以外もカラーストーンのアクセサリーを身に着けているのだろう? おそらくキングスカラー以外の者たちは色ガラスなどのイミテーションだろうから、盗む価値があるのはキングスカラーの物だけだ。そして、キングスカラーに対抗出来る者など、この学園内では一握りにも満たない。生徒なら寮長クラス、教師でも一部だろう。そんな相手に歯向かおうなんて、自分の実力の程も理解出来ていない愚か者だろうからな。その程度なら発動した魔法の範囲内で充分に対処出来てしまって、キングスカラーが現場に駆け付ける必要もないし、後から鼻で笑われて終わりだろう」

    うーん。ツノ太郎、そーゆーとこなんだよなぁ。
    これだけレオナ先輩の事を評価してるくせに、自分が触れたら飛んで来ると思ってるとか、自信満々過ぎなんだよなぁ。
    いやまあ、私には全然正確にその凄さがどれだけなのかは実感出来ないけど、5本指? なんだから、当然なのかもだけどねえ?
    「そっか。じゃあ、安心して着けてればいいのかな」
    「当然だな。お前の身の安全のために、キングスカラーが最善と思って緻密に編み上げた守護魔法だぞ? 少し見ただけでも有効性の高さが分かるのだから、安心以外にないだろう? だいたいあの者は、僕が度々驚かされるくらい優秀だ。魔力量こそドラゴンの妖精である僕を上回る者など滅多にいないが、魔法の制御に関しては僕よりずっと繊細なことを事もなげにやってのける。それに知識量も豊富だし、頭の回転も速い。古代呪文語に詳しいかと思えば、イグニハイドが得意とするような最新の機械類も扱えるようだし、たまに一緒になる授業では、僕では思いつかないような柔軟な発想をして見せることもある。僕に怯えないどころか、ケンカを売ってくるような気の強い性格も含めて、見ていて飽きない子猫だ」
    いつも顔を合わせれば口喧嘩ばかりしているのに、こんなにストレートにレオナ先輩を褒めるツノ太郎は珍しい。
    「それ、ちゃんと本人に言えば、ケンカにならないのに」
    「そうだろうか? キングスカラーは別に、僕からの賛辞が欲しいわけではないだろう? むしろ、上から勝手に評価するな、と怒りそうだが」
    あー、うん。それも一理あるかな。
    レオナ先輩は明らかにツノ太郎が嫌いだけど、ツノ太郎はレオナ先輩をけっこう気に入ってるよね。
    でもその『子猫のように』気に入ってる感じが伝わってきちゃうのが、レオナ先輩からしたら上から目線でカチンときて、心底ムカツクんだろうなっていうのも、すごく理解出来てしまうのが、なんとも……。
    「ツノ太郎は、レオナ先輩とケンカするの楽しいみたいだけど、また校舎壊したりすると学園長に怒られるから、気を付けてね」
    「分かった。善処しよう。……ああ、そうだ。その腕輪に、僕が上からリボンをかけてやろう」
    「はい? リボン?」
    え? 今更? いやまあ、プレゼントって言われればそうかもだけど、本人から剥き出しのまま、放り投げられてもらった物なのに?
    不思議に思っていると、ツノ太郎の手のひらの上に、キラキラと黄緑色の光が集まって来た。
    魔法……。あれ? さっきは触っただけでレオナ先輩が来ちゃうって言ってたのに、大丈夫かな?

    「守護の魔法は悪意や嫌悪に反応するのが普通だ。僕のこれは善意と好意だから発動しない。安心していい」

    『ヒトの子と、その守護者の獅子にドラゴンの祝福を授けよう。
    本人たちの意に反して、お互いの絆が妨げられることがないように。
    それぞれの先行きに、明るく温かい幸福が満ちるように……』

    集まった淡い光が、ふわりと身体を包んで、じんわりと暖かくなった。手にしたままのブレスレットが少し光って、こちらも手の中でほんのりと温かい。
    ふわっと髪が浮いたと思ったら、すぐに光は消えて無くなった。
    でもまだ、ホッとするような温もりの気配がある。

    「ドラゴンの祝福は、呪(のろ)いを弾く力がある。僕の魔力よりも強い呪いでなければ、たいていは無力化出来る。毒に関しても、魔法薬や魔力が加わった毒ならばほとんどは無毒化出来る。ただし、魔力を帯びていない普通の毒草や化学薬品に対しては効果が少ない。が、それはキングスカラーの鼻で避けられるはずだ。獣人は匂いに敏感だからな。キングスカラーがお前に施した守護魔法は、魔法攻撃と物理攻撃への防衛と対処がメインに編み上げられているから、呪いと毒へのちょっとしたトッピング程度に思ってくれれば良い。ちなみに、お前と共にいる限り、キングスカラーへの呪いや毒にも有効だ。王族が従者も連れずに自由にしているのだから、このくらいのオプションがあってもいいと思わないか?」
    ふふ、と悪戯を思い付いたような悪い表情で、ツノ太郎が笑う。
    「あー、うん。ありがとう? レオナ先輩への部分は、本人にとって良いのかちょっと分からないけど、高貴な身分の人が安全になるのは、周りにとっても助かることだもんね?」
    もしレオナ先輩の周りにも、セベクのような護衛がいたなら、若様の安全が盤石ないものに! って、喜びそうだとは思う。
    ただなんか、これはこれでまたケンカのネタになりそうだなぁとしか思えなくて、だいぶ不安だけれども。
    「そうだな。僕を害せる相手なんてほとんどいなくても、護衛は付けておけと言われるものだからな。それに、妖精の祝福は喜ばれることが多い。そもそも妖精は気まぐれだから、いくら熱心に願われたとしても、気に入らなかったりその気がなければ祝福を与えたりはしないし、ましてやドラゴンは希少な上に魔力も強力だ。各国の王族や貴族、財閥や大富豪、有名人といった護衛を必要とするような人種からは、喉から手が出るほど望まれることもある。そのドラゴンの祝福を、自国の大切な第二王子の傍らに、ただ近しく置いておけば効果をもたらせられる者がいるとしたら、こんなにお得なことはないと思わないか? 僕が王なら、召し上げて大事な弟の横に置いておく。必要なら国籍も用意するし、魔法が使えないことも種族の違いなども瑣末事だ。もしくだらない理由で反対するような臣下がいたら、今後の登用を考え直す良い機会になるな」
    うわ〜……。なんか、すごい政治的な事を言ってる気がするけど、これって大丈夫なのかな?
    「えーと、ツノ太郎? 私の頭じゃ、難しいことは分からないよ?」
    「心配しなくとも、これは妖精の気紛れが招いた、悪意のないただのオプションだ。活用は必須じゃないし、無視したからといって災いがあるわけでもない。どうしようと選択肢はお前たちの自由だ。きっとキングスカラーは、余計な事だと怒るだろう。でも僕にだって、僕のお気に入りたちを愛でる自由があるんだから、僕の思うまま好きにするだけだ」
    フフン、と楽しそうに笑って、ツノ太郎はなんだか満足気だ。
    「それでは、おやすみ、ヒトの子よ。良き守護宝石を見せてもらった。いい夢を」
    「あ、うん。おやすみ、ツノ太郎。またね」
    言い終わると同時に、目の前でパッと消えるツノ太郎に、いつも思う。
    あの魔法が使えたら、遅刻しなさそうでいいなぁって。



    ◇◇◇



    そんなやり取りをした、翌日。
    今日も習慣のようになんとなく植物園に寄ったら、やっぱりお昼寝中のレオナ先輩を見かけた。
    少し近寄ったら、ガバッと音がする勢いで起き上がったので、こっちがビックリした。
    レオナ先輩もキュートなお耳が警戒するようにピンと立っているし、尻尾もブワッと膨らんでいる。
    「トカゲくせぇ! お前、何された?!」
    「ええぇ〜っ!」
    いや、昨晩会ったけれど、それだけだし。
    あ、魔法をかけられたから? ん? 魔法じゃなくて祝福だっけ?

    レオナ先輩のすごい剣幕に押されて、昨夜あったことを全て、覚えている限りそのまま、一言一句漏らさずに報告させられた。
    ずっーと不機嫌に聞いていたレオナ先輩は、途中から頭を抱えそうな表情になり、最後はペしゃりとお耳が寝てしまった。
    でもその様子がまた可愛く見えてしまうから、このお耳はキュート過ぎて危険だと思う。
    聞き終わって、はあぁーっと深くため息を吐いた先輩は、グルグルと小さく唸っている。
    「……あの野郎、ホントに余計なコトしかしねえな。フザケんなよ。お前と近づく度に、その祝福とやらが発動して、こうやってトカゲの気配にまとわりつかれるってか? 気色悪りぃだろーがっ!!」
    ガウッ! と吼えた先輩は鼻の頭にシワが寄るほど本当に嫌そうで、「余計な事だと怒るだろう」と言っていたツノ太郎は正しかったわけだけど、分かっていてあえてやっているのだから、つまりは嫌がらせってことになるのだろうか。
    「あの、そんなに匂います?」
    レオナ先輩にはトカゲだかドラゴンだか、とにかくツノ太郎の匂いがするのかもしれないけれど、鼻も良くなければ魔法の気配も分からない私には、全く何の変化も感じられないから、当然実感もない。
    「……めちゃくちゃクセェ」
    バシバシと不機嫌全開に尻尾を地面に叩きつけて、でもお耳はへにょりとしたままの様子が、怒っているというよりも心底嫌がっているようで、なんだか気の毒だ。
    「トカゲって、どんな匂いなんですか?」
    昨夜光ったブレスレットを鼻先に近付けて、手首の辺りをふんふんと嗅いでみても、さっき手を洗った時のハンドソープの香りがするだけだ。
    そもそも私にとっては、トカゲやドラゴンが一体どんな匂いがするのか、全然想像も付かないし、サッパリ分からない。
    今まで生きてきて、ベビやトカゲの匂いを嗅ごうと思ったことなんてないのだから。
    「どんなって……」
    レオナ先輩はどう説明したものか、というように首を傾げた。
    だいたいよく考えたら、ライオンの匂いだって分からない。
    猫ならまだ分かるけれど、ライオンなんて動物園の柵の向こう側に小さく見える程度でしか目にしたことはないし、匂いが分かるほど近くまで寄って来られたこともない。
    そーいえば、グリムだって猫とも犬とも違う匂いがするけど、それって魔獣? の匂いなの?

    せっかくだから、物は試しにレオナ先輩の匂いを嗅いでみようと思って、背中側に回って首の後ろの髪に鼻先を埋めてみた。
    「おいこら、くすぐってえ」
    「レオナ先輩は、良い匂いがしますねぇ。これってシャンプーかな? あ、でも、シャツの柔軟剤かも? あと、ぽかぽかのお日さまと、草の匂いもします」
    「おまえ、なぁ……」
    「今の匂いの中に、ライオンっぽい匂いもあるんですか? やっぱり獣人じゃないと分からないのかな」
    はあ、と呆れたのだろう大きいため息が聞こえた。
    「お前、俺に近付く時はこのくらい近くにいろよ。お前の匂いでトカゲくせぇのかき消しとけ」
    「う、それって、くさいくさいって言ってるツノ太郎よりも、私の匂いの方が強いってコトですよね? なんか、納得いかない……」
    「ばーか。逆だろ? たいした匂いじゃねえから、ここまで近付かないとかき消せねえんだろ」
    「あ、なるほど?」
    「祝福だってんなら、そのくらいはしてもらわねえとなぁ。常にトカゲくせぇとか、むしろ呪(のろ)いだろ。……いや、自分に招待状を寄越せっていう、遠回しの脅しか?」
    「招待状?」
    「お前がこの先、半永久的な就職先が決まったら、その祝いの席に呼べってことだろ」
    「あぁ。横に置いとけば良いだけの、お手軽な防衛装置ってヤツですね? でも、そもそもレオナ先輩自身がめちゃくちゃ強いんだから、何でも自分でどうにか出来ちゃいそうだし、私はただツノ太郎の祝福防衛スイッチなだけで、私自身は何の役にも立てなさそうですけど、ホントにそんな他力本願なラッキーだけで、王宮なんて超エリートしかいなさそうな、その国の一番すごいところに雇ってもらえるものなんですかね? 本当だったら就職倍率絶対エグイはずでしょう?」
    「……まあ、衣食住が確保可能な終身雇用の就職先としては、悪くねえんだろうな。だが倍率はそうでもないと思うぜ? そもそも身元がしっかりしてるってことを保証する、在職者からの推薦状がなきゃ受験資格すらねえからな。つまり、お貴族様方のご身内ばかりってコトだ」
    「なんだ。じゃあ最初から全然まったくお話にならないくらいダメじゃないですか。異世界人なんて得体が知れなさ過ぎて、ドン引きのレベルですよね」
    「……お前、ホントにアイツの言ってる意味を全然分かってねえんだな。その『得体の知れなさ』を補って余りあるほどの価値が、トカゲの祝福にはあるって、恩着せがましいことを言いたいんだろうよ」
    「んん? でも、その付加価値って私しか得しませんよね? 将来、問題なく国籍と就職先と衣食住を得られるかもしれないっていう、そんな可能性のお呪(まじな)いってことでしょう? レオナ先輩にとってはツノ太郎の祝福なんてむしろ迷惑そうだし、王宮の人たちにとっては、素性が全然ちゃんとしてない不審者を受け入れざるを得ない理由にされちゃうんだし。ツノ太郎は誰に恩を着せるんですか? 私に着せたってツノ太郎が得するようなこと何も出来ないですよ? むしろ、もし夕焼けの草原の人たちに『こんな不要な人材押し付けてやがって、あの茨の谷のドラゴンめ!』って思われちゃったら、ツノ太郎にとってはマイナスじゃないですか?」
    「いや? 逆にそう思うヤツらを炙り出せって話だ。曲がりなりにも王族の安全強化に対して、不要だと異議を唱えるような臣下など粛清してしまえ、ってご高配らしいぜ?」
    「はい??」
    え、なんか政治っぽいこと言ってたのって、そーゆー意味? いきなり物騒!
    「この時点で意味が分かんねえなら、考えても無駄だから放置しとけ。推薦状は俺が書けるし、国王代理のオニイサマはきっと大喜びで受け入れるだろうから、お前が王宮入りしたいってんなら特に問題はねえよ」
    「……あ! そっか。祝福ってそういうコトなんですね? 幸運を授けよう、って意味なのか。そりゃ、この学園を卒業した後もこの世界にいなきゃならないなら、国籍とか就職先とか一人で生きていくための衣食住とか、いろいろいっぱい基礎の部分から必要ですし、レオナ先輩の近くに置いてもらえるなら、こんなに安心なことはなくてめちゃめちゃ助かります!」
    「その解釈で、あながち間違っちゃいねえな。王宮入りって点では同じだ」



    ツノ太郎がレオナ先輩に催促した招待状が、一体何なのかを私が知るのは、学園を卒業後のことだった……。



    ◇◇◇



    「いっそ、『ツノ太郎』宛にしたら届くんじゃねえか?」
    「うわ、それ絶対『若様に対して不敬だぞ!!!!』って怒られるヤツ」
    「『トカゲ野郎』よりはマシだろ」
    「もう。お返事が『子猫』宛に来ちゃうでしょ」
    「おい……。じゃあ郵送はやめて、ラギーに直接持って行かせるか?」
    「えー、だったら私も行きたい」
    「ダメに決まってんだろ」
    「むー。でも多分、ツノ太郎に呼びかけたら『僕を呼んだな?』って言いながら、きっとすぐに来るよね?」
    「お前なぁ。他国の王宮のど真ん中、しかも後宮に近い場所なんかに転移魔法で現れてみろ。確実に国際問題だからな。いくら頭が古い妖精だからって、そこまで非常識じゃねえだろ」
    『おやおや』
    「ーッ!!」
    「ーー?!」


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    夜半過ぎのオンボロ寮。
    いつものように夜の散歩ついでに顔を出したツノ太郎が、突然そんなことを言ったので、一瞬意味が分からなかった。
    「え? ……あ、あれのこと?」
    思わずベッドサイドのチェストを見やる。
    その上には、数日前にレオナ先輩から渡された、ブレスレットがのっているのだ。



    ◆◆◆



    放課後の植物園で。
    お昼寝中のレオナ先輩を見付けたので、なんとなく近付いて、ついつい綺麗なお顔とキュートなお耳を眺めていた時だった。
    パチッと目を覚ました先輩は、私を目にすると腹筋だけでのそっと起き上がって、ポイッと何かを放って寄越した。
    慌ててキャッチしてみれば、
    「やる」
    と一言だけ言って、またゴロンと寝てしまった。
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    DONEシルバーと恋人同士の監督生が妖精さんたちに踊らされる話
    言葉としてちょっとだけいやらしい言葉表現があります⚠

    監督生(女の子)
    名前はユウになってます。
    ユウ呼び


    シルバーがよく喋ります。
    マレウス、リリアもよく喋ります。
    口調を含めて、キャライメージ違い注意。


    上記内容が、苦手な方は閲覧をお気を付け下さい。
    シルバーと恋人同士の監督生が妖精さんたちに踊らされる話
    言葉としてちょっとだけいやらしい言葉表現があります⚠

    !ご都合設定強め
    気持ちとしては、【一応頑張ったんですが、ちょっともうキャパオーバーみたいです。】と同じ監督生です。(読まなくても大丈夫です。)

    監督生(女の子)
    名前はユウになってます。
    ユウ呼び


    シルバーがよく喋ります。
    マレウス、リリアもよく喋ります。
    口調を含めて、キャライメージ違い注意。


    上記内容が、苦手な方は閲覧をお気を付け下さい。










    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    「ん」
    『あー……んっ…ん、おいひい…』
    「そうか、良かった。……あ。」
    『ん、ん…はい、どうぞ。…美味しいですか?』
    「ん、…うまい。」
    『良かったです、…やっぱりここのタルトはいつ食べても美味しいです!』
    「そうだな」

    ね〜、なんてにこにこと笑いながら話すはユウ。そしてその姿をいつになく優しい視線で見つめ話すはシルバーだった。


    ここはディアソムニア寮の談話室。
    ユウが寮に来るのは珍しいことではない、こうしてマレウスやリリア、シルバーや今日は1年生で 5358

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