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    kazeaki_twst

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    アズ監🌸「戻れない日々の続きを歩いて行く」
    前作の「星が降る夜に」の続き。

    #twst夢
    #アズ監
    azSupervisor
    #女監督生
    femaleCollegeStudent

    その日は、本当にいつもと変わらなかった。
    四年生になり、いつもと同じように研修先からグリムと帰宅し
    「グリムーっ!ちゃんと外から帰ったんだから、手を洗いなよーっ!」
    なんて言いながら、自分の部屋で制服を脱いでいた。外は、すっかり暗くなり秋らしく鈴虫か何かの虫が鳴いている。
     そして、ふと鏡に目をやると首元のネックレスが光った。そこには、恋人が学生時代に使用していた魔法石───を再錬成して作った少し小ぶりの魔法石がついていた。監督生の頬が思わず緩む。
     これをプレゼントされたのは、ほんの数日前のことだ。

    「監督生さん、これをどうぞ」
    いきなり差し出された小さな箱を見て、監督生は首を傾げた。目の前は、明らかにプレゼントとわかるラッピングに、少し緊張した表情のアズールがいた。
     監督生は、何か記念日であっただろうかと記憶を辿り───思い当たる事もなく、思い出せない事に内心焦った。当然、自分は何も準備していない。
     しかし、このまま何も言わずプレゼントに手をつけなければ、きっとアズールは傷つく。いつも余裕綽々とした態度で、若年だと侮られながらも学生起業家として大人たちと渡り合う深海の商人──あのアズール・アーシェングロットが…緊張した面持ちを見せるなど、早々ない。つまり…アズールが何よりも生きがいにしている商人としての仕事より、このプレゼントを渡すことの方が“難易度の高いこと”なのだろう。
    「ありがとうございます。…開けてもいいですか?」
    監督生は、とりあえずプレゼントを開けることにした。何か忘れているようであれば、素直に謝るしかない。そう腹を括った。
     その中には、水に少しだけ青を混ぜた透明の石がついたシンプルなネックレスが入っていた。
     その澄んだ輝きに監督生は息を呑む。触れて良いものか分からず、思わず正面にあるアズールの顔を見上げると、そこには穏やかに笑うアズールの顔があった。監督生の反応にほっと安堵したようにも見えた。
    「どうぞ。触れても大丈夫ですよ」
    監督生の思っていることなどお見通のような返答がくる。その返答に、監督生はうなづくと、そっとネックレスのチェーンをつまみ上げた。
     ペンダントトップの透明の石がゆらゆらと揺れて、光が水面のように輝く。
    「これは…?」
    「僕が使っていた魔法石を再錬成して作った石です」
    アズールの返答に、監督生は納得がいった。一目見た時から、アズールやフロイド、ジェイドが身につけていたオクタヴィネル寮生の証でもある魔法石に似ていると思ったのだ。
    「やっぱり、これはオクタヴィネル寮の魔法石なんですね。再錬成した…とは?」
    「学生時代に使用していた魔法石は、学園から支給されたものなのは貴女もご存知ですよね?四年間それを使い続ければ、当然持ち主の魔力に馴染んだものとなります。そして、その魔法石の中でも最も魔力の強い部分──核となる部分は卒業する時に『核石』として取り出されカレッジリングとして贈られるんですよ。」
    コツンとテーブルの上に無造作に指輪が置かれる。それはネックレスと同じ色の石が嵌め込んであり、内側には学校名、卒業年月日が記入されていた。
    「その核石を取り出した魔法石は、使用方法が他に無いため、本人に返却されます。みなさんが、それをどうしているかは分かりませんが、僕はそれを再錬成しネックレスにしたんです。まぁ、お守りと思って身につけておいてください」
    そう、少し照れたようにアズールは言葉を締めたのだった。

    (私のお守り。大切にしよう)
    監督生は、そっとネックレスに触れて鏡に向かって笑う。そして、部屋着を着ようと鏡に背を向けた。
     その時、ぴちゃんっと水の滴るような音が響いた。ぴちゃんっ、ぴちゃんっとそこから何滴も水が滴る。
    (何の音?)
    後ろを振り返ると、そこには自分の姿すら歪んでしまうほど波紋を広げた鏡があった。その不思議に揺らめく鏡が光る。
     監督生は、あまりの眩しさに咄嗟に目を庇い、ネックレスの石を握りしめた。

     そして、再び目を開いた時は、見知ったオンボロ寮ではなかった。暗かった外は明るく、雀が鳴いている。オンボロ寮になかったパステル色のカーテン、柔らかなベッド。
     監督生は、弾かれたように起き上がり、凍りついた。よく見知った机。そこに飾る卓上カレンダーは4月7日。壁にかけてあるのは、今まで着ていた黒の制服ではなく、紺地のブレザーに水色のリボン、紺と水色のチェックのスカート。
     監督生は、息を呑む。カラカラに乾いた喉が変な音を立てた。
    「う、嘘…」
    かろうじて、そう言葉が溢れた。
     そこは、三年の夏にもう帰れないと学園長に言われた、元の自分の部屋だった。

    ドタドタドタっと階段を走り降り、リビングに雪崩れ込む。
    「おはよう。どうしたの、お姉ちゃん?遅刻するよ?」
    そこには、カウンターで朝食を取りながら、驚いたように目を見張る妹と、
    「おはよう。早くご飯食べないと入学早々遅刻するわよ」
    そう朝食を作る手をとめ、カウンター越しに自分を見つめる母がいた。
    ユウは、呆然としながらその場にへたり込む。母や妹は、自分を見ながら何やら言っていたが、耳に入って来なかった。そんな中、リビングにあったテレビの音だけ響く。
    ──『今日から、新学期が始まりますね…。桜が満開で…』
     
     かつんっと、呆然とへたりこむユウの手元から透明な石がリビングの床に転がり落ち、無機質な音を響かせた。
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