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    きみどり

    @kimi_0812

    かきかけ途中のログ投下場所なので、完成したものはpixivに体裁整えてまとめています。
    詳しい事はプロカを見て下さい。
    TRPGは全部ワンクッション入れているので、閲覧は自己責任。
    リンク一覧:https://lit.link/gycw13

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    きみどり

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    続・Eveにめちゃくちゃに遊ばれる回。
    凪砂くんが強気ムーブで茨に「構って!」アピしているのが書きたかった。

    #凪茨
    Nagibara
    ##底なしのこころ

    「閣下、明日のオフなんですけど……どこか、出掛けますか?」
    「うーん……たまには、ゆっくり、怠惰に過ごしてもいいのかも」
    「ゆっくり、ですか……?いやぁー……自分にはなかなか、難しいですねぇ〜」
    「……大丈夫。仕事しそうになったら、私が取り上げてあげる」
    「かなり強引というか、物理的すぎません??????」
    「……そうでもしないと止まらない、茨が悪いと思うな。私は」
    ああ言えばこう言う……!ここに殿下が居たら、更に便乗して追い打ちをかけてくるんだろう。
    「うんうん、凪砂くんの言う通りだね!」
    そうそう、そんな感じで……。
    「殿下!?それにジュンまで」
    星奏館の入口で2人に遭遇し、茨は咄嗟に身構える。自分の症状を告白したあの日に、舌戦で日和に手も足も出なくて負けた事が相当響いている様で、2歩、3歩とジリジリ下がり、最後には凪砂の後ろへ半身を隠してしまう。
    「茨……小動物感が増したねぇ。毒蛇じゃなくて、今度から蛇ちゃんって呼んであげようね♪」
    「いいっすねぇ〜。蛇ちゃん」
    「断固として拒否しますよ!!!」
    「この反応は猫だね!」
    「いや犬じゃないっすか?」
    「……茨、2人とばっかり遊ばないで」
    急に目の前の凪砂が180度回転して、抱き着いてきたので、ぐえ、と潰されたような悲鳴が茨の口から漏れる。茨の肩口に額を押し付けながら首を横に振っている姿は、イヤイヤと駄々をこねる幼児の様で、さっきまで仕事を手伝ってくれていた乱凪砂閣下と同一人物だなんて到底思えない。
    「閣下はどさくさに紛れて何言ってるんです、見てわかるでしょう???」
    「……日和くんとジュンが楽しそうでずるい」
    「急になんですかも〜〜〜〜〜」
    ぐいぐいと抱き締めてくる凪砂の背をトントンと叩き宥めながら、茨は長いため息をつく。ほんと急に何なんだ。
    「で、殿下とジュンは何の用ですか?」
    「明日から、君達Adamは1週間のお休みが与えられたね!ぼくたちは、それを伝えに来たんだね」
    「それくらいの事務連絡でしたら、ホールハンズで事足り……はぁ!?」
    「ほら、やっぱりそうなりますよねぇ〜。ホールハンズで用件だけ連絡しても、茨から鬼電かかってきそうだから、直接言いに行こうってなって、待ってた訳ですよ」
    笑みを浮かべる日和とジュン、困惑する茨。対照的な表情を交互に見て、凪砂は茨の耳元に口を寄せ、ちょっと遅めの長期休暇だよ、と囁く。
    「……ドッキリか何かですか?」
    「ううん、本当だよ」
    「罰ゲームとか……プライベートと思わせて行った先で地方ロケとか……」
    「疑り深いねぇ。まぁ、これぐらいじゃないとぼくたちのプロデュースは務まらないんだろうけどね!」
    びし、と額に日和の人差し指が突きつけられ、そのままぐりぐりと押される。表情に悲壮感は微塵もなく、茨の反応を心底楽しんでいる。
    「……茨」
    凪砂も顔を上げ、その整った眉を八の字にして、琥珀色の瞳を潤ませながら「ダメかな?」と、訴えてくる。ジュンは、と視線を巡らせると「さっさと観念して、諦めた方がいいっすよぉ〜」と、諦めの境地。そうでしたね、貴方は殿下の決めた事は絶対!というのを忘れていた自分の落ち度でした!
    「はぁ………………分かりました。存分に羽を伸ばしてきます」
    何度目か分からない深いため息をつき、茨は全面降伏を受け入れた。

    ***

    斜陽気味の財団とはいえ、その御曹司である巴日和殿下の考えを常識というちっぽけな物差しで測れるわけが無い、と茨は移動中の車内で頭を抱えていた。

    休暇を受け入れた(降伏した)茨を見て、「そうと決まれば善は急げ!」と日和はAdamの2人を輸送する為の流れを喋り始める。巴家が所有している島だとか、プライベートビーチだとか、自家用航空機だとか、あれこれ聞かされながら移動のための車に乗っている時に「経費で落ちませんからね」と余計な一言を茨が呟いた。
    動きを止める日和と凪砂。ジュンが全力で茨の後頭部を叩き、車の中に押し込んだ。
    「ちょ、痛、なにするんですか、ジュン!?」
    「人の好意につべこべケチつけずに、さっさと行ってこい!!!」

    ***

    「……茨、大丈夫だった?変な所、ぶつけてない?」
    「えぇ。問題ありませんよ、閣下」
    移動の為に乗せられた車の車内は、運転手を除けば茨と凪砂の2人だけ。見渡す限り窓は全てカーテンで閉ざされていて、現在地がどこなのか全く分からない。車が停車する気配が無いので、おそらく高速道路を走って移動しているだろうという推測くらいしか出来ない。
    運転席も仕切りがありカーテンで閉ざされているため、進行方向はやはり分からない。
    「……出発前から慌ただしくなってしまって、ごめんね」
    「…………どうして、閣下が謝るんですか」
    ふう、と深く息を吐きながら茨はシートに背中をべたりと預け、深く腰掛ける。
    「ただ、本当に……困惑しているだけなんです」
    移動してすぐに日和から電話が掛かってきて、この長期休暇が実現した経緯を全て話してくれた。強引に進めた所で、根拠や理由が分からなければ安心して休めないという茨の性格を見越して先手を打ってくるのだから本当に食えない人だ。

    『茨が頑張っているのはぼく達だけでなく、事務所の職員も周知の事実。だから、茨の長期休暇取得に関して相談したら、すんなり理解してくれたね!事務所の事は心配せずとも、君の選んだ最高の職員が揃っているんだから大丈夫!心配することはないね!』

    言いたいことだけさっさと言って、勝手に通話を切られた事を思い出し、少々苛立ちもしたが、自分の事を想って行動を起こしてくれた事実は変わらない。
    「ほんっっっっと分からないですね。自分なんかの為に」
    「……茨、また“自分なんか”って言ってる。良くないよ」
    「…………失礼しました」
    「……うん、いい子。みんな、ね……損得勘定や、見返りじゃないんだよ。貰いすぎていた気持ちを返したい、そう思っていたんじゃないかな。日和くんがいつもそんな話をしてくれたんだ」
    そんな、もんですかね……と言った茨の言葉は、音になる前に消え、意識を手放した。
    隣ですうすうと規則的な寝息をたてる相方を見て、凪砂は笑みを浮かべ自身も瞼を下ろした。
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