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    きみどり

    @kimi_0812

    かきかけ途中のログ投下場所なので、完成したものはpixivに体裁整えてまとめています。
    詳しい事はプロカを見て下さい。
    TRPGは全部ワンクッション入れているので、閲覧は自己責任。
    リンク一覧:https://lit.link/gycw13

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    きみどり

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    Dom/Subユニバースの設定を敷きつつ、以下の要素があります。
    凪砂くん年齢操作あり(12歳)、茨とジュンがアイドルしてる謎世界のパラレル。だけど凪茨。

    #凪茨
    Nagibara
    ##D/Sパロ

    奇妙な共同生活(凪茨)「七種くん、君……今は暇だったよね?」
    「訂正を要求します、猊下。あくまで自分は休止中なだけですので」
    「でも、仕事は無いよね?」
    「おっしゃる通りで!」
     天祥院英智と七種茨は睨み合ったまま、静かな攻防を繰り広げていた……と、言っても茨に攻めの一手は無い。防戦一方のため、英知に押し切られてしまうのも時間の問題だった。
    「……やれやれ、あまりこの手は使いたく無かったんだけど仕方ない。この仕事は弓「分かりました、お受けします!」
     半ば、ヤケクソな返事をすれば、「本当かい。助かるよ!」と英智は人畜無害そうな笑みを浮かべる。そんな顔でも腹の中は真っ黒なのを知ってるぞと茨は心の中で悪態をつく。
    「じゃあ七種くん、よろしくね。資料は端末に送っておくとして……」
     英智は茨の後ろに隠れるようにして立つ、真っ白な少年に声を掛ける。
    「凪砂くん、そこのお兄さんが君を守ってくれるから、安心してほしい」
     『凪砂くん』と呼ばれた少年は英智の言葉が終わるのと同時に茨の影にサッと隠れてしまう。
    「避けられてますね」
    「おかしいなぁ。子供には好かれていると思ったのに」
    「猊下の本性を見抜いているんじゃないですか?」
    「つまり、七種くんは子供に好かれる要素を持っている、と?」
    「まさか! ガキのお守りなんて今回限りにして頂けませんかね?」
    「七種くんの身の振り方次第じゃないかな?」
    「はいはいはい! これ以上話してても意味無さそうなので失礼します!」
     足早に応接室を飛び出し、廊下を2歩、3歩と進めた足を止める。180度回転し、後ろを確認する。誰もいない。
     応接室へとんぼ返りをし、扉を開ければ『乱凪砂』はじっとその場に立っていた。琥珀色の瞳には、驚きも不安も安堵も何も無い。
    「……こんな所に立ってても、英智猊下の玩具にされるだけです。移動しますよ」
     茨が手を差し出せば、凪砂は手を伸ばし握り返してくる。
    「では猊下、失礼いたします〜!!!」


     さて、天祥院英智から任されたこの少年。
     名前は『乱凪砂』。
     茨に世話を任せた理由は、今朝に遡る。


     七種茨は現在絶賛活動休止中のアイドルだ。
     相方は舞台ドラマでも活躍し俳優としても頭角を現している『ハイエナ王子 漣ジュン』。様々な番組企画の挑戦で、今は世界各国を飛び回っている。そのため、現状茨1人しか居ないユニットは、活動を休止している状態だった。
     元々、ジュンの誘いに乗ってアイドル活動をしていたのもあり、茨1人で精力的に活動するかと言われればNOだ。ぶっちゃけ、青年実業家としての仕事もあるので、アイドルをやっていなくても金には全然困らない。
     今日も今日とて、普通に学校に登校し普通に授業を受けて、普通に帰るつもりだったのだが……、登校途中に黒塗りの高級車、スーツにサングラスの屈強な男達、それに囲まれる真っ白な美貌の美少年『乱凪砂』が茨の目の前に現れたのだ。今の時代、こんな光景はドラマかドッキリのセットでしかお目にかからないだろう。
     そんな日常離れをした光景を目撃し、無視を決め込み通り過ぎようとした瞬間、何を思ったか凪砂がスーツの男達から逃げるように、ただの歩行者としてやり過ごそうとした茨目掛けて走ってきたのだ。「何でそんな行動に?」と、ギョッとしたが、追いかけて来たスーツの男があろう事かその絹のように美しい銀髪を掴もうとした。それに気付いた瞬間、茨はアスファルトを蹴って跳躍し、無礼な行為をしようとしていた男の顔面に膝蹴りをお見舞した。サングラスが割れて、ぐえ、と下品な声が聞こえた気がしなくもないが、今の顔面にお似合いなので誰も気にしないだろう。
     残りの男はあと3人。図体がデカいだけのとろくて鈍臭い奴なら相手にもならない。



     全員綺麗に道路のアスファルトと仲良くおネンネしてもらい、事情を聞こうとした所で携帯が鳴る。
    「アイ・アイ! 七種茨であります! 猊下、如何いたしましたか? えっ、一緒に居る少年を連れて事務所の応接室へ来い?」


     そして冒頭の会話に戻る。
     補足すると、スーツの男達は英智が準備した凪砂の護衛で、全員病院送りにしてしまった責任を取ってもらう意味で茨に世話を任されたという訳だ。


     回想終わり。


     凪砂の世話をしている間は、学校の出席を免除するという条件のもと、2人は指定された住所に向かっていた。
     移動の合間に英智から渡された資料に目を通していた茨は、凪砂のパーソナル情報の性別欄が併記されている事に気付き、その記載内容に深く、深く、ため息をつく。
     ダイナミクス性……か。ギリ、と歯が軋むほど食いしばり、そしてゆっくりと息を吐き出す。湧き上がる感情を呑み込んで、足を進める。

     この少年も、自分も、好んでこの性別を選んで生まれた訳では無いのだから。



    name:乱 凪砂
    age:12
    sex:male/Dom


    name:七種 茨
    age:17
    sex:male/Sub


     奇妙な共同生活が始まった。



    ***


    【共同生活1日目】
     この日は移動でほとんど時間を潰した。指定されたマンションの部屋に辿り着いたのは、18時を回っていた。腹が減るのも頷ける。
     人が来ることは想定していた様で、食材は豊富にあり買い出しに行く必要は無さそうだ。「夕食、適当に作りますよ」と凪砂に声を掛ければ、頷いたのか首を傾げたのか判断しにくい微妙な角度に頭が動く。1人分も2人分もそこまで変わらないので、多めに作って置いておけばいい。

    「食べたかったらどうぞ。お口に合わなければ、吐き出してしまって構いませんので」
     ことん、と凪砂の前に焼き飯を置く。じっと見つめるだけで、食べる気配は無い。やっぱり育ちの良いお坊ちゃんか〜と思いながら茨がスプーンを持って自分の皿に盛った焼き飯をすくおうとした瞬間、凪砂の動きを見て慌てて立ち上がる。
    「っ……とぉ! 何やってるんです! こんな出来たての焼き飯に素手を突っ込もうとするなんて、火傷しますよ!?!?」
     いったい何に対して怒られているのか全く分からない様子の凪砂に、茨は嫌な予感から必死に目を逸らす。
     とりあえず、食べられるかどうか、それをまず確認しようとスプーンですくって凪砂の口元に持っていく……あーん、と口を開けるジェスチャーをすれば、それを真似て口を開く。
     あっ、これは想像以上にヤバい。


     乱凪砂から生活に必要な食に関する能力が見当たらない。
     どうすりゃいいんだこれ。


    【共同生活2日目】
     どうやら、言葉はある程度通じるらしい。
     会話は、凪砂側が発言をしないので今の所、不可能。
     生命活動の維持をするための能力は、やはり皆無。
     部屋のソファに座るその姿は、精巧につくられた人形の様で、何をどうすればああなるのか……考えただけでゾッとする。茨自身も、皆で仲良く砂場遊び!などをしていた訳でもなく、鉄錆と硝煙、火薬のにおいに塗れた幼少期を過ごしてきたので、普通じゃない事は分かる。ただまぁ、過去の生い立ちを考えたところで今が変わる訳でも無いので、そんな思いを馳せるのはやめて現状の打開策を探る方が有意義だ、と気持ちを切り替え、英知に報告のメールを送信した。


    【共同生活3日目】
    「乱さん……凪砂さん……凪砂、くん……? どうもしっくりこないですねぇ」
    「……わたしの、なまえ?」
    「えぇ、そうです。おい、とか、なぁ、と親しく呼び合う間柄でもないので、決めていた方が困らないかな、と」
    「……わたし。あ、えと、いばら……は」
    「ん? 自分の事なら、好きに呼んでくれて構わないですよ。迷うのでしたら、先程のように『茨』と呼び捨てで構いませんので」
     上下の区別がはっきりついて、かつ高貴さを失わないような呼称……、あぁ、ひとつ、ひらめいた。
    「そうだ、『閣下』なんていかがでしょう?」
    「……?」
    「凪砂閣下。いかがです?」
    「……うん。いい、ね」
     ぎこちないけれど、今まで見た表情の中で、1番嬉しそうに笑った顔に見えた。


    【共同生活7日目】
     ……そろそろヤバい。何がどうヤバいかと言うと、色々とヤバい。精神力で抑えきれるほど、本能的な欲求は容易なものではない、と改めて思い知った。
     凪砂の面倒を見るようになってから、ダイナミクス性に付きまとう欲求の解消を色々と誤魔化しながら先延ばしにしていたが、いよいよ限界が近付いてきた。こんな事になる前に、専用のプレイルームに行くなり何なり出来たとは思うが、こんな殺風景な部屋に凪砂ひとりを残して出かけるのは気が引けた。
     体の不調は目に見えて明らかで、凪砂は時折心配そうな視線を向けてくる。
    「……そんな、目を向けてこないで下さい。自分は、大丈夫なん、で」
     何とか声を絞り出して自分の状態を伝えるが、全然大丈夫そうじゃない。こんな姿を見て、そう言われて「あっ、大丈夫なの? ならいいや」となる人物は九分九厘居ないだろう。
    「……だいじょうぶ、ちがう」
    「違いませんよ。自分は、大丈夫……です」
     大丈夫、と口にしていないと、もう心が保てない。さっきからずっと、本能が「目の前のDomに縋り付いて懇願しろ」と囁いてくる。
     浅く腰掛けていたソファを深く座り直し、背もたれに体重を預ける。じっとりと、嫌な汗が額に滲んだ。
    「……いばら、おしえて」
    「なに、を……です」
    「……『Safe word』」
    「ははっ……。年下のガキ、に教える事なんて、ありません」
     言葉を言い終えた瞬間、ゾクリと背筋に悪寒が走る。知識として学んだけれど、経験は無かった。Domの持つ力の片鱗……『Glare』。弱った体にそれは耐えきれず、俺の意識は暗転した。


    ***


    「あっ、英智く〜ん。七種くんが、目を覚ましましたよ〜」
    「ありがと……こらっ! 僕を突き飛ばしていくなんていい度胸だね。凪砂くん」
    「元気があっていいですね〜。おはようございます、気分はどうですか〜? 最悪よりかは多少マシにはなっているかなと思うんですが」
     目覚めた瞬間視界に飛び込んできたのは、凪砂の顔だった。美しい顔をくしゃりと歪め、目の端にはたっぷりと涙を湛えて、軽くつついてしまうと大粒の涙がボロボロとこぼしてしまいそうなほどだった。
    「かっ、か……。英智猊下にいじめられたんですか? 本当に、あの人は悪いひと、ですね」
    「七種くん、聞こえてるよ」
    「聞こえるように言ってますから」
     べ、と舌を出して悪態をつく。誰だよ、閣下にこんな顔させてる奴は。ベッドの上に乗り上げてきた凪砂は、そのまま茨の腹の辺りにぎゅうと抱きつき、顔を伏せてしまった。
    「ええと、つむぎ陛下……? どうして貴方までここに居るんですか?」
    「俺は英智くんに呼び出されただけで、あんまり詳しいことは聞かされていないんですよねぇ」
    「まぁ、つむぎは今回の事情には関与していない。というより、僕が非力だから手伝ってもらいたくて適当に呼んだだけなんだ」
     寝室に寝かされた茨、そのベッドの上でうずくまる凪砂、ベッドの横に椅子を持ってきて横に座る英智とつむぎ。奇妙な4人が揃ったなと思い、茨が口を開く。
    「えー、とりあえず……、自分の状況を教えて頂けますか? 猊下でも陛下でも構いません」

     いつも決まった時間に茨から届く日報のメールが届かなかったことに違和感を覚え、英智はここに来たと話す。移動中に電話を掛けてみても茨はおろか凪砂も出ないので、非常事態だと判断して、つむぎに連絡を取ったらしい。閣下が電話を取るなんてこと、まず、しないでしょうね。
     そして、部屋に来てみると気絶した茨を前にパニックに陥っている凪砂が居た。茨をベッドに運び様子を見ていたら、目覚めて今に至る。という事らしい。
    「ふむ……、本当の事を言ってますけど、伝えるべき事を全て話してませんよね」
    「……」
    「沈黙は肯定とみなしますよ」
     更に詰め寄ると、英智はわざとらしく大きなため息をつき、口を開く。
    「やれやれ、本当に意地が悪いね、君は。……七種くん、今の君の状態を表すなら『Sub drop』だよ」
    「は……?」
    「どんなPlayをしていたのかと身構えてたけど……、その様子と状態から、本能的な欲求が解消されていない事が原因みたいだね」
     倒れるのが当たり前の様に語られ、どれだけ自分が葛藤してきたと思っているんだと心の内で吠え、下唇を噛み締める。
     結論から言えば、茨の自己管理が出来ていなかったという話として英智はまとめる。
     DomとSubの間に生涯を共にするパートナーという契りはない。(永遠の契りを行い、パートナーでしか互いの本能的な欲求を満たすことが出来ない種もあるらしい。)かと言って、誰でも良いという訳でもなく、一定水準以上の信頼関係を築かなければお互いの欲求を満たせない。
     勿論、ダイナミクス性は今の世の中、第二の性と位置付けられているため、本能的な欲求を満たすまではいかないにせよ、軽度の欲求解消のためにPlayを受けるのは、マッサージやリラクゼーションを受けるのと同じレベルで浸透している。
     それでも馴染めない人は一定数存在しており、茨もその中の一人だった。幼少期に育った環境、そこから自力で会社を立て直し、アイドルと経営者の2つの顔を持つ茨に、心を休める場所は存在しなかった。唯一、ユニットの相方であるジュンと過ごしていた時だけは違っていたが、同じSub同士、傷の舐め合いのような行為にしかならなかった。そのジュンとも暫く会っていない為、茨の本能的な欲求はどこから手を付けていいのか分からないほどに膨れ上がっていた。
    「……いばら?」
     暫く会話が無いことに不思議に思ったのか、凪砂が顔をあげ、茨の顔を覗き込む。2人に見られないようにと伏せていた所為で、閣下には丸見えじゃないですか。やだなぁ……。
    「あぁ……、閣下。目が真っ赤じゃないですか。後で冷やしておきましょう」
    「……そんなかおを、する、させるのは、だれ?」
    「おっと。閣下、落ち着いて下さい」
    「……きみを、いじめるひと、だれ」
     また、だ。ぞわり、と悪寒が走り背筋が震える。呼吸が乱れる。苦しい。何を感じて不機嫌になっているのか分からないが、これが繰り返されるのは身体に毒なのはハッキリと分かった。
    「かっ、か……ちょ、っと、落ち着いて、ください……」
    「おやおや、困った子だ。凪砂くん、七種くんを心配するか、僕に怒りをぶつけるか、どちらかにしないと、また七種くんが倒れちゃうよ」
    「……ッ!」
    「猊下!」
    「ちゃんと渡した資料を見たかい? 凪砂くんは幼いながらもDom性のコントロールにとても長けている……稀有な存在なんだよ。あぁ、これ以上黙っていると、七種くんにあらぬ誤解を持たれそうだから、はっきり言っておくね。僕は凪砂くんを所属アイドル達のPrayの相手をして欲しかっただけなんだよ。自制がきいて、器量もいい、あとは社会性を知らず、無垢で扱いやすそう……だと思っていたんだけどね。最初から逃げられちゃうし、七種くんに懐いちゃうし、君にべったりで……今だってずーっと『Defense』で威嚇されてるんだよ?」
    「は、『Defense』って、何……?」
    「それは自分で調べてみてよ。ともあれ、凪砂くんがその調子じゃ、僕が考えていた運用は出来なさそうだし、また他の方法を考えないとねぇ。あ、この部屋は今まで通り使ってていいから」
     自分の言いたいことを全て吐き出し、英智は立ち上がり、部屋を出ていった。「あ、待って下さい。英智くん!」と言いながらその背を追うようにつむぎも部屋から出ていく。残された2人……というより、茨は複雑な表情で凪砂を見る。未だ険しい表情で部屋の扉を見る凪砂。その手に力がこもり、ぎゅうと茨の服を掴む。
    「ええと、閣下……?」
    「……もう、いった。いばら、いたくない?」
    「まぁ、はい、そうですね」
     その答えを聞いて、凪砂はぐーっと自身の上半身に体重を乗せ、茨の体を押し倒す。
    「……よかった。よかっ、た」
     そのまま静かな寝息が聞こえてきて、「あ、寝落ちた」と思ったが、これじゃ自分が身動き取れない。仕方なく、結局自分の上で寝かせたままにしておいた。
     まだ本調子じゃないから、移動させようと抱き上げて落としたりすると大変だからそのままにしておいただけだから。別に、寝ている閣下の重さが存外心地よかったりとかそういう事じゃないから。誰に言い訳しているのか訳が分からなくなってきたが、結局ベッドから動けないので、枕元に置いてあったスマートフォンを手に取る。
    「ええと、猊下が言ってたの、『Defense』だっけ……えぇと……ちょ、え、はぁ……!? なっ、『Defense』って、そうい、うえぇ……?」

     あっ、これは想像以上にヤバい。
     何か俺、乱凪砂に「自分のSub」認定されたっぽい。

     どうすりゃいいんだこれ。
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