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    ※れおはる(付き合ってる)

    昼食の場で課題をするれおはる小説 大学の課題が終わらない。
     店内に流れている軽快なBGMとは裏腹に、礼音の気持ちは焦っていた。
     以前にもフェスに力を注ぐあまり、出席日数稼ぎや課題提出に追われたことがあった。それ以降は同じ失敗を繰り返さないよう適度に学業にも取り組むようにしていたのだが、今回は複数の講義で課題提出の時期が重なり、予定が狂ってしまった。
     それも目の前の相手に言わせれば『ギリギリで終わらせようとするからだろ』とのことで容赦がない。まったく正論でしかないのだが。

    「二条が来るまでには、終わらせるつもりだったんだ……」

     某ファーストフード店の一角で、申し訳なさいっぱいの言葉を呟く。
     テーブルの上には必修科目である英語のテキストとノート。一応注文だけでもしておこうとトレイに乗せた飲み物とフライドポテト。
     それを挟んだ向かい側で、ストローをくわえた遥がじっと礼音を眺めていた。
     ズーっと飲み物を啜っているその視線は、どこか呆れている。それはそうだろう。本来この時間は遥と食事をするつもりで空けていた時間だ。レポートではない英語の課題なら、遥が来る前に終わらせられるかと少し早めに来ていたのに、結果は半分しか終わっていない。
     
    「だから、それはいいって。明日提出なんだろ」

     そう言う遥は、どちらかというと明日提出の課題を今焦ってやっていることに呆れているようだった。どうやら宿題はコツコツ取り組むタイプらしい。遥のことをある程度知った今は、そう意外でもない話だ。
     ただただ、自分自身が年上として不甲斐ない。
     今夜はジャイロアクシアのスタジオ練習が入っていることもあり、今できるならそれにこしたこともないという状況も含めて。

    「……本当に悪い。すぐ終わらせる」

     そうシャーペンを握り直して、テキストと向き合う。
     あとは複数行にまたがった英文を日本語訳する、機械的にでもできそうな課題だけだ。きちんと集中して、一刻も早く終わらせなければ。
     そう意気込んだところで「なあ」と遥が声をかけてきた。

    「先に食ってからやれよ。冷めたらうまくねえだろ、それ」
    「いや、おまえのこと待たせてるから」

     確かに冷めたフライドポテトはあまり美味しくない。しかし、遥を待たせておいて、悠長に食事をしながら課題を進めるのもどうかと思う。
     そんな風に言葉を返して英文に目を通し始めると、唐突にその視界へフライドポテトが現れる。なにかと思い視線を上げれば、遥が揶揄うような笑みで、抓んだフライドポテトを差し出していた。
     ん、と言って、食べるように促してくる。

    「……店の中だぞ」
    「誰も見てねえし」

     そう悪戯っぽい声色で言う遥。
     言われてみれば店内の席の埋まり具合はまばらで、他の客から見ても遥の動きは死角になって見えなさそうだった。きっとそうでもなければ、遥がこんな提案をすることもないだろうが。
     それでも店内でと言われると、どうにも気恥ずかしい。
     にまにまとそれを眺めている遥は、完全に礼音の反応を面白がっていた。
     けれど、今日はそもそも課題を持ち込んできた自分が悪い。
     それくらいの遊びには付き合うことにして、差し出されたポテトを口に入れてもぐもぐと咀嚼する。その間にノートへシャーペンを走らせると、すぐにポテトが差し出された。おかわりのペースが速い。
     ちらりと視線を上げれば、遥が満足げに目元を緩めていた。
     その表情に弱い。差し出されたものを口にくわえて咀嚼して飲み込んで、その間にまた次が差し出される。一応課題を進めながらも、延々とポテトを食べさせられ続けて、そろそろ呑み込みが追い付かなくなってきた。

    「……もう少しペース、落としてくれ」

     なんとかごくりと胃に収めてから、楽しそうな遥に視線を向ける。
     あまりその気はなさそうな表情で「食えるタイミングで食えばいいだろ」と言われたが、それはそれで待たせているような気がして落ち着かない。そう言っている間もポテトを食べさせようとしてくる年下の恋人に、諦めて口を開こうとした時だった。
     遥が唐突にぴくりと肩を跳ねさせて、慌てて持っていたポテトを遥自身の口に入れる。
     むっとしたその表情に、思わず「どうした?」と尋ねた。

    「……客、来たからやめる」

     ぽつりと呟くと同時に、遥が言った通り他の客が隣の席へとやって来た。
     足音か話し声かを聞いて、咄嗟についさっきまでしていたことを隠そうとしたらしい。その慌て方が少しおかしくて、ふっと笑ってしまう。自分以外には見られたくないのかと思うと、どことなく可愛くて嬉しい。
     そんな視線に気づいてか、遥が仄かに顔を赤らめて眉を寄せる。

    「……さっさと課題終わらせろ」
    「おまえがじゃれてきたから、止まってたんだよ」
    「じゃれてねえ、からかってただけで……」

     むすっとした口調で遥は言う。
     けれど、そうやってからかってくる時こそなにか反応を求められている気がする。はじめは慌てて課題をしている自分に呆れているだけかと思っていたが、そういうわけでもなかったのだろう。

    「悪いな。もう少しだけ待っててくれ」
    「…………」

     そう視線を交わらせて言うと、遥はその場で大人しく「……ん」と声を溢して、耐えかねたように目を背けた。
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    DONEハピエン前提で、愛する女に嫌われ逃げられてる七海が好きな人にオススメの話です。
    七海の出戻りが解釈違いな元カノの話 1呪術師としての物心がつく前から七海はそばにいた。七海は、私が二年の時に入学してきた。彼のことは大好きだった。彼も実は私のことが好きだったと判明して、学年が上がる前に付き合い始めた。そこからずっと、灰原が亡くなっても夏油が離脱しても、ずっとずっと七海のそばにいた。七海がいない人生なんて考えられなかった。だからこそ、私は高専卒業と共に呪術師を辞めようとした七海を必死で引き留めた。七海に地獄を味わわせ続けるとしても、そばにいてほしかった。当時高専を卒業して一年目だった私は、七海がいない人生が考えられなかった。

    七海は誰よりも何よりも心の支えだった。支えを失った自分がどうなるのかなんてわからなくて、七海がいない人生なんて考えるだけで背筋が凍るほど寂しくて、時には冷静に時には情けなく泣きじゃくりながら説得したけれどまるで効果がなかった。七海は七海で、私をこの地獄から連れ出そうとしてくれた。お互いにお互いを熱く説得しあって、険悪にもなる日もあったし見えない心を身体で分かり合うように貪りあう日もあった。大きな紆余曲折を経て、結局私は七海と共に過ごす人生よりも、この地獄で支えを失ったまま生きる道を選択してしまった。
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