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    ※未来の話
    ※美園が一人暮らししてる
    ※付き合ってる半同棲状態れおはる

    半同棲れおはる(休日の三度寝の話) なんとなく、やる気が出ない日というものがある。
     前日に何かあったわけではない。昨晩はそこそこの時間に就寝した。夢見が悪かったわけでもない。ただ本当に『なんとなく』としか言いようのない気怠さのせいで、朝の目覚めがすこぶる悪い日がある。
     週末土曜日の午前九時半。
     ベッドで目覚めた今この瞬間が、遥にとってのそれだった。
     意識はぼんやりとしていて、まだ目を開けたくない。瞼を開けることすら億劫だった。自分の体温で温まっている布団と慣れた匂いや柔らかさだけが心地好い。
     日差しが漏れているカーテンから背を向け、ベッドに体を沈めたままうだうだと時間を過ごす。
     昨晩泊めてくれた部屋の主は、きっと一時間ほど前に目覚めている。隣で寝ていたはず姿はどこにも見当たらないが、扉を隔てた隣の部屋から微かな物音が聴こえていた。
     今日予定がないことを知っているから、起こさないように過ごしてくれているのだろう。隣で体を起こす気配がして一度目覚めかけた時も、べつに合わせて起きなくていい、と言われた気がする。

    「んー……」

     寝ていたい気持ちと、寝ていてもいいのかという気持ちで三度寝ができない。
     さすがに十時を過ぎれば声をかけられるだろうが、それまでぐだぐだしていていいものか。
     なにも小言を言ってくるタイプではない。起きるのが遅いというだけで呆れたりイラついたりするタイプでもない。そうわかっていても、なんとなく『いいのか』ということは考える。
     良くはないと思う。
     眠いものは眠い、怠いものは怠いと開き直ることはできるが、良くはない。少なくとも洗濯はもう済ませてもらっている気がする。面倒だからやってもらっていた方が楽――という本音はあるにしても、居座っているなら相応のことはするべきだと思う。
     このまま寝ていていいのか。
     そろそろ起きて洗い物のひとつでもするべきか。
     面倒だからしたくはないけど、それがふたりで生活をするということだとは思う。
     でも眠い、怠い、動きたくない。

    「うー……」

     起きなければ。
     でも、あと十秒だけ待ってほしい。
     頭の中で十を数えながら、なんとか起き上がろうとベッドの上でうだうだと寝返りを打つ――つもりが、頭を落ち着けるはずだった先がふっと消え失せる。
     驚いて目を開けた時には、鈍い落下音と同時に床へ頭を打ち付けていた。

    「……いっ、てぇ」

     随分と端で寝ていたらしい。
     それに気づかず寝返りを打とうとして、ベッドからずり落ちたようだった。頭から落ちたせいで視界が逆さまになっている。ぶつけた場所はずきりと痛むのに、まだ眠気は抜けきっていない。
     そのまますぐに動かなかったせいか、閉じていた扉がそっと開いた。

    「二条どうし――」

     物音を聞いてやって来たらしい礼音が、寝室の様子を見て目を丸める。
     見られた。ベッドから落ちて逆さまになっているような、バカみたいな姿を見られてしまった。醜態を散々晒している相手とはいえ、羞恥心は十二分に残っている。
     慌てて体勢を整えようとして、中途半端にベッドに留まっていた下半身まで床に打ち付ける羽目になった。痛みはひとまず横に置き、礼音の顔を見ないようにのそのそと起き上がる。

    「……えっと、怪我してないか?」
    「……ない」

     様子をうかがうような声色が、余計にいたたまれない。
     今更礼音の前で恰好をつけようなんて思ってはいないけど、さすがに少しどうかと思う。ひとりぐだぐだとベッドで過ごして、そこから落ちて心配されるなんて。
     こうなると変に誤魔化す方がださい。
     ぐっと口をひとつに結んで顔を上げると、当の礼音はやけに優しい顔で目元を緩めていた。

    「……なに笑ってんだよ」

     その顔をじとりと見上げると、「悪い悪い」と笑み交じりで返される。

    「おまえも寝ぼけてベッドから落ちること、あるんだな」
    「…………」

     どう返事をしろというのだろう。
     そうはっきりと言葉にされると、なおさら間抜けに感じる。でも実際そうでしかないのだから、否定もできない。仮に否定したとしても、今の礼音はそうかそうかと余裕で頷きそうな雰囲気すらある。正直、それが一番堪える。

    「あるだろ、そういうことも」

     うぐっと言葉に詰まりながらも、辛うじてそんな返事を絞り出す。
     対する礼音は、それはそれで「そうだな」とにこやかに笑うものだから、逆に腹が立ってきた。なにがそんなに面白いのか意味がわからない。べつに面白がって笑っているわけではないとわかっていても、そんな風に言いたくもなってくる。そんな目で見るな。
     ――と怒り出すのはさすがに理不尽すぎるので、遥はむっと口を閉じて今度こそ立ち上がった。


    「顔洗ったらコーヒー飲むか?」
    「…………飲むけど」 
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