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    サーモン

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    サーモン

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    バーン様の前でキッスするだけのノヴァロン♀です。
    アニメ派の方にはネタバレ注意

    ※先生が女体化してるのはただの趣味で深い意味はないです

    バーン様の前でキッスするだけのノヴァロン♀ 天地が揺れる。雷鳴が青白く光り、地は奥底から震える。地響きと落雷の音の中、皆が空を見上げる。忌まわしく鎮座する空飛ぶ迷宮。大魔王の脅威は、下界で見守るしかないノヴァたちにも肌がひりつくほどに肉迫して伝わってくる。

     思わず狼狽えて師に目をやると、彼女はじっと空を睨んでいた。寡黙な師は何も言わない。けれどその瞳に宿る強い光が、ノヴァを落ち着かせていく。
     師の泰然とした様子を見て、ノヴァは大きく息を吸った。それからゆっくりと吐き出した。どのみち自分にできることは、ダイ達を信じて地上で待つことだけなのだ。そう言い聞かせていると、突然高い叫び声が聞こえる。エイミに傷ついた体を預けていたメルルが突然起き上がり、震える声で叫ぶ。
    「みなさん、ここは危険です――!」
    ノヴァたちが振り返ると、メルルは真っ青な顔をしてとにかくここから早く離れるように訴えている。一瞬皆狼狽したが彼女の言葉に従い非難の準備を始める。

    「――みんな、早く瞬間移動呪文が使える者の元へ集まるんだ!」

    彼女の尋常ならざる様子であれば一刻を争う事態なのだろう。走って逃げたのでは間に合わないかもしれない。二手に分かれてフォブスターとノヴァの元へ駆け寄る。一度に運べる人数には限界がある。何度か往復しなければならないだろう。

    「先生も早く――」
    「オレはあとでいい。先に行け」
    「……っ、わかりました、すぐ戻りますから。――ルーラっ!」

     最初に女王陛下たちを、次に兵士たちを運び、最後に師を抱えて詠唱を唱える。どうにか皆のいる山の中腹まで逃れると。気がせいていたのか着地がうまくいかず、身体が地面に投げ出される。とっさに師の身体を受け止めると、手のひらに柔らかいものが触れる。

    こんな非常時なのに、うかつにもドキリとした自分が情けない。

    「おい、いつまでくっついているつもりだ?」
    「す、すみません!」

     問われて慌てて手を離す。どうにも格好の悪いところを見せてしまったが、気を悪くはしていないようだった。からかい交じりに笑う師を抱き起すと、背の後ろから轟音が鳴り響いた。すさまじい閃光とともに大地が大きく振れ、足元が崩れたような錯覚を覚えた。弾かれるように振り返ると、そこには天高い塔が立っていた。槍のようにも見えるそれは、不気味にそびえたっていた。

    「……なんなんだ、あれは」
    「あれは黒の核、魔界の超爆弾です。あれをどうにかしないと、世界が終わってしまいます!」

    メルルの口から語られる事実に、皆が驚愕する。彼女が順を追って説明している間に、皆は顔を見合わせた。

    「ではこのままだとこの大陸どころか、世界の全てが消し飛んでしまうということですか?」
    「時間がないんです、早くなんとかしないと――」
    女王陛下が問いかけると、メルルは必死に訴える。みすみすあきらめる気がないのは彼女をはじめ、ここの誰しもが同じだった。けれども実際に、どうやってそれを食い止めればよいのかわからない。

    頭をひねる皆の前に師が進み出た。一斉に視線が彼女に集中する。

    「オレに考えがある。一緒に来い、ノヴァ」
    返事を待たずに背を向ける師に慌てて駆け寄り、ノヴァはもう一度詠唱を口にした。

     

     塔の頂上に鎮座している黒い核と呼ばれる物体は、禍々しい光を放っている。師と爆弾を交互に見ながら、ノヴァはその傍らに立つ。
    「ノヴァ、これを凍らせろ。オレの推測が正しければ、いかな魔界の超爆弾といえど爆発はしないはず」
    「で、でも」
    ノヴァのこめかみに冷や汗が流れる。万一の可能性が頭をよぎり決心ができない。
    「大丈夫だ。オレを信じろ」
    「……っ、わかりました!」
    迷っている時間はない。ノヴァは急いで両手を広げて呪文を唱える。徐々に凍り付いていくそれを、師は注意深く観察している。魔力を放出し続けると、それは完璧に凍り付いた。
    「よし、見立て通りだ。これなら爆発はしないだろう」
    安堵の息を吐き出した瞬間、空から禍々しく響く笑い声が聞こえてきた。

    「――ロン・ベルクよ」

    声だけなのに圧倒的な威圧感を感じる。これがダイ達が戦っている相手なのか、とノヴァは息を呑んだ。

    「……バーンか」
    「お前も酔狂なことだ。我の元から離れたと思えば人間どもに肩入れしているとはな」
    嘲笑うかのように言う大魔王に対し、ノヴァは身構える。

    「惜しいな、余はそなたを気に入っておる。人間共と死なせるにはあまりに惜しい。どうだ、もう一度我が元へ戻ってくるつもりはないか?」

    まるで幼子を諫めるような口調で、いかに人間達が無駄な悪あがきをしているかをとうとうと語る。地上には今六本の柱が落とされて、それの爆弾をすべて停止させねば地上は滅ぶ。そして師だけならば助けてやってもかまわないと持ち掛ける。

     大魔王の甘言が師に届くわけがない。そう信じているのに、思わず師の顔を見つめてしまう。

    「ノヴァ、お前今どんな顔でオレを見ているかわかるか?」
    「え?」
    「縋るように見なくても、オレの答えは一つだ」

     師は目を細めて穏やかな笑みを作る。師のらしくない行動に戸惑ったが、ノヴァは小さくうなずいて見せた。

     ――大丈夫だ。自分の知っている師は誰よりも気高く、決してこんな奴の誘いにのったりしない。

     すると、上空から再び大魔王が問いかける。

    「貴様が許しを乞えば余の妻にしてやってもいい。それとも、よもやその人間の小僧にでも惚れたのではあるまいな。それとも、その小僧から言い寄られて少し遊んでやったのか?」
    「――っ、きさま!」
    嘲笑まじりに放たれた言葉に、思わず声を荒げる。自分の邪な気持ちを見透かされたようで、ノヴァはカッとなって柱から身を乗り出そうとした。

    「よせ、ノヴァ」
    「どうした、よもや本当にその小僧に惚れたか」

    その嘲笑に師はおもむろに天を仰ぎ、いつもと同じように泰然と言い放った。

    「――だったらどうする?」
    「……なに?」
    大魔王がわずかに動揺を見せた。少し間をおいて、笑い声が響き渡る。

    「――ふっはは!面白い、実に面白いぞ!よもや魔界の名工と謳われる貴様がそのような冗談を」
    「冗談ではないさ」
    師の整った顔がおもむろにノヴァに近づいてくる。そして柔らかいものが唇に押し当てられた。
    「んっ!?」
    口づけされているのだと理解するのに数秒かかった。混乱する頭の中で、ただ心臓だけがうるさく脈打っていた。師の外套を握り締めると、目が細められて口づけが深くなる。ぬるりとしたものが一通りノヴァの口腔を這いまわったかと思うと、ようやく解放される。師は、不敵に笑っていた。

    「――お前に仕えたのはオレの人生の過ち。二度とごめんだ。生き恥を晒すくらいならオレは気に入った人間達と、惚れた男と運命を共にするさ」

    師の答えを聞いた途端、全身の血が沸騰するような感覚に襲われ、ノヴァの顔が赤く染まった。

    「愚かなりロン・ベルク。まさか余を差し置いて取るに足らない人間の小僧などを選ぶとはな」
    「ふん、貴様には一生理解できまいよ」
    師は吐き捨てるようにそう言った。呆然とするノヴァに、師は「おい」と声をかける。

    「えっ、はっ、はい!」
    「聞いていただろう、早く他の連中のところに戻って残りの柱を凍らせる算段を考えるぞ」
    「わ、わかりました」

    頬から熱が引かないままに、師の腰に手を回す。ぎこちなく体を寄せると、頭上から喉奥で笑うような音がした。

    「明日の太陽を無事に拝めたら、続きをしてやる」
    「……っ!!」
    耳元で囁かれた言葉に、思わず体が跳ね上がる。
    ノヴァは目を見開いて硬直した。それからしばらく経ってから、ようやく言葉を絞り出す。
    「……約束ですよ、先生」
    師が力強く首肯したのを見て、ノヴァは詠唱を紡ぎ、光の矢となって仲間たちの元へ飛んだ。
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