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    o-tukiピニャコラーダ

    @0_tuki_ika

    イカだったり版権だったり雄っぱいだったり。

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    POIPOI 49

    ふたりだけの秘密を共有して仲良くなった海とハン。

    ##モンハン

    海+ハン♂ ウナバラという名の駆け出しハンターはエルガドに来たばかりのハンターに対して、興味よりも対抗心を抱いていた。そしてその感情のまま、自分勝手に話しかけていた。此処での暮らしは自分の方が長いのだとか、自分が先に実績を上げるのだとか。海の向こうの小さな里から来た『英雄』と呼ばれる田舎者よりも、自分の方が優れているのだと見せつけるように、何かと張り合ってきたのだ。そんなウナバラに対して当のハンターから返ってきた言葉が「そうなのですね。よろしくお願いいたします」という、なんとも素っ気ないものだったのだから気に入らない。本人はウナバラの気持ちに全く気付かないのか、澄ました表情を一切崩さなかった。そしてあろうことか憧れのフィオレーネの隣に堂々と立っているのだから余計に腹が立った。体格は恵まれているのかもしれないが、実力は此方が圧倒的である事をハンターにもフィオレーネにも証明する為、ウナバラは早速クエストボードに貼り出された依頼書達と睨み合いを始めたのだった──。
     そうして数日が経った日の夜、ウナバラは後悔していた。『英雄』と呼ばれているだけあってハンターの実力は本物だと痛感したからだ。彼が受けるクエストは全て高難易度なものばかりで、彼の実力に見合ったもので間違いはないのだが、そのどれもが此処エルガドや王国に対する脅威を取り去るものばかり。そんな大役を任せられている彼にウナバラが張り合ってみても勝てるはずがないのだ。それは最初からわかっていた事ではあったのだが、どうしても諦めきれずに足掻いてしまった己が恥ずかしくて仕方なかった。
     己を恥じて眠れぬ夜を過ごしてしまう程に思い悩んでいたウナバラは、頭を冷やす為に波止場に向かい、そこで先客を一人見つけた。昼間は船乗りのルアンが釣り糸を垂らしている場所で、ハンターが足を垂らして座っていた。普段履いているブーツから解放された足を伸ばし、満ち潮で上昇した海面を爪先で撫でている様子は、普段の淡々と狩猟をこなす彼とは違い幼さが見えた。その姿にしばらく見惚れ、いつしか足は自然とハンターの方へと向かい、それに気付いた彼が驚くのも無視して直ぐ側からその顔を見下ろしていた。思い詰めた表情で睨む様に見下ろされれば困惑するのも無理はない。それでもなお無言を貫くウナバラに痺れを切らし、ついにハンターの方が口を開いた。
    「どうかなさいましたか?」
     落ち着いた声色で問いかけられれば思わずウナバラの肩が跳ねる。自身でもどうしたのかと思う。だが今迄の事を謝罪するには今しか無いと思い、意を決してその旨を告げた。深々とこれでもかと頭を下げた。しかし一向に返事はなく、不思議に思ったウナバラは恐る恐る目線を上げていく。するとハンターは眉を八の字に下げて困ったような表情を浮かべながら首を傾げていた。言葉の意味を理解していない様子の彼を見て、まさかという思いが込み上げ事のあらましを説明すればようやく理解したらしく、納得するように何度か小さくうなずいていた。自分で自分の恥を説明すると言う行為に胸の奥が、ずきり、と痛み、それがまた情けなくて泣きそうになったが、それよりも今は謝罪をする事が優先だと思い、再び深く頭を下げる。
     だが、そんなウナバラに対してハンターも頭を下げた。何故、と問えば再び困ったような表情を浮かべ言葉を探している様だった。
     どんなに強者で『英雄』と称されても、物静かなハンターは人の往来や喧騒の賑やかさはあまり得意ではなかった。月の光に照らされて銀に瞬く海面が、優しく浜を撫でては戻る。その音だけが響く静かな海が好きだった。ただ静かに、波の音と自分の心音を聴きながら海を見つめる時間が、彼にとって至福の時間であり、一番の安らぎであった。だが決して人を相手にするのが嫌な訳ではなく、話を振られた時、巻き込まれた時、どういった反応をすれば良いのかわからず言葉を失うだけなのだ。特に、太陽の光を反射させた煌めく海面のような若者に勢い良く声をかけられれば尚更だった。
    「……俺が、もっと、気の利いた事でも言えれば、良かったのでしょうが……」
     そう言って言葉を詰まらせるハンターにウナバラは慌てた。違う、と何度も否定する。勝手に対抗心を燃やして失礼な態度を取ったのは自分であり、口下手だったのが悪いのだと伏し目がちになる彼を責めたい訳ではない。たった数日しか彼の活躍を耳にしていないウナバラだったが、彼と自分の実力の差をまざまざと見せつけられ、対抗心は嫉妬心へと変わり、そしてそれも最後は憧れへと変わっていった。彼はウナバラが想像していたよりもずっと強く、また、想像していたよりもずっと謙虚であった。皆に認めて貰いたくても実力が伴わず、悔しくても誰にも相談出来ず、悶々として眠れない日々が続いていたそんな時に、後から突如『英雄』がやってきて皆に期待の眼差しを向けられているのを見てしまったら、醜いと心では理解していても対抗せずにはいられなかったのだ。
    「君みたいになりたかった。……それだけなんだ」
     ぽつり、と零れた本心にウナバラ自身が驚いたが、一度吐き出してしまえば止まらなかった。気付けば堰を切ったように溢れる涙に視界が滲み、俯いて顔を隠せばハンターの足が見えて、慌てて手の甲で目を擦っては涙を止めようと躍起になった。その時、不意に頭に何かが触れた。それは少し暖かい掌の感触。驚き顔を上げればすぐ目の前にハンターの顔があり、その手がウナバラの頭を優しく撫でていた。まるで赤子をあやすような手つきに、自分が今何をされているのかを理解するのが遅れた。だが理解してしまっては、もう我慢出来なかった。夜で屋外だと言うのも忘れ、ウナバラはハンターに縋り付いて思い切り泣いた。その背を撫でるハンターの手は、やはり暖かかった。

     翌日、チッチェ姫を中心にアイルー達が「夜中にオバケの声を聞いたニャ!」と話している側を通ってしまい、ウナバラは思わず肩を跳ねさせる。少々わざとらしく咳払いをして何でも無いと装いながら茶屋に行けば、ハンターが居たので再び肩を跳ねさせた。昨晩の事を思い出して顔が熱くなる。ハンターはと言えばウナバラに気付いたのか振り返ると小さく頭を下げた。つられてウナバラも頭を下げ、なんとなくハンターの隣へ腰掛けた。
     座ったもののオバケの話に盛り上がるアイルー達が気になり、チラチラと横目で見ていると、隣から小さく、くすり、と笑う声が聞こえて振り向いた。ハンターは口元に手を当てて申し訳なさそうに小さく笑っていた。その仕草に胸がどくりと高鳴る。
    「ご安心を。誰にも申しておりません」
     申しておりません、とは、昨晩ウナバラがハンターの胸を借りて泣いてしまった事を指していた。夜中とはいえ屋外でかなりの声を上げて泣いてしまい、しばらくして落ち着いてから、誰かに聞かれてしまったのでは、と途端に恥ずかしさが込み上げてきた。ハンターがこの事を誰かに言いふらす様な人柄で無い事は、まだ僅かしか交流していないウナバラでも分かってはいたが、余程不安げな顔をしていたのかハンターは安心させるように頭を撫でながら「俺と貴方の秘密です」と言ってくれた。
     その時はあの言葉に救われたが、今になって考えればとんでもない事を言わせてしまったのではと羞恥で顔が火照る。だが不思議と悪い気はしなかった。何せあの『英雄』とふたりだけの秘密なのだから。
     ようやくアイルー達が解散し、胸を撫で下ろしたウナバラはハンターの側に椅子ごと身体を寄せた。
    「なぁ、ルナガロンて実際どんなモンスターだった?」


    おわり
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    o-tukiピニャコラーダ

    DOODLE狩猟が怖いメジロくんの話。まだハン♂ウツじゃない。
    You are my Sunshine.2 寒い。寒冷群島なのだから当たり前だろう、とメジロは首を亀の様に縮こませながら震えていた。おまけに時間は夜間。冷え込みも当然である。
     だがそんな寒さや暗さなど、メジロにとってはどうでもよかった。
     ──早く帰りたい。
     ハンターとして活動を始めてそろそろ半年になるが、独りでの狩猟はまだまだ怖かった。完全に独り、という訳ではない。オトモのアイルーとガルクも一緒であり、なにより、メジロの武器は操虫棍だ。使役する猟虫の存在も有難かった。
     見習いを卒業してすぐは師であるウツシがクエストに同行してくれていた。もちろん、ウツシのオトモのデンコウとライゴウも一緒だった。クエストにまだオトモを同行させられないメジロに二匹を貸し、一緒に戦ってごらん、と優しく教えてくれたのだ。そして実際に二匹の動きを見ていて驚いた。ウツシと数々のクエストをこなしてきたのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、メジロが武器を構えてわたわたしている間に、数匹のイズチをあっさり討伐してしまったのだ。ウツシは一緒に戦った事を褒めてくれたが、実際あの場でメジロが出来た事なんてほとんど無かったと言っても過言ではない。今思い出しても、その情けなさに涙が出そうになる。自分なんかが戦わずともオトモが全部やってくれるのではないか?そう考えるようになってしまっても仕方ないだろう。
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