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    ふうこ

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    ふうこ

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    対アテナ。書きかけ。

    サビクの導き「それじゃ、また明日。」
    「お疲れさまでした!」
    固定メンバーが次々と通話から抜けていく様子を見送り、
    最後の一人がいなくなったと同時に、イヤホンを外して椅子の背にもたれ掛かる。
    「今日もダメだったか…。」
    4層の後半に突入出来たまでは良かったが、
    エクピロシスからパンゲネシスまでの間に死者が出ることが多く、
    なかなかその先のギミック練習を行えない状況にあった。
    しかしここで腐っても仕方がない。
    それよりも俺は、倒すべき対象であるアテナに興味津々だった。
    前半の神々しさも良かったが、後半では閉じていた瞳が開き、
    感情をむき出しにして向かって来る様がなんとも可愛らしい。
    固定メンバーには言い出せないが、
    こういう拗らせた女性キャラクターには目が無い性分だ。
    ふと時計に目を遣ると、いつの間にか就寝時間を指している。
    「やべ、明日も仕事だし寝るか。」
    そう独り言ち、俺はベッドに潜り込んで目を閉じた。

    「起きなさい。あなたが呼んだのでしょう?」
    深い眠りに落ちていた俺の意識に、何者かの声が響いた。
    けれど、どこかで聞いたことがある声だ。
    小さく呻きながら、ゆっくりと目を開けた俺の視界に飛び込んできたのは、
    間違いなく先ほどまで対峙していたパラス・アテナの姿だった。
    慌てて飛び起きて周囲を見渡す。
    外周には様々な浮島や、巨大なニシキヘビの胴体が確認できた。
    アテナから伸びた太くぬめりけのある触手は、
    今にも強攻撃を仕掛けて来そうなほど滑らかに蠢いている。
    「いつまでそうしているつもりなの?
     あなたは今、神の御前にいるのだけど。」
    遥か上空からアテナの声がこだまする。
    声の反響の仕方までコンテンツ内のアテナとそっくりである。
    我ながら再現度の高い夢を見ているものだ。
    夢ならば、と考えた俺は空中でふわふわと浮いているアテナを見上げて口を開いた。

    「呼ばれたと言っていたが、俺にそんな覚えはない。何かの間違いじゃないか?」
    こちらを見下ろすアテナは、この言葉を聞いてクスリと笑う。
    「愚かね。あなたも願ったのでしょう?この黒聖石サビクに。
     だからあなたは私をここへ呼び出すことが出来た。私の意思などお構いなしに。」
    「サビク…」
    そういえばムービーでも戦闘中にも、アテナはそんなことを言っていたような気がする。
    「あなたは何を願ったの?私と共に世界を造り変えたいのかしら。
     それとも私の学説を証明する手伝い?教えなさい。」
    自分の手を取れと言わんばかりに、アテナがこちらへ手を伸ばす。
    巨大な触手と化していたはずの両手は、前半フェーズの時と同じような
    深い紫色に染まった”人間”の手へと変化していた。
    確かアテナは前半の開幕から俺たちのことを知りたがっていた。
    様々なことを知り、知識として蓄えようとする学者の性だろうか。
    どうせ夢なのだ。
    ここは素直に答えるとしよう。
    「俺の願いは…アテナ、お前に直接触れることだ。」
    陶器のような質感の肌、おぞましく蠢く妖艶な触手、そしてサビクを秘める胸部。
    戦闘中に触れることが出来るのはタンクだけだ。しかも触手のみ。
    火力職である俺は、アテナに直接触れることすら叶わない。
    出来ることならその全てに触れたいと、常日頃から考えていた。

    俺の願いを聞いたアテナは、一瞬混乱したように見えたが、
    すぐにいつものような薄笑いを浮かべた表情に戻った。
    「くだらないわね。そんなことをサビクに願うなんて。」
    その言葉に俺は酷く落胆した。
    夢でさえ触れることは叶わないのか。
    いつもの夢ならば即座にOKされて、蜜月が始まるというのに。
    肩を落としてため息をつく。
    「でも」
    アテナが言葉を続ける。
    「私はあなたという存在を知りたい。
     あなたが何を考え、どう動き、何を成し遂げたいのか。」
    反射的に顔を上げると、宙に浮かんでいたアテナが徐々にこちらへ近づいてくる。
    俺の顔を見つめたまま、いつもの表情でゆっくりと降下し、
    そして地面に足(として機能している触手だが)をつけた。
    信じられない。
    目の前にあのアテナが立っている。
    見上げるほどの体躯だが、伸びる四肢はしなやかで美しい。
    背中で蠢く触手も、これまでに無いほどくっきりと見える。
    白銀の髪は静かに揺れ、真っ黒な瞳は俺だけを映していた。

    「これだけ近くで人の子を見るのは初めてね…なんて脆そうな作りかしら。」
    アテナはまるで品定めするように、俺の全身をじっくりと観察している。
    「どうしたの?あなたが希った存在が目の前にいるというのに、
     この機会を無駄にするつもり?」
    幼子に話しかけるが如く、アテナは腰を曲げて俺に視線を合わせた。
    宇宙を宿したような黒聖石サビクが、眼前で怪しく光る。
    問いに答えたいが、アテナとの距離が近すぎて言葉に詰まる。
    そんな俺の姿を見て、アテナは呆れたように元の姿勢に戻った。
    「サビクに共鳴するほどの願いを孕んだ存在だというのに、とんだ腑抜けみたいね。
     事実を求めて検証しに来た探究者とは、到底思えないわ。」
    はぁ、とアテナが小さくため息をつく。
    「こんな存在に興味を持った私が間違いだったのかしら。
     あなた、これまで私が研究してきたどんな生き物よりも価値が無いわ。」
    腕を組んで、こちらを見下すような目で蔑むアテナの姿に、俺はある感情を覚えた。


    ———理解らせてやる。


    その瞬間、アテナの胸部でサビクが激しく輝き出した。
    「この光…まさか、あなたの願いが?」
    アテナは少し戸惑ったように胸部へ目を落とす。
    俺の身体に、今まで感じたことの無いような力が流れ込んでくる。
    この力があれば…
    俺は勢いに任せ、戸惑った様子のアテナを組み敷いた。
    アテナは抵抗を試みるものの、力が入らないのか手をバタバタと動かしたあと、
    触手での反撃も諦めてこちらを睨みつけた。
    「ふぅん、やるじゃない。それで?床に叩き付けておしまい?」
    マウントポジションから見下ろすアテナの姿は、俺が見たかった姿そのものだ。
    サビクから与えられた能力なのだろう。
    今の俺はアテナの両腕を片手で抑えられるほどの強大な力を得ているようで、
    左腕一本でアテナの両腕を挙げさせ、力なく蠢く触手でその腕を縛り上げた。
    「自分の触手で動きを封じられてちゃ、わけないな。」
    ようやく優位に立てた安心感から、言葉がこぼれる。
    頭の上で両腕を縛られたことにより、アテナの真っ白な腋が露わになる。
    まだ余裕げな表情でこちらを見ているが、それも長くはもたないだろう。
    「それじゃ、俺の証明に付き合ってもらおうか。」
    俺がそう言うなり、再びサビクに眩い光が灯り始めた。


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