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    Cloe03323776

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    Cloe03323776

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    ハートの海賊団のペンギンに、ペンギンの換羽期を適用してみるという実験作。

    Pinguis ペンギンは。
     換羽の時期に、海に入れなくなるので。
     餌が取れなくなる。
     つまり、ニ週間ほどの断食生活だ。
     ───なので、その前に。

    「……しまったな」
     ポーラータングの食料庫がすっからかんになっているのを見つけたシャチは、舌打ちをした。予測が少々、外れてしまったらしく。周期を把握しようとするものの、多少のズレは必ず起こる。なかなか難しい。ポーラータングは潜水艇だ。浮上しない時は長くて一週間。食料の調達などの配分を計算しなくてはいけないのだけれど。こういったイレギュラーな場合は、致し方ない。強制的に物資調達のための島に上陸しなければ。
    「キャプテーン。緊急です」
     船長室に赴いて。いつも寝不足なキャプテンであるローの隈を見ながら、状況を説明する。チッ、と舌打ちをして頭をガシガシと掻くローに、シャチは苦笑いをした。
    「仕方ないっすね。時期を読み違えるのは」
    「……仕方ねェ。進路を変える」
     近くの島まで、何時間で辿り着けるのか。すぐに計算で弾き出した。幸いなことに、全員が一日耐えれば辿り着ける計算になる。船員たちへ状況を告げ、僅かに残っている食料も計算する。
    「こればっかりは、どうしようもないですもんね……」
    「一番、ペンギンがキツいのよ」
     全員が、事情を知っている。だからこそ、協力をするのだ。ペンギンは、それこそキャプテンと付き合いの長い大切なクルーだから。

     この症状は、前からあったわけではない。
     ある日、突然発症したのだ。
    「キャプテンッ! 食料がなくなってます」
     その日。ポーラータングは戸惑いに包まれた。潜水している以上、それはクルーの中の誰かの仕業なわけで。現場に集結したクルーは顔を見合わせた。そして、シャチが最も早く。足りないことに気がついた。
    「ペンギンがいない」
     そして。ポーラータングを皆で探し回った結果。いつも皆で並んで使っている簡易ベッドの一番奥で、ペンギンは背中を向けて眠っていた。まるで、微動だにしない。気配が消え失せている。それほどの、静寂で。
     一瞬、死んでいるのかと思った。全員、肝が冷えた。が、ちゃんと脈を取れば動いている。生きている。けれど、反応が極端にない。呼びかけて、体も叩いて。それでも、目が覚めない。意識が戻らない。だが、ローが能力を使ってペンギンを調べても、何も異常は見つからなかった。───が、一つ。見つけたのは。
    「……何がどうなってやがる」
     胃と腸の中にある、食料の跡。腹が大きく膨れているわけではないのに、食料庫から無くなった食べ物の破片が大量にあった。原理はわからないが、とんでもない消化能力で吸収されていったようだ。そんなこと、今までのペンギンにはあり得ないことだった。
     原因を調べようと全員が頭を使ったが、分からないまま。そうして、ペンギンは二週間も眠り続けた。その間、何も食べない。点滴で無理やり栄養を投下しようかと考えたが、ローがペンギンの身体を調べる限り、その必要はなかった。
     信じられなかったが。あの時に消えた食料が、ペンギンの体に蓄積されており、まるで冬眠をする動物と同じような原理で、生きている。
     そして、ペンギンの体に起こった変化としては。まるで脱皮するかのように、肌の皮膚が取れ始めたことだ。それを初めて見つけたイッカクは悲鳴を上げた。が、よくよく観察して、浮いてきた古い肌を、傷をつけないように捲れば、その下からはみずみずしい肌が浮き出てくる。
    「……なんなの」
    「どうなってんだ」
     船員が全員、顔を見合わせる。服を着せているままであったが、それを脱がせてみると、全身で同じような現象が起こっていた。クルーは全員、頭がおかしくなりそうだったが、一人。ジャンバールが気がついた。
    「あれか。ペンギンの換羽期か」
     まさか。それは、リアルな動物だからこそ、起こる変化であろう。
     名前が一緒だからという理由で、そのような変化が起こることなど、あり得るのだろうか。しかし、そうなると合点がいく。ペンギンは、換羽の時期になると、海の中に入れない。餌が取れなくなる。二週間ほど、断食状態になるのだ。その前に、大量に食料を食べることで、それを乗り越えるという特徴がある。
     クルー全員が「まさか」と思う中。二週間後、確かに。ペンギンは目が覚めた。古い肌は全て剥がれ取れて、綺麗になる。
    「……あれ、どうしたんすか」
     起きたペンギンは。周りに集まっているクルーを見渡して、そう言った。
     何一つ、記憶はなかった。食料を食い尽くしたことも、二週間眠っていたことも。
     ただ、異常な空腹だけが残っていた。
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