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    マチ乃

    @MACHINO_URYYYYY
    @xxx_nomatch
    女と女の間にある巨大感情とかあられもない姿の女とかそういうのが好き

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    マチ乃

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    実姉とかつて同居していた40代女性の煙草に、21歳の女子大生が火を点けてあげる話。

    ・百合のようで百合じゃないちょっと百合っぽい空気
    ・軽い食人行為の描写を含む

    ※CoC自探索者と他PLによる探索者の二次創作※

    #百合?
    lily?
    #百合かも
    #うちよそ
    atHome

    ハートに火を点けて「世を儚んだのでこれからハマさん撃ち殺して、そんであたしも拳銃自殺する」

     塩谷芙蓉はソファに座るなり右手に拳銃を構えて、濱マリアにそう告げた。
     白い綿のブラウスに黒の別珍のロングスカートというガーリーな服装に対して、右手に握られた黒鉄―鈍く光を反射するリボルバーはアンマッチなようでいて、いやに似合っているようにも見える。
     マリアはまず芙蓉を横目でちらと見やり、ロング缶の発泡酒で口を湿らせた。素肌に下着と、部屋着のキャミソールワンピースだけを纏ったひどく無防備な姿でありながら、自身へ向けられた銃口を気にも留めていない。

    「えーと、シド・アンド・ナンシーに憧れてんの? あの二人別に心中したんじゃないぞ。そもそもシドはODだしナンシーは刺殺だし……。あー、カート・コバーンはピストル自殺だっけ?いやでもコートニーは後追いも心中もしてないし今も生きて……るよな? 初期の椎名林檎でも聴いた?」
    「はァ? 何その反応。もっと驚いてよ」
     マリアからの返事に、芙蓉は不満そうに口を尖らせる。そんな芙蓉の様子を尚も無視して、マリアは指先で自らに向けられた銃口を突いた。
    「妹ちゃんみたいな"真面目なイイコチャン"が、そんなゴッツい実銃持ってるワケない。次元が持ってるやつのレプリカ? よく買えたね」
    「メルカリで買った。……ハマさんあたしのことめちゃくちゃナメてるでしょ」
    「おうちでも学校でも"イイコチャン"してんのは事実だしょ」
    「それはそうだけどさぁ………………バーン‼︎ 」

     不意に大声を上げた芙蓉は、躊躇いなくその掌中にあるピストルのトリガーを引いた。銃口を模した点火ノズルに、小さく火が灯る。
    「お、気ぃ効くじゃん? ライター取り行くの面倒でさ」
     おどけた口調でマリアは煙草を咥え、芙蓉の側へ僅かに身体を傾ける。近寄ってきたやわらかな肉の塊にどくりと芙蓉の心の音が鳴る頃には、既にマリアの身は離れていた。

    「かーっ!やり甲斐無いな、もっと驚いてよ。せめて驚いたフリとか苦しむフリとかしてよ」
     わざと大仰に嘆くふりをして、芙蓉はマリアから更に距離を取る。
    「おーおー、驚いたし苦しーわ。東スポの大見出し見た時くらいな」
     マリアは自らの右腕の断端を胸の方へ寄せて、わざと作ったしなを芙蓉へ見せつけてから、左手で持った煙草の煙をくゆらせ、子供をあやすように返した。そんなマリアの態度に、芙蓉の口から本心ではない、それこそ子供のような悪口が転び出る。
    「…くそばばー」
    「お、そんなこと言って良いのかクソガキ」
     互いに睨み合うその"険悪ごっこ"を、先に破ったのは芙蓉だった。

     けほ。口を押えて軽く咳き込んでいた芙蓉がマリアから顔を背ける。
     げほ。咳の音が濁り、大きくなっていく。
     ぜひゅ、と芙蓉の喉が鳴った頃、煙草の火は既に消えていた。まだ長さのある煙草が灰皿へ押し付けられているのを眺めながら、芙蓉は呼吸を整えている。

     換気のためか、ソファから立ち上がろうとしたマリアを芙蓉が弱弱しい声で呼び止めた。
    「………ハマさん」
    「んだよ」
     上目遣いで声を震わせて呼びかけてくる芙蓉の方へ、マリアは迂闊にも向き直ってしまった。芙蓉の吐息の音だけがしばらく部屋に響く。気まずそうに芙蓉から目を背けるマリアを見つめながら、芙蓉はひとつ深呼吸した後に口を開く。

    「セ」
    「しねえよ」
     二音目を芙蓉が口にするより先にマリアが吐き棄てた。咳き込みながら芙蓉が抗議の声を上げる。
    「最後まで言わしてよ!せめてスまででもさあ!」
    「聞かんでもわかるわ。やだよ」
    「なんでよ」
    「ガキとはヤらない」
    「あたしもう二十一だよ」
     ほんの少し、熱が乗ったような芙蓉の主張は、容易く一笑に付された。
    「副流煙でむせちゃうしビールも苦くて飲めないような子は大人とは言えないんでちゅよぉ」

     マリアは芙蓉の体質的な弱さを知っている。
     知っていて、わざとらしく子供のそれだと嘲弄する。あからさまに示された悪意がマリアなりのコミュニケーションだと、齢二十一になるまで共に過ごしてきた芙蓉はよく理解していた。
    「は! そんなんだったら大人じゃなくて良いし! 大体それ第三のやつじゃん」
    「あーあーお子ちゃまが泣いちゃった」
    「泣いてねーし」
    「知ってるよお前嘘泣きヘタだもん」
     マリアが言う"子供"の仕草を芙蓉が大げさに真似て言い返し、更にそれをマリアが混ぜっ返す。二人が出会ってから何年もの間、マリアと芙蓉はこんなやり取りを何度も繰り返してきた。

     この二者の間には、甘えにも似た信頼関係がある。

     一方にとっては、この距離感が丁度よく心地良かった。
     けれど一方にとっては、この関係がひどく歯がゆかった。


    「なんでここで言うかねえ」
     くつくつと笑いながら零すマリアに対して、芙蓉の表情は心持ち強張っている。
    「いけると思って、今日は」
     芙蓉の声音に宿った真剣さに気付かないふりをして、マリアは酒を煽りふざけて語気を強めて返す。
    「お前いつも唐突だしタイミングがワケわかんねんだよ」

     弾かれたようにマリアを見た芙蓉の口から、用意されていたかのように台詞が飛び出る。

    「今この一瞬を閃いて生きてたいからさ」

     そう言って芙蓉は真正面からマリアを見つめる。視線に乗った声は、どこかのロックバンドの歌詞にあったような陳腐にさえ聞こえる台詞を、尚も真っ直ぐにマリアへ伝えた。これが"真面目さのパロディ"に本心を包んだ言葉であると、マリアは知っている。芙蓉が十代だった頃――芙蓉の姉が失踪した頃――から繰り返していた、SOSサインにも似た叫びだと知っている。
     けれどもやはり、マリアの口からはそんな芙蓉を揶揄うような言葉しか出ない。
    「やかましいな。やっぱお前、少し前の東京事変の曲でも聴いたんだろ」
     そう茶化す声音の中に、僅かに混ぜられた苛立ち。今日はこのくらいにしておけよと言外に示すようなその態度に、しかし芙蓉は折れなかった。

    「うるさいな。……なんかさ、今日は……ハマさん撃たれてくれそうだったし」
     歯切れが悪く告げられたその言葉はこの夜に起きた何よりも唐突で、マリアは思わず毒気の抜けた声を出した。
    「……はぁ? なんそれ」
     それを好機と捉えたか、芙蓉は言葉を続けた。
    「撃たせてくれんならヤらせてくれるかなって。同じ一発だし」
    「………お前最低だな」
     呆気に取られたような沈黙を挟んで、ようやく少し掠れた声で芙蓉へ返したマリアは、その身を少しだけ芙蓉から離している。
     対照的に弾む声音で言い返そうとする芙蓉は、そんなマリアの態度を知ってか知らずかずいと半身を前のめりにして近寄っていく。

    「人にそんなん言えんような事してんじゃん! 普段!この前マチアプで会った子持ちのおっさんとかに!」
    「げ、なんで知ってんの?」
     投げかけられた内容は事実で、しかし芙蓉は絶対に把握していないはずで、微かにアルコールに侵されたマリアの脳が揺らされる。
     だが、芙蓉はその返答に対しては少し残念そうに声を零しただけだった。
    「え、マジなの?」
     芙蓉の眼差しが隠さない失望の色に、先の問いが誘導尋問であったことを思い知らされる。 

     今宵何度目かの、しかして最も気まずい沈黙の空気が二人の間に満ちた。
     先に口を開いたのは、今度もマリアだ。

    「……妹ちゃんとヤるんなら、まだ撃たれた方がマシかな」
    「あー誤魔化した! ってか何それ⁉︎ あたしこそ"なんそれ"なんだが?」
     はぐらかすような言葉の中に、僅かに不穏さを嗅ぎ取った芙蓉が冗談めかして返す。
    「同じ一発なんだろ? そっちのがぁ、マシかなって?」
    「ブゥ」
     鼻に皺を寄せて、頬を膨らませてわざとらしく芙蓉が"不満"のポーズを取る。
    「あーあー、ブスんなってるよ。その顔すんのやめな」
     マリアが呆れたように、芙蓉へ手を伸ばしてくる。
     ああ、ほら、やっぱり"険悪ごっこ"だ。
     きっとここで"アレ"を言えば、マリアはきっと笑っていなしてくれる。


    「じゃあセッ」
    「しねえけど」


     口を開いた芙蓉をやはりマリアは笑って止めて、そのままの笑みで更に続けた。


    「ほれ、もっぺん撃って良いぞぉ」
     そう言ってマリアは左手でガンライターの銃身部分を握ると、自らの左胸へ当てた。
    「よく狙いなよ。……こんだけ近かったらワンチャン焼き殺せるかもよ」
     アルコールもこんだけあることだし。酒の缶が散らばったテーブルを横目にからから笑って、更にマリアは続ける。
    「逝かせてくれんじゃないの?」

     マリアの右腕の断端が芙蓉を小突く。

     は、と芙蓉が息を吐くまでの間、ただゼロカンマ何秒の間で、マリアは芙蓉に身を寄せていた。
     剝き出しの素肌が、やわらかな女の肉が、白い綿のブラウスと擦れる。
     蠱惑的にも、あるいは捨て鉢の自嘲にも見える微笑みの形に歪んだマリアの視線が芙蓉を射抜く。

     お前は絶対あたしを害さないし。あたしの後を追って死んだりもしない。

     ――そう言い聞かせられているような気さえした。

    「………ナメてるでしょ」
     芙蓉が絞り出した声はひどく震えていた。マリアから顔を背けることは無く、けれども頬を少し朱に染めて、目線をあちこちへ泳がせている芙蓉を、マリアは満足そうに茶化す。
    「はあ。そうやってブーたれてるうちはやっぱりお子ちゃまってことでちゅねぇ」
    「ねぇ!」
      震えている芙蓉を尚も幼児語で煽ると、芙蓉が堪らずに声を上げた。それでもマリアは動じない。
    「お、やる?」
     愉快そうに芙蓉を見つめるマリアの顔を、芙蓉はじぃっと睨み返す。
     引鉄にかけられた震える指は、逡巡の後に離れていった。


    「……無い無い。ハマさんのローストとか考えたくもないよ」
     おどけた様子の芙蓉の声には幾ばくか疲弊の色も見え、今日はもうお開きにしましょう、と提案しているのだとマリアは感じ取った。
     けれど、すぐその後に告げられた言葉を、どうしても無視できなかった。


    「ほんと煮ても焼いても喰えないんだから」

     
     瞬間、フラッシュバックする記憶。切断された右腕と右脚。白い皿に盛られた料理。青い顔でそれ――マリアの肉――を食った女。
     自らの肉を、手づからあの女に食べさせてやった記憶。


     芙蓉はそれを知らない。"あの日"のことを知る由もない。
     鎌をかけられているのではないとわかっている。
     知っているのは、"あの日"に、"あの場"に居た者だけだ。

     それでも、芙蓉へ、芙蓉の姉へ、飛び切りの悪意を込めたその言葉を、マリアは告げずにいられなかった。


    「揚げたのと蒸したのは、あんたの姉ちゃんは食ってくれたけどね」


     全く意味不明な言葉の意図を数秒考えた後、芙蓉は何か異なる意味を察したようなしかめ面で返した。
    「はぁ? なんそれ、悪趣味」
    「……ま、そう言うよな」

     芙蓉はマリアの言葉のに込められた意味を全く理解できていない。そりゃあそうだ、とマリアは笑って酒の缶を取り、中身を煽る。飲み口から唇が離れたその刹那、少し軽くなった缶を芙蓉が奪い取った。
    「飲み過ぎじゃん? そんな変な絡み方するくらいならセックスさせてよ」
     そう言って残りを一息に飲み干そうと缶を傾けた芙蓉は、次の瞬間に自らの口腔を刺す炭酸と苦味に大きくむせ返った。
    「うぇ、やっぱ無理。ストロングのがマシかも」
     げほげほと再び大きく咳き込む芙蓉を見て、マリアは少し呆れたようにぼやく。
    「言ってんじゃん。そんなお子ちゃまとはヤんないって」
    「うるさい」
    「あーあー、ほとんどこぼしちゃって。大事にしろよ間接キスだぞ」
    「そんなんではしゃぐようなガキじゃないし」

     呼吸を整えながら言い返してくる芙蓉のしかめ面を見て、マリアはけたけたと姦しく笑った。

    「そーやって言う割に、無理やり押し倒すとかしてこないだろ。真面目ちゃんでイイコチャンのふよちゃんはさ」
    「なっ」
    「はい、今日はこれでおしまい。おうちに帰って歯磨いてねんねしましょうねえ」
     ソファから立ち上がって、笑いながら髪をわしゃわしゃと撫でてくるマリアの態度は、今夜で一番不可解なものだった。
     けれど芙蓉は最早そこへ食い下がる気力は無く、マリアの瞳が見つめている"ここではないどこか"を想うことだけで精一杯だった。
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    マチ乃

    DONE実姉とかつて同居していた40代女性の煙草に、21歳の女子大生が火を点けてあげる話。

    ・百合のようで百合じゃないちょっと百合っぽい空気
    ・軽い食人行為の描写を含む

    ※CoC自探索者と他PLによる探索者の二次創作※
    ハートに火を点けて「世を儚んだのでこれからハマさん撃ち殺して、そんであたしも拳銃自殺する」

     塩谷芙蓉はソファに座るなり右手に拳銃を構えて、濱マリアにそう告げた。
     白い綿のブラウスに黒の別珍のロングスカートというガーリーな服装に対して、右手に握られた黒鉄―鈍く光を反射するリボルバーはアンマッチなようでいて、いやに似合っているようにも見える。
     マリアはまず芙蓉を横目でちらと見やり、ロング缶の発泡酒で口を湿らせた。素肌に下着と、部屋着のキャミソールワンピースだけを纏ったひどく無防備な姿でありながら、自身へ向けられた銃口を気にも留めていない。

    「えーと、シド・アンド・ナンシーに憧れてんの? あの二人別に心中したんじゃないぞ。そもそもシドはODだしナンシーは刺殺だし……。あー、カート・コバーンはピストル自殺だっけ?いやでもコートニーは後追いも心中もしてないし今も生きて……るよな? 初期の椎名林檎でも聴いた?」
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    DONE実姉とかつて同居していた40代女性の煙草に、21歳の女子大生が火を点けてあげる話。

    ・百合のようで百合じゃないちょっと百合っぽい空気
    ・軽い食人行為の描写を含む

    ※CoC自探索者と他PLによる探索者の二次創作※
    ハートに火を点けて「世を儚んだのでこれからハマさん撃ち殺して、そんであたしも拳銃自殺する」

     塩谷芙蓉はソファに座るなり右手に拳銃を構えて、濱マリアにそう告げた。
     白い綿のブラウスに黒の別珍のロングスカートというガーリーな服装に対して、右手に握られた黒鉄―鈍く光を反射するリボルバーはアンマッチなようでいて、いやに似合っているようにも見える。
     マリアはまず芙蓉を横目でちらと見やり、ロング缶の発泡酒で口を湿らせた。素肌に下着と、部屋着のキャミソールワンピースだけを纏ったひどく無防備な姿でありながら、自身へ向けられた銃口を気にも留めていない。

    「えーと、シド・アンド・ナンシーに憧れてんの? あの二人別に心中したんじゃないぞ。そもそもシドはODだしナンシーは刺殺だし……。あー、カート・コバーンはピストル自殺だっけ?いやでもコートニーは後追いも心中もしてないし今も生きて……るよな? 初期の椎名林檎でも聴いた?」
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