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    Jeff

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    5. Orphans
    KZN48展示作品・魂の絆二次創作
    Hero+Hyunckel, Larhart×Hyunckel
    全5話
    2022/11/26

    #魂の絆
    soulTies
    #ラーヒュン
    rahun

    5. Orphans 親がいるって、どんな感じなんだろう。
     
     メァリはアーケードをそぞろ歩きながら、ぽつりと、そんなことを考えた。
     傍らを、妙な帽子をかぶった子供たちが駆け抜けていく。
     街は木の実とガラス玉で彩られ、背の高い街路樹にリボンが巻き付けられている。
     古の神の生誕に由来する、冬の祝祭だ。
     聞き分けの良かった子供たちが枕元に靴下を置いておくと、眠っている間にプレゼントが届けられるという、特別な夜。
     メァリもこっそりと、巨人サイズの靴下を用意してみた。何が欲しいのか自分でもよく分からないけれど、とりあえず小さめの剣や盾が入るくらいのものにしておいた。
     この世界に生まれ落ちて、知識と経験がバラバラなままに、戦い方ばかり上達していく。先生がいてくれて、仲間たちがいてくれて。どうにか、道を見失わずに済んでいるけれど。
     さっきの子供たちが騒ぎながら戻ってきた。走り寄る先には、大きく手を広げた、多分、父親の姿。
     ――たいていの人間には、愛してくれる両親がいる。
     でも時には失って、孤児になる。ヒュンケルやラーハルトみたいに。
     彼らが歩んだ泥沼みたいな道のりはほとんど全て、断ち切られた親との絆が関与している。子供たちが享受すべき無条件の愛情が切り裂かれ、切れた太い弦のように跳ね返り、縮こまり、全てをだめにしてしまった。
     そうだ。深い愛は、深い憎しみと表裏一体だ。絆が強いほど、その反動も大きい。
     メァリは俯き、考え考え、石畳を歩いて行く。
     今みんなの絆が弱まったら、一体どうすればいい。高まった波動は既にパーティの戦闘力を倍増させ、自分たちはすっかりこの力に慣れてしまった。
     もし失われたら、ゼバロどころか、街を襲撃するモンスターの群れをあしらうことすら苦労するだろう。対策が必要だ。
     守らなければ、絆は簡単に切れてしまう。
     そして切れてしまった絆を紡ぎなおす方法も、どうにかして掴まなければならないのだ。
     研究対象として、あの二人ほどの適任はない。
    「だからこそ、彼らを助けなきゃ」
     漏れてしまった呟きに、意外にも返事があった。
    「どうした。人助けなら協力するぞ」
    「うわ、びっくりした」
     だいぶ高い位置から声がする。見上げると、人情味あふれるリザードマンがにまりと笑った。
    「それ、どうしたの」
     獣王は当初こそ人目を避けていたが、最近は人間たちの生活に馴染んできている。
     ただでさえ狂ったモンスターたちの急襲が耐えないこの世界だ。見た目からして心強いクロコダインの雄姿が、人々の記憶に刻み込まれるのは早かった。あのフレイザードにまでファンがいるのだから、当然と言えば当然だが。
    「これか。道すがら、子供たちから貰ってな」
     照れくさそうに、首にかけた飾りをそおっと触った。紙のわっかを繋いだ飾りだ。
    「簡単に切れてしまいそうで、慎重に歩いていた。メァリも散歩か」
    「うん、まぁ。ちょっと考えごと。どうしたものかなと思って……」
    「非常事態か」
    「いや、違うんだ。ラーハルトのことで」
    「おお、お前も思うところがあったのか。実は俺も、妙に気になってな。優秀な戦士に向ける言葉ではない気もするが、あやつは時々、まるで子供のように落ち込んで見えるときがある」
    「そうなの」
     そこまでは観察していなかったな、と、メァリは自嘲気味に呟く。
    「老婆心とでも言うのかな。――ヒュンケルを溶岩流から助けた時のことだ。奴は開口一番、見殺しにしてくれればよかったのに、と言った」
     メァリは巨大な獣人の顎のあたりを見上げた。
    「奴がまだ幼い頃、地底魔城に暮らしていた時に、見かけたことがある。……俺にできることなど何もなかったし、何かしようとも思わなかった。だが他の誰かが関わっていれば、あの子供は少なくとも、同族を殺戮するような生き方を選ばずに済んだのかも知れん。そう考えるとな」
    「お節介と思われても」
    「うむ」
    「ちょっと気になっちゃう」
    「ああ」
     と、クロコダインは目を細めた。
    「陸戦騎の絶対の忠誠心は、己の芯となり、奴を支えてくれよう。だがな。自身の核となる価値観が揺らげば、どんな武人でも迷い、途方に暮れるものだ。人間への憎しみと言う大きな基盤が崩れる時、ラーハルトとて動揺するはず。誰か、話を聞いてやる者が必要だろう」
    「うん……」
     意外と言うほどではないが、驚いた。彼は武骨に見えて、仮面の下の心の揺れを良く見抜いている。
    「ラーハルトはずっとバランやダイに付き添っているけど、誰かの部下としての顔しか見せてくれないからね。ちょっと心配だよ」
    「俺も同意見だ。しかし先刻、ヒュンケルと連れ立って聖誕市マルシェに入って行ったぞ」
    「え」
    「ほら、この先の、噴水の円形広場だ……おい、こら」
     有無を言わさずぐいぐいとクロコダインによじ登り、肩に足をかけて首を伸ばす。
    「急になんだ、危ない、落ちるぞ!」
    「いた!」
     目を凝らすメァリの遥か向こう、煌めく砂糖菓子や扉飾りの屋台がずらりと並ぶ、その一角。
     人ごみの中でもひときわ目立つ、長身の二人連れが見えた。
     明らかに街に慣れていない大きな孤児たちが、色とりどりのキャンディの前で呆然と立ち尽くしている。
     ラーハルトが何か声をかけると、ヒュンケルが驚いたように顔を上げる。
     そして薔薇の蕾がほどけるように、満面の笑みを浮かべた。
     メァリが見たことも無いような、純真そのものの笑顔だった。
     ラーハルトの表情は見えない。が、わずかに肩を揺らしてヒュンケルのマントをついと引っ張った。
     二人はゆったりとした足取りで人々の波に紛れ、やがて見えなくなった。
     ……はぁ。
     白い息を吐いて、数週間分のつかえが取れたように、メァリも笑った。
    「ありがと、クロコダイン。下りていい?」
    「首飾りを壊すなよ」
    「もちろん」
     繊細な紙のわっかに触れると、しゃらん、と軽やかな音がした。
     生まれたての柔らかな絆が、いつか永遠となりますように。
     何度傷つけられても、こんどは絶対に失われませんように。
     無意識に祈って、ふと思った。
    「ねぇ、獣王。女神さまって、僕の親ってことになるのかな」
    「……ふむ」
     と、彼は少し考えて、メァリを下ろしてやった。
    「お前の創造主だったな。そう考えても、間違いはなかろう」
    「だったら僕も、いつかお母さんに会えるかもしれないんだ」
     ダイみたいに、本当の親に、いつの日か。
     獣王はメァリを見下ろして、歓声を上げる子供たちに目をやり、そして染まり始めた空を見た。
    「俺たちモンスターと人間とでは、家族や寿命の概念が大きく異なる。だが、人間たちと交わってきて、なんとなく理解を深めてきた。お前がそう願うのも当然だろう」
    「変だよね。わかってる」
    「そんなことは無い」
     少し身をかがめて、メァリをの顔を覗き込む。
    「肩ぐるまくらい、いつでもしてやるぞ」
     絆の勇者はぷふ、と吹き出して、小さな涙をぬぐった。
    「ありがとう」

     夕暮れを知らせる鐘の音が鳴り始める。
     幸福なひとびとがそれぞれの糸を抱きしめ、手繰り寄せ、愛するものの所へと帰っていく。
     互いを見つけた孤独なこども二人も、一歩を踏み出そうとしていた。
     虹色に輝く魂の群れの中で、慄きながらも確実に、未来へ向かって。
     
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