無題バルコニーの扉の横に設置した小さなベルが音を立てて、ロレンツォを浅い眠りから引き戻した。深夜2時。ため息をついてベッドを抜け出す。このベルは彼女しか使わない。もうこの音に感情を乱されることにすら疲れてしまった自分がいる。
「…おかえりなさいませ、陛下。」
バルコニーの扉の外、雲一つ無い夜空の下には、白いネグリジェに身を包んだ尊き方。
「地の守護聖。起きていたの?」
そのネグリジェのボタンはいくつかが開いたままになっている。桃色の髪は少し乱れ、唇は赤く腫れ上がり、なにより鎖骨の鬱血痕がロレンツォの目を釘付けにした。今日のお相手は少し大胆が過ぎたらしい。
「いいや、少し寝ていた。でも、待っていたよ。さあ、こちらへ。」
1797