筋肉で解決していくスタイル。 アイドルというものは、歌って踊るだけでないことは、恭二もよく身にしみていた。
みのりいわく、『最終的に開墾もする』らしい。さすがに田畑は拓かなくても、花に詳しいみのりはすく農作物にも詳しくなれそうだ。ゆるふわおにいさんに見せかけて、筋力も体力もある。ピエールは小器用で何でも楽しめる才能を持っている。二人ならば畑作業もキラキラ笑顔でこなせそうだ。ひるがえって、自分はというと──。
「恭二、どうしたの? “むー”ってなってるよ」
ピエールにのぞきこまれていた。
「あ、あぁ、大丈夫だ。ちょっと自分の木偶の坊……なんでもない」
「……? でくのぼう、何?」
途中で切ったが、しっかり聞かれてしまったようだ。
「……役に立たない人っていう意味の悪口」
「でくのぼう、わかった! ……恭二、自分の悪口、言った?」
「うっ……弱気からくる自虐だ。すまん」
言うと、ピエールはむうっと口をへの字にして恭二に抱きついた。
「恭二、ボクの大切。恭二も、ボクの大切、大事にしてほしい」
『大事、大事』と言いながら、ピエールは恭二の背をなでた。優しく、柔らかく、愛おしむように。
「……サンキュ、大事にする」
恭二もピエールの背に手を回し、ポンポンとなでる。
「ふふっ、どういたしまして」
うまく口が回らず言えていなかったピエールの『どういたしまして』は、もうすっかり言えるようになっている。
「恭二の悩み、ボク、お手伝いできる?」
「うーん、これは、そうだな。筋肉で解決するやつだな」
「誠司、オニグンソー」
「こら、誰に聞いたんだその言葉」